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躍進企業REPORT

ユニードパック:印刷不良の原因を究明し、印刷機の改良に貢献

印刷ジャーナル 2022年11月25日
HP Indigo 20000 の前で高野課長
オンライン接続されたDAC検査装置。特許の「回転ユニット」により表裏検査の切り替えが容易
「回転ユニット」の切り替え時間は約60秒
グラビア印刷では印刷機と巻替え機に「Crossover」を搭載

Indigo20000×DAC検査装置:履歴管理でフィードバックが容易に


 グラビア印刷・プラスチック包装資材のユニードパック(株)(本社/香川県仲多度郡まんのう町炭所西800、永森孝一社長)は2016年4月、デジタル印刷機「Indigo20000」にダックエンジニアリング(DAC)の全面フルカラーバリアブル印刷検査装置を搭載した。同時に、(株)トスバックシステムズの印刷業総合管理システム「ひだりうちわ」、検査装置のPDFを書き出すエスコグラフィックス(株)の「Automation Engine」とも連携させたことで、検査品質の向上だけでなく、入力作業の自動化、トレーサビリティー向上でフィードバックが容易になるなど、様々な効果を生み出している。

 同社は、軟包材製品の印刷・製袋をメインに事業展開する企業。少量多品種・短納期の要望に対応するため、自社一貫生産できる設備力を強みとしており、デジタル印刷機2台、グラビア印刷機5台、製袋機は30台を保有する。また、昨今は環境対応資材の活用によるSDGsにも取り組んでいるほか、デジタル印刷機を活用したSDGsにも取り組む。デジタル課 兼 オンデマンドGrの高野明人課長は「デジタル印刷はロスが少ないため、無駄を減らすことができる。また、昨今注目される『脱プラ』にも貢献できる」として、今後は紙のパッケージなどもクライアントに積極的に企画・提案し、紙の印刷によるSDGsにも貢献していく考えだ。

 そんな同社が検査装置導入を検討したのは2016年頃。HPのデジタル印刷機「Indigo20000」を2014年末に導入して、約1年が経過した頃である。この間は「目検」により人の目で検品を行っていたわけであるが、高野課長は「トラブルが発生したときに、何が原因であったのか後からでは分からない」ということが検査装置導入を検討した理由であったようだ。そして同社は展示会でいくつかの検査装置メーカーを視察。導入の条件は「オンラインでPDFとデータ照合できる」ことであった。その結果、「当時、条件を満たしていたのはDACだけであった」(高野課長)。現在は他メーカーからもPDFとデータ照合できる検査装置が開発されているようだが、「私の知っている限り、オンラインで精密な検査ができるのは現在もDACの検査装置のみである」(高野課長)ということだ。

 そして、同社はDACの検査装置を2016年4月、「Indigo20000」に設置した。


特許取得の「回転ユニット」を絶賛


 「とにかく、便利なんですよ」。高野課長がこのように絶賛するのは、DACが特許取得済みである検査装置の「回転ユニット」だ。

 これは、ラインカメラ「Cocoセンサー」のコンパクトな特性を活かし、カメラと透過照明、検査ロールを回転させることで、簡単に表裏を切り替えて検査できる画期的な技術。通常、表裏検査を切り替える場合、検査面を変更するため紙パス変更が複雑で時間がかかるが、「回転ユニット」を使用すれば、一度ワークを切り、カメラを180度回転させ、ほぼ同じパスを通すだけのため、短時間で簡単に切り替えることができる。高野課長に作業手順を見せてもらったところ、約60秒で切り替えを行っていた。

 高野課長は「短時間で簡単に切り替えることができるだけでなく、追加ロールも一体のため、理想のロール間ピッチで配置でき、ワークのバタつきが少なく安定した検査ができる」とコメントしている。


印刷機の欠点を発見し、世界のIndigoユーザーに発信


 印刷機に検査装置を設置することで検査品質が向上するのは当り前かも知れないが、同社の場合はそれだけではない。その1つに、Indigo20000にDACの検査装置を設置して間もない頃、印刷機の重大な欠点を発見したというエピソードがある。

 同社では、検査装置を導入して間もない頃、ある欠陥の原因を突き止めるための検証を行っていたという。そして、「その欠陥が出たときに印刷機をストップし、機械をバラして『ここが悪い!』と原因を突き止めた」(高野課長)。その場には、HPのエンジニアが同席していたため、その情報は上司に報告され、日本全国、そして世界のIndigoユーザーに伝わり、印刷機の性能向上に大きく寄与した。自社の品質改善だけでなく、世界のユーザーの品質向上に貢献したことになる。

