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躍進企業REPORT

作道印刷:蒸着紙や透明素材をインライン検査〜「Lab-vision2」導入

印刷ジャーナル 2015年9月5日
作道社長
昨年7月に竣工した新社屋
ジクス「Lab-vision2」
菊全判5色機「GL-540(コーター+UV装置付き)」
検査結果を直感的に認識できるモニター

ブランクス検査とフレキシブル運用も

 パッケージ印刷や化粧箱・紙器の製作を手掛ける作道印刷(株)(東大阪市水走1-12-20、作道孝行社長)は今年3月、蒸着紙や透明素材に対応したジクス(株)(東京都板橋区宮本町、高原亮介社長)のハイエンド枚葉印刷機用インライン印刷品質検査装置「Lab-vision2」を導入。ブランクス検査工程に加え、新たに印刷工程におけるインライン全数検査を実践することで、工場全体の最適化から利益率向上、顧客信頼度向上といった多角的なメリットを享受している。


 パッケージ印刷の一貫生産体制・ワンストップサービスを最大の強みとする同社は、昨年7月に竣工した新社屋でのオペレーション開始によって、その機能に磨きをかけている。
 同社の生産拠点はそれまで、印刷の城東工場と加工の本社工場の2ヵ所に分散されていたことから、物流面での時間的・経済的ロスを強いられていた。新社屋建設は、この2ヵ所に分散していた生産拠点の集約が最大の狙い。同時に、仕事の導線を緻密に計算した設計を施すことで、生産性の向上と人的ミスの排除を実現している。
 作道社長は「生産拠点の集約は、生産効率およびコスト面に大きく寄与するとともに、2工場での重複業務一本化によって人材の有効活用も可能になる」と説明する。
 設備面では、新たに小森コーポレーション製菊全判5色機「GL-540(コーター+UV装置付き)」を新設。他のUV機と併せて3台体制とし、準備時間の短縮による生産効率向上を実現しているほか、トムソン工程では、トムソン加工で打ち抜かれた製品の不要部分を手作業で取り除くムシリ作業を自動化する高速ブランキングシステム「マスターブランカ」を新設し、省力化および工程全体の自動化を推進するシステムとして稼働させている。
 「仕事をスムースに流せる導線の設計には力を入れた」と語る作道社長。その「肝」となっているのが、3フロアすべてを貫く自動倉庫だ。167パレット収納可能で、これらはすべてデータ管理されている。工程間の物流的効率化からスムースな在庫管理、配送を実現するとともに、防虫対策効果としても機能するそうだ。

          ◇            ◇

 「仕事の導線を緻密に計算することで生産向上と人的ミスを排除する」という新社屋の設計コンセプトにもあるように、同社が当面の課題としてきたのが「自動化」だ。その実現にはシステマチックな検査工程が欠かせない。
 「品質管理」において同社は、これまでオペレータによる目視検品とブランクス検査装置に依存してきた。当然ながら目視検査は非効率で、精度にブレが生じる。さらに、発生しても数枚で消える3タレ(水ダレ、油ダレ、インキダレ)のような連続性のない不良は見逃してしまいがちだ。一方、それをカバーするブランクス検査装置も、抜き上がったものをオフライン検査するため処理能力に限界があり、この「関所」を通らず出荷される商品も当然出てくる。
 そこで浮上するのが「印刷工程におけるインライン全数検査の必要性」である。
 早速、機種選択に入った同社だが、多様な原反を扱うパッケージ印刷に欠かせない機能として当社が必須条件として定めたのが蒸着紙や透明素材への対応である。
 説明するまでもないが、カメラによる検査は、蒸着紙などでは反射するし、透明素材ではシリンダーが写ってしまう。これを光源の角度や光りの量を制御することでカメラによる比較検査を可能にしたのがジクスの印刷紙面検査システム「Lab-vision2」だ。今年3月、主力の菊全判5色機「GL-540」に搭載された。

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 ブランクス検査の対象で多いのが食品トレイ。これは主に紙の夾雑物をチェックしている。この場合、例えば印刷側で全数検査しても、その不良箇所が商品部分になるかどうかが分からないため、抜いてからのブランクス検査が有効となるわけだ。
 「Lab-vision2」は、このブランクス検査とフレキシブルな形で運用されている。典型的なケースで言えば、インライン全数検査でNGとなったものを別で抜いておいて、それだけブランクスにかけるという運用。例えば4丁付けの1丁だけがNGならば、残りの3丁は良品として扱えるわけだ。
 「商業印刷と比べて比較的に原反の単価が高いパッケージ。多少なりとも歩留まりは改善される」(作道社長)
 さらに同社では、給紙部に搭載したインクジェットヘッドでナンバリングを行い、欠陥画像とのデータリンクで欠陥印刷物を簡単に抜き取れる仕組みを採用。厚紙の場合、リジェクターによる排出だと傷がつくこともあるため、これが最も効率的だという。
 「印刷機がまだ新しいだけに、NGが頻繁に出るわけではないが、それが逆に怖い。最大の効果は、突然発生する不良の監視をシステムに依存することでオペレータの精神的負担を軽減し、重大欠陥が社外に出ないという安心感が得られること」(作道社長)

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 現在では「重大欠陥発見ツール」としての機能で貢献する「Lab-vision2」だが、今後は検査履歴データを有効活用していきたいという同社。「NGヵ所の座標傾向から機械の健康状態を把握し、予測できれば効率的なメンテナンス、予防保全を実現できる。対クライアントで考えた場合は、検査履歴を開示することでエビデンスを示せる」(作道社長)
 同社は平成26年度補正「ものづくり・商業・サービス革新補助金」1次公募で採択され、「Lab-vision2」の4色UV機への増設を決めている。システマチックな検査工程の充実化を推し進めることで、工場全体の最適化、利益率向上、顧客信頼度向上といった多角的なメリットを享受していく考えだ。