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躍進企業REPORT

日経印刷:「アレグロチャレンジ」本格始動

印刷ジャーナル 2016年2月25日
「アレグロ」の前で吉村社長(後列左)、山本部長(後列右)
ブックデータセンターで本の寸法を測り、丁合、無線、三方断裁のすべてにプリセット情報を一斉に飛ばすことで段取り時間を短縮
グラフィックガーデン

平均段取り時間12分、PUR製本を開始する7月までに達成へ

 平均段取り時間12分--。昨年6月にミューラー・マルティニの全自動無線綴じ機「アレグロ」を日本初導入した日経印刷(株)(本社/東京都千代田区、吉村和敏社長)は、書籍の多品種小ロット化が加速度的に進む中、この実現を目指す「アレグロチャレンジ」を2016年1月から本格始動している。同社フラッグシップ工場「グラフィックガーデン」(東京都板橋区)にアレグロを導入した同社は、今年7月からPUR製本を開始する予定で、それまでに目標値として定めた平均段取り時間12分を達成する計画だ。一方、製本ライン全体を「数値化」するアレグロの導入は、段取り時間の短縮だけでなく、品質の安定化と作業効率向上による省人化、製本工場全体の生産性向上に結び付くなど様々な効果をもたらしている。フルフィルメントサービスを目指す同社は今後、このアレグロを最大限に活用し、グラフィックガーデン全体の機能をさらに高めていく考えだ。

フルフィルメントサービス目指す

 同社は創業50周年を迎えた2014年10月を第2の創業と捉えて事業活動に邁進。その結果2014年は目標の100億円を大きく上回る業績を達成。2016年の業績も1月から順調に推移している。
 2015年には5カ年計画「2020ビジョン」を策定。吉村社長は同ビジョンについて、「紙への表現がコアであることは変えない。印刷をコアとして、上流工程と下流工程をさらに強化する」とフルフィルメントサービスに取り組んでいく考えを示す。「アレグロ」の導入も、その一貫であったことは言うまでもない。
 この「アレグロ」が本稼働する「グラフィックガーデン」は、カラー印刷を中心とする24時間稼働のフラッグシップ工場。2012年には(一社)日本印刷産業連合会の環境優良工場表彰において最優秀の経済産業大臣賞も受賞している。
 グラフィックガーデンにある製本部門では、これまで国産メーカーの無線綴じ2ラインを稼働させていたが、このうち1ラインは18年前に導入したもので老朽化が進んでおり、段取り替えに30分近くの時間がかかっていた。同社では受注の7割が3,000部以内、そのうち半分は1,000部以内で、多品種小ロット化が加速度的に進んでいた。そのような中、「アレグロを導入すれば段取り時間を大幅に短縮できる」と、富士フイルムグローバルグラフィックシステムズ(株)(=FFGS)から推奨されたことがアレグロ導入のきっかけとなった。
 「他社製品とも比較検討したが、バインダー単体ではなく、丁合から三方断裁までの一貫生産ラインで考えた場合、段取り時間の短縮や省人化など、当社が求める要素に最も適合したのがアレグロだった。ミューラー・マルティニを導入するのは初めてであったが、作業はすべて数値で自動化して運転するため、操作面で戸惑うこともなく導入当初からスムーズに稼働している」(生産本部 製本部 山本裕司部長)
 同社の製本部門は1997年7月に立ち上がり、まだ18年と歴史は浅い。このため、何十年もの経験を持つ熟練工はいないが、約50名(パート含む)の製本部の平均年齢は25歳前後で、デジタルに明るい世代が中心になって頑張っている。さらに同社では、従来から製本ラインにメモリをつけるなど「数値化」には積極的に取り組んできたため、すべてを数値化しているアレグロも導入当初から抵抗なく受け入れることができたという。

品質の安定を実現、工場全体の生産性も向上

 同社では昨年6月以降、ミューラー・マルティニジャパンとFFGSの3社連携により、2週間に1回は集まり、問題点やアイデアを出し合いながら平均段取り時間12分を目指す「アレグロチャレンジ」の達成に向けた取り組みを開始している。その結果、当初平均30分かかっていた段取り時間が現在は平均16分にまで短縮された。ジョブによっては10分を切るものもあるという。
 「段取り時間はかなり短縮されたが、まだまだ発展途上の段階。今年1月からもう一度仕切り直して『アレグロチャレンジ』を達成するための取り組みを本格的に始動している。最終的な微調整が不要になる数値の研究、効率の良いオペレーターの動きなどを考え、さらなる段取り時間の短縮を目指す。今年7月からはアレグロによるPUR製本を開始する予定なので、それまでには平均段取り時間12分を達成させたい」(山本部長)。
 アレグロ導入前は、1ラインに3人のオペレーターをつけていたという同社。しかし、現在は2人のオペレーターで対応している。オペレーターの人数を減らしながらも段取り時間を短縮できていることからも、アレグロがいかに段取り時間を短縮できる機種であるかが分かる。
 それでは何故、アレグロは段取り時間を短縮することができるのか。アレグロは「ブックデータセンター」で本の寸法を測り、丁合、無線、三方断裁のすべてにプリセット情報を一斉に飛ばすからである。これまでのように順番どおりではなく、一斉にかかるため、切り替えを素早く行えるというわけである。
 一方、アレグロの導入は段取り時間短縮だけではなく、「品質の安定化」にも大きな効果を発揮しているようだ。
 「自動化が進んだとはいえ、製本ラインではまだまだ工具を使用しての熟練技術を要する作業や、勘で作業することも多々ある。このため、『昨日はできたのだが今日はできない』など、これまでは品質の安定化が図れていない部分もあった。しかし、アレグロは製本ラインをトータルで数値管理できるため、そのようなこともなくなり、品質の安定化が実現した」(山本部長)
 さらに、アレグロでは乱丁防止機能として「アジールコード」を採用している。従来のCCDカメラによる乱丁検査では、1枚目をカメラで読み込み、それを2枚目以降と比較検査するため、オペレーターが間違ったデータを読み込ませてしまうという人為的ミスが発生する可能性もあった。しかしアジールコードを採用したことにより、刷版工程でバーコードを入れ、それを丁合工程で読み込むため、1枚目からの乱丁検査が可能になる。
 「シリーズものや日本語版、英語版などがある本の場合、似ているので見分けがつきにくく、人為的ミスが発生したこともあった。しかしアジールコードを採用したことにより、その心配もなくなった」(山本部長)
 また、3,000部を分岐点として小ロットをアレグロ、それ以上の中・大ロットを既設ラインで生産することにより、双方の稼働率が向上し、それが製本工場全体の生産性向上にもつながるなど、アレグロ導入による効果はあらゆる面で発揮されている。それはフルフィルメントサービスを目指す同社のフラッグシップ工場・グラフィックガーデン全体にも良い影響を与えていくことは間違いなく、今後のさらなる躍進が期待される。