 そして、その原因を突き止めることができたのは「DACの検査装置により、トラブルの原因がどこにあるのかを把握できたからである。検査装置は印刷物の検査だけでなく、機械の状態の検査にも活用できる」(高野課長)。

 他のIndigoユーザーにも貢献することになったわけだが、高野課長は「Indigo20000ユーザーは国内でも十数社しかいないため、ライバルという認識はない。どちらかと言うと一緒になって底上げを図っていく仲間である。今後もパイを広げるための取り組みに努力していきたい」と話す。


他社システムとの連携で検査装置の効果拡大


 そして、同社はDACの検査装置導入と合わせ、従来から使用していたトスバックシステムズの印刷業総合管理システム「ひだりうちわ」と検査装置を連携させることで、品名や条件の入力作業を自動化した。バーコードを使用し、伝票データを検品装置側に持ってくるようにしているため、後追いもでき、トレーサビリティが楽になったようだ。高野課長は「たまにすごく昔のリピートを頼んでくるお客様もいるが、過去のデータを簡単に引っ張り出せるため、そのような場合も安心」と評価する。

 また、同社ではIndigo20000だけでなく、グラビア印刷機と巻き替え機にDACのグラビア印刷検査装置「Crossover」を設置しているが、グラビア印刷用の検査装置はさらに進んでおり、円周までの情報が入っていくため、円周設定が不要になり、さらに使いやすくなっているようだ。「とにかく、使いやすいんですよ」(高野課長)。

 また、検査用のPDFはエスコグラフィックスの「オートメーションエンジン」で作成している。このソフトでは、Indigo20000に設置しているバリアブル印刷検査装置のPDFを書き出しているが、データを作成し、そのデータをデジタル印刷機に送る際に、検査用のデータも一緒に作成し、検査装置で取得するワークフローを構築している。ネットワークでつないでいるため、どこでも共有して履歴を閲覧できるという。


目視では検出不可能な欠陥を検出


 「これを見つけるか?とツッコミを入れたくなるような欠陥までも、検出してくれる」。高野課長は、DAC検査装置の検査品質についてこのように驚きを表現する。

 バリアブル印刷検査装置に搭載されている「Cocoセンサー」は、スキャナタイプのラインカメラ。通常のレンズを通すカメラの場合、局面のため、真ん中と端で収差が出たり、ピントが若干変わる可能性がある。その点、Cocoセンサーはスキャナであるため真ん中も端も同じ精度で撮像できるため、検査精度も均一で、バラツキなく検査できる。

 高野課長は「デジタル印刷に版はないが、例えるなら『版キズ』のように、マスターデータに問題が生じることがある。その場合、通常は良品と判断してしまうが、DACの検査装置はそのようなハンコのキズによる欠陥も検出してくれる」と、従来の「目検」では不可能であった欠陥を検出できる検査品質に脱帽の様子である。

 さらに高野課長が高く評価するのは、簡単な操作性に加え、サーバでの履歴管理によりオペレーターのスキル向上にもつながったことだ。

 「最近は職人といってもパソコンやコンピュータも使用する。履歴などの情報を提供すれば、それを見ながら現場で汲み取り、どんどん改善していく。検査装置の導入は現場の進歩にもつながった」(高野課長)


AI検査のさらなる向上に期待


 DACでは、ディープラーニングを使用して自動欠陥分類分析作業のサポート、また、欠陥検出が不鮮明で判別しづらい画像を超解像度拡大するなど、AIを活用した技術をすでに開発しており、グラビア検査装置に先行的に搭載している。高野課長は今後、自社の「Crossover」にもこのAI機能を搭載することを前向きに検討しているという。

 「現在の検査装置でも色別の欠陥分析などは行えるが、AI機能を搭載すれば、検査装置側目線の分析でなく、現場環境の見直しにも貢献できる『お客様目線』での分析ができると担当者から聞いており、大変楽しみにしている」(高野課長)

 高野課長は「将来的には検査機はすべてAIになるのではないか」と予測しており、DACのすべての検査装置へのAI搭載に期待する。「品管からもすごく好評」(高野課長)と絶賛するDAC検査装置を活用し、今後もあらゆる課題解決と技術向上を実現していく考えである。