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躍進企業REPORT

井手印刷:「大切な思い出を、かたちに」-地域密着型フォトブック事業開始

印刷ジャーナル 2014年5月15日
井手社長
井手専務
Impremia C70

 井手印刷(株)(本社/和歌山県和歌山市、井手幸男社長)は、1946年に創業。和歌山市の中心街に立地しており、創業時より地域に貢献する地域密着型の印刷会社として高い信頼を得ている。特に新たな設備の導入や切替えには積極的で、いち早くデジタル化に着手し、ホテルのブライダル関連の仕事に対応するためのオンデマンド印刷機も県下で最初に導入している。その同社は昨年4月、新規ビジネスにチャレンジするための戦略機として、デジタル印刷機「Impremia(インプレミア)C70」を導入した。今回、導入理由と成果、そして新規ビジネスについて伺った。


若い世代にビジネス開拓を任せるために導入

 同社は「顧客を大切にし、付加価値サービスを提供する。顧客ニーズにスピードをもって対応する」を経営方針に掲げ、地域とともに成長することを目指し、創業時から地元銀行の帳票類を取り扱うなど、幅広い印刷物に対応できる社内一貫生産体制を整えている。
 井手社長は、大学3年生の頃から父である創業者の下で、印刷機の操作や営業活動などに携わっている。
 当時を振り返り井手社長は「活版・営業・オフセットを苦労しながら体験したことは、私にとって大きな財産であり、どのような設備に切替えていけばいいのかを正確に判断できるようになった」と語る。
 そんな井手社長は、同社の新たな戦略機としてデジタル印刷機「Impremia C70」を導入。その導入理由について伺った。
 「既設のPODとImpremiaの違いは、印刷現場から見たオンデマンド印刷機であるかどうか。機械の能力、品質、そして柔軟な対応力の面でImpremiaは勝っている。それにKOMORIの常に迅速丁寧な対応にも信頼感がもてた。多くの他メーカーの機種も見学したが、社員全員の意見がImpremiaで一致した。顧客にとっては他にない付加価値を提供でき、当社にとっては新たな販促活動ができる設備であることが、Impremiaを選択した理由である」。
 また同機の活用について井手社長は「次代を担う若い世代が新たな感覚と発想で考え、ビジネスを開拓してもらいたい。新規ビジネスにチャレンジすることが、当社を支えていく若い世代の役目だと考えている」と語る。

新規ビジネス「思い出コレクション」の展開

 導入後、新規ビジネス開拓の重責を担う井手敏泰専務は、KOMORIが発行する機関誌「ON PRESS」に掲載された「新たにフォトブック事業をスタート」というImpremia導入会社の記事を見て「フォトブックへの取り組みこそが、当社がチャレンジするビジネスだ」と直感したという。そして導入1ヵ月後には、折り機やラミネーターなどの加工設備一式をKOMORIのアドバイスで整えている。
 「当社では、フォトブックという呼び方ではなく『思い出コレクション』という名称にしている」と語る井手専務に、その新規ビジネスへの想いを伺った。
<作品集で残す>
 「フォトブックと言うと『写真をアルバムにする』といったイメージになってしまう。これまでの受注実績の中で一番喜んでもらっているのが作品集。特に子供の作品集は一番の思い出になる。『思い出コレクション』には写真だけでなく『作品もきちんと残せます』という当社の想いを込めている。ですから子どもの絵や工作をデジタルカメラで撮影してもらい、それを作品集として残しましょう、と提案している」
<対面形式で作成>
 「思い出コレクションの作成は、対面形式による打ち合わせにより、お客様の要望を直接聞いて作業を進めている。打ち合わせを重ねていくと要望も大きくふくらみ、その結果、予想以上の作品となり、喜んでもらっている」
<写真のまとめ>
 「当社が実施したアンケート調査では、8割以上の方が写真データの整理ができていないと回答している。実際、デジタル写真は好きなだけ撮ることができ膨大な量となる。そのため、どこにデータを保存したのか分らないという方も多く、思い出コレクションに対するニーズは高まっている。発注者からは、品質を含めサービス全体に高い評価を得ている」
<地域のお役に立つ>
 「フォトブックはWebを活用した事業展開が主流となっているが、先ずは和歌山の市場の中で地域の役に立てる新たなサービスとして展開し、地盤を固めていきたい。『思い出コレクションといえば井手印刷』と認知されるようにPR活動にも力を入れていく」

品質が評価され受注拡大

 Impremiaの導入からまだ1年が経過したばかりだが、井手専務は導入成果について「当地は多品種・小ロット物件が多いため、Impremiaによる価格負担の軽減も多くのお客様から評価を得ている」と語る。
 また実際の印刷現場でも担当オペレータ及びフォトブック担当者が導入メリットについて次のように説明する。
 「受注品目も増加傾向にある。オフセット印刷に近い品質と表現力、特殊紙への対応性などが受注印刷物の種類拡充につながっている。仕事が増えて、3人のオペレータで機械を取り合っている状態」(田中昭道統括部長)。
 「品質に関しては、イメージしていたものがそのまま出力される。以前はオフセット印刷で刷ったものをPODに切替える時には相当なプレッシャーがあったが、今はお客様に満足してもらえる品質で提供している」(桑原寿也部長)。
 「紙厚や種類によって細かな設定ができ、大型パネルで操作しやすくなった。今までに約20種の用紙を使っているが、印刷品質にも稼働状況にも満足している」(石倉英樹システム管理課長)
 「お客様は、作りたかったけど、どう作ればいいのか分らない、という方が多い。できるだけ思い出のつまった作品集を提供するために、メッセージを入れるなど細かな提案をしている。作品集を見ると、とても喜んでもらっている」(南智子フォトブック担当)

提案力で顧客満足を提供

 最後に、井手社長に今後の方針について伺った。
 「思い出コレクションのフォトブック事業については、これからの当社の主力業務として育てていく方針。若い社員に任せているが、Impremiaはフォトブック以外にも様々な活用ができると期待している。競争の時代だからこそ、価格を安くする営業展開ではなく、提案力でお客様に喜んでもらえる仕事に今後も取り組んでいく。お客様の付加価値を高めるために、そして井手印刷にふさわしい販促活動が行えるようにするために、新たな設備を導入していくことが当社の基本方針。Impremiaの導入にあたっても、将来的にはカラーマッチングが行える4色オフセット印刷機を導入したいとの想いから決断した。2年後に70周年を迎えるが、『70周年に向かって大きくステップアップ』を目標に、大きな設備導入ができればと考えている」と語る井手社長は、地元・和歌山の人々とともに喜びを分かち合える企業づくりを目指している。