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躍進企業REPORT

東和印刷:JDF/MISとプリナジーRBA連携で「究極の自動化」を追求

印刷ジャーナル 2011年2月25日
品質管理部の宮本次長
ワークフローを自動化するプリナジーのRBA画面
工務でMISに入力されたジョブ情報は全社で共有される
東大阪の本社工場

 「究極の自動化を目指して」〜積極的なデジタル投資で急成長を遂げる東和印刷(株)(本社/大阪府東大阪市高井田中3-9-10、高本吉則社長)では、JDF/MISとコダックのPDFワークフローシステム「プリナジー」、さらにそのオプション機能「RBA(ルールベースオートメーション)」を基点としたプリプレス工程の自動化に成功している。その運用の最大のポイントは、「管理者が自社の業務を如何に整理できているか」。段階的な運用を経て、JDFという概念を柔軟かつ的確に捉えてきた同社が次に目指すものは...。

JDFの概念を柔軟かつ的確に捉える

 同社の創業は昭和58年。輪転機・枚葉機という両輪を軸として急成長を遂げた総合印刷会社である。そのベースとなったのがプリプレスにおける先行投資だ。DTPへの早期移行はもちろん、1998年のサーマルCTP関西1号機導入、また2002年にはコダックのWeb to Printソリューション「インサイト」を導入し、インターネットを介した顧客とのオンライン校正を実現するなど、新技術をいち早く取り入れることで先行者利益を追及してきた。
 一方、基幹業務システムにおいても1999年にMIS(経営情報システム)を導入し、同社のプリプレス工程の中核をなすPDFワークフローシステム「プリナジー」とJDFにより接続。全体最適化を図る中で、作業効率を飛躍的に向上させている。
 同社がJDF運用を速やかに実践できたのは、段階的な運用を経て、JDFという概念を柔軟かつ的確に捉えてきたことにある。品質管理部の宮本雅夫次長は「JDFは工程間を繋ぐもの。受注〜納品までの全体フローの最適化である。しかしこれはある意味で融通が利かない部分も多い。結果、当社では全体最適をする前に部分最適が必要だと判断した」と語る。そんな議論から派生したのがさらなる自動化への挑戦だ。
 同社の担当者は2004年、コダックのR&D拠点であるバンクーバーへ出向いた際、当時まだ開発中であったプリナジーの新機能「RBA」の存在を知る。RBAは、生産工程を簡素化しながら、複雑な手順の自動処理を行う機能で、プリントジョブのあらゆる対応を事前に定義された「ルール」に基づいて実行するというもの。業務システムとの自動化連携や自動面付け、検版ソフトなどの外部アプリケーションとの連動など、高度な自動化が可能である。
 同社は、その場で導入を決めて帰国。日本でのリリースと同時に「さらなる自動化」に乗り出すことになる。

全体の7割以上を自動化

 JDFという方向性を明確に打ち出していた同社では、RBAに対し、それほどアレルギー反応はなかったようだが、プログラムの部分で壁にぶつかったという。
 「RBAリリース当時は、まだ機能が少なかったこともあり、理想の運用とはかけ離れた状態が続いた。とにかく2〜3年はうまく運用できなかった」と宮本氏は振り返る。そこで、RBAの機能を補うには社内にプログラミング技術が必要だと考えた同社は、コンピュータプログラミングを専攻していたベトナム人を新卒で採用。同社の要望を正確に理解してもらうため、それからの1年間は日本語とビジネスマナー習得に専念させ、2年目から本格的な業務に就かせた。結果、現在では、他のアプリケーションとの連携はもちろん、独自で開発したアプリケーションをRBAと連携させるなど、自由自在の運用が可能になり、一気に同社の自動化を加速させる結果となった。
 同社では、JDF/MIS+プリナジー+RBAを基点とした製版工程の標準化および自動化に成功している。その実際の運用は次のようになる。
 まず、全体のフローは基本的にファイル名で管理されている。MISを経由して受注情報が生産管理に渡される。そこでJDFをはき出すと自動的にプリナジー内に空のフォルダ(ジョブ)ができる。一方、作業指示書を受け取った製版オペレータは、入稿データのファイル名およびコード番号を入力し、ホットフォルダに投げる。するとプリナジー内の空のジョブに自動的にデータが移動し、その後はRBAで定義された条件分岐をたどりながら自動処理され、CTPやプルーファー、デジタル印刷機といった必要な各デバイスから出力される。
 ここで着目すべきは、ジョブ毎に用意されたホットフォルダがあるのではなく、基本的にホットフォルダは1つであること。オペレータはフォルダを探す必要もなく、人的ミスはなくなるというわけだ。
 ただ、これですべてが自動化できるわけではない。そのため同社では随所に関所を設け、エラーが発生した場合はそこで自動処理をストップし、同時にエラーメッセージがメールで通知されるようになっている。例えば、面付け工程でも自動でテンプレートを呼び出してきて面付けされるが、ページが足らない場合はそのままスルーしないように自動処理はストップ。メールで「ページが足りません」といったエラーメッセージを返す。
 「最低7割の仕事はこれで自動化できる」(宮本氏)

管理者が業務整理できていることが最低条件

 「RBA活用による効率化は、予想以上に大きかった」(宮本氏)とする同社では、仕事量が変わらないにも関わらず、オペレータは従来の半分以下にまで減っている。その人員がRBAに置き換わったことで「かなり高いコストパフォーマンス」と評価している。
 さらに全体のフローをファイル名で管理している同社では、クライアントに「データの管理手法教えます」という視点で、ファイル名による管理ルールを訴求しているという。そうなると自社でファイル名を書き換える手間さえも省くことができる。結果、クライアントからインサイト経由でアップされたデータは自動でホットフォルダに移動、自動処理され、なんと最短でデータアップから45分でプレート出力が完了するという。
 JDF/MIS+プリナジー+RBAによる受注から後工程までの統合されたワークフローを構築する中で積み重ねてきた自動化へのチャレンジ。言うまでもないが、単に設備したからといってできるものではない。
 「最も重要なのは、管理者が自社の業務を如何に整理できているかにかかってくる」と断言する宮本氏。自動化において実働人員は自分のエゴで物事を考える。しかし、マネージャーは、誰がどのような仕事をどういう役割でこなし、さらにはどこに負荷がかかっていて、それを如何に削って、余力をどこに回すか...といった判断が必要である。さらに管理者と実働人員が意思疎通を図る中で、運用の精度を高めていく。ここが最大のポイントになる。
 「出来る限り楽がしたい」という本心を伺わせる宮本氏。今後は固定クライアントに対して受注業務の自動化も視野に入れた展開を模索しているという。