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躍進企業REPORT

西口印刷:水を絞り、品質も向上へ〜インキの無駄がなくなり使用量20%削減

印刷ジャーナル 2022年5月15日
TOP-ONE CFGの前で中嶋工場長
設置するオフ輪の前で印刷課の社員
枚葉印刷機にはTOP-ONE ECO402などを活用

コスモテック製 新型ケミカルフリー・マルチユニット型 湿し水冷却循環装置「TOP-ONE CFG」導入


 「これだけ水を絞っても、こんなにきれいに印刷できるのかと、印刷における水の大切さを思い知ることになった」。西口印刷(株)(本社/大阪市住之江区、片岡領社長)の中嶋勇人工場長は、コスモテック製 新型ケミカルフリー・マルチユニット型 湿し水冷却循環装置「TOP-ONE CFG」を2019年7月、小森製オフ輪に設置したときの驚きについてこのように振り返る。「細分化装置により、印刷に最適な湿し水を供給できるため、網点にインキが無駄なく入り込んでいく。これにより、インキ使用量は20%削減、H液使用量も従来の2.5%から1.7%に減らすことができた」(中嶋工場長)。「品質第一」を方針に掲げる同社にとって、同装置の導入は湿し水による品質管理を考える契機となったようだ。

 同社は1950年に創業。創業当初より、学参関係をメインに業容を拡大してきたが、昨今は少子化や電子化の影響により、学参関係も多品種・小ロットの傾向が顕著になっている。中嶋工場長は「そこで当社は3年前に小森製オフセットH-UV枚葉機を導入し、パッケージなど多品種な印刷物の受注を開始した。これにより、現在は学参関係が72%、商業印刷物の受注も28%にまで増えてきた」と話しており、今後は学参関係をベースに、枚葉印刷機を活用してカタログなどの商業印刷物ほか、新たな取り組みで厳しい現状を打開していく考えを明らかにしている。

 そのような中、同社は独自の紙製品アイテムも開発している。折り絵合わせ「タタミン」は、正方形をドーナツのような形に並べたパズルで、中嶋工場長は「折りたたんでいくと、6つの折り絵が完成する。裏返したりひねったり、簡単そうに見えて奥が深いこのパズルは、操作性が似ていることから『紙のルービックキューブ』とも言われている」と説明する。「頭の体操」として、子供から大人、年配者まで幅広く人気があるようだ。

 ちなみに、小森製オフセットH-UV枚葉機には、コスモテックの湿し水循環装置「TOP-ONE ECO 402 PU」や、ローラー・UV兼用冷却装置「POLARIS PW-UV」などを活用している。


「品質第一」の方針で学参出版業界から信頼


 とはいえ、今でも同社がメインとしているのはカタログでも紙製品でもなく、教科書や参考書などの学参関係の出版物である。このため、同社ではコストや生産性に影響を与える可能性があったとしても、何よりも「品質第一」をモットーに掲げ、クライアントである学参出版業界の信頼を築いてきた。

 「毎週月曜日の朝礼では、全員に事故防止と品質管理の注意喚起を行うことで、事故を未然に防いでいる。また、当社は24時間の二交代制のため、申し送り事項は書面で誰が見ても分かるようにしている。品質チェックシートを通し、温度調整や湿し水のph値の管理はもちろん、検査装置もインラインで搭載されているが、絵柄の上にあるインキの異物は検査装置では拾うことができないため、オペレーターの目による目視を基本としている」(中嶋工場長)

 さらに、オフ輪の稼働には基本的に3人で対応していることも、同社がいかに品質に対して慎重を期しているかの証と言えるだろう。

 「オフ輪の作業に2人で対応している現場も多いと思うが、当社は人件費がかかっても、扱うものが教科書のため、慎重に作業を行っている。印刷トラブルがありそうな場合は、生産性よりも品質を重視し、必ず機械を止めて原因を確認してから再稼働するようにしている」(中嶋工場長)

 これらの徹底した品質管理により、同社はミスの外部流出を未然に防ぎ、品質に厳しい学参関係のニーズに応えている。この企業姿勢は、H-UV枚葉印刷機を活用した新たな印刷物にも生かされており、あらゆる印刷物における同社の品質の信頼につながっている。


細分化装置と殺菌装置で高品質印刷を実現


 「水を絞ってもこんなにきれいに印刷できるのか!」。中嶋工場長がコスモテックの新型ケミカルフリー・マルチユニット型 湿し水冷却循環装置「TOP-ONE CFG」を小森のオフ輪に設置し、印刷したときの第一印象である。

 「正直、これまでは水についてシビアに考えていなかった。インキが汚れたら水を増やせばいいし、水が増えたらインキ量を増やせばいいと考えていた」(中嶋工場長)

 品質を重視するあまり、インキ量を削減するという意識は少なかったようだが、そのような中、コスモテックの営業マンから、「インキ量を削減でき、さらにH液の量も減らすことができる」という提案を受け、お試しにと他社製の湿し水供給装置との入れ替えで設置したのが「TOP-ONE CFG」である。

 「TOP-ONE CFG」は、ろ過機能だけでなく、細分化装置と殺菌装置のユニットを搭載しているのが特長。これにより、印刷適性の高い湿し水を作り出すことができ、印刷品質の向上と同時に、15%以上のインキ削減効果を見込むことができる。

 「細分化装置により、版に対して網点に無駄なくインキが載るので、水を絞ってもきれいな印刷を実現できる。また、殺菌装置によりバクテリアなどの水の不純物を殺菌し、常にきれいな水を保つことができる」(中嶋工場長)

 同装置を設置した直後、1年前の教科書のデータを落とし込んで同じインキ量で印刷するとベタベタになったようで、「こんなに違うのかと、そのときに初めて気づいた」(中嶋工場長)。同社はA輪2台、B輪2台のオフ輪を設備しており、「TOP-ONE CFG」はB輪に使用しているが、「A輪と比べてB輪の場合、同じ教科書でも美術資料や図工など、絵柄の多いものが多いので、とくにその差が顕著に現れる」(中嶋工場長)ようである。

 インキ量削減などの具体的な成果として、同社の場合は平均を大きく上回り、「おおよそだがインキ量は20%削減、エッチ液の使用量も従来の2.5%から1.7%に削減できた」と中嶋工場長。インキなど資材価格高騰が続く中、この数字は経営にも大きな影響を与えると言えそうだ。さらに、同社はコスト削減と品質向上を実現すると同時に、「ローラーのグレーズも出にくくなった」(中嶋工場長)など、印刷トラブルも減少したため、生産性向上にもつながっていると言えるだろう。同社にとって「TOP-ONE CFG」の導入は、想定以上の成果があったようだ。


社員とのつながり・人とのつながりを大切に


 同社では、会社として一番大切にしていることとして、「社員とのつながり・人とのつながり」を挙げている。中嶋工場長は、「当社は『品質第一』を方針に掲げているので、今後も社員全員で品質を守っていくための取り組みを進めていきたい。そのため、社員同士の連携もこれまで以上に密接に行っていくことを心掛けていきたい」と話す。

 なお、「TOP-ONE CFG」は、JP2022において、(株)コスモテックのブースにて紹介している。