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躍進企業REPORT

豊榮印刷:「スペクトロドライブ」は印刷機の「健康診断」ツール

印刷ジャーナル 2010年7月15日
池田宰基社長(右)と池田俊紀氏
スペクトロドライブ
温湿度管理が徹底された工場内

 パッケージ印刷の豊榮印刷(株)(大阪市北区豊崎6-8-8、池田宰基社長)は今年、ハイデルベルグ製SM102(4色機)を新たな戦略機として導入するとともに、徹底した数値管理から生まれる「豊榮の品質」を支える品質管理ツールとして、テシコン製の自走式分光濃度計「スペクトロドライブ」を導入。ここに工場内の温湿度管理の強化を加え、新たな次元での品質保証体制を構築している。

 同社の創業は昭和9年。活版印刷業を営む「池田精版印刷所」として産声をあげた同社だが、昭和46年の新社屋完成を機に、パッケージ印刷分野に特化していく。現在も自動車のフィルターエレメント・ベアリングやクラッチといった工業製品系パッケージやケーキの箱といった食品系パッケージが主体で、これらに付属するカタログやポスター、いわゆる商業印刷事業もおよそ3割程度ある。
 パッケージと商印。この両輪を支える最大の武器は、徹底した数値管理から生まれる「豊榮の品質」だ。
 平成11年に薄紙・厚紙兼用機として優れるハイデルベルグ製CD102インラインニスコーター付き(2色機)を導入。パッケージと商印を手がける同社では、0.03~1ミリ厚の紙を通す必要がある。この生産設備を1台に集約するのが狙いだったが、同時にこの設備投資が品質の数値管理実践への第1歩でもあったという。

 現在、同社の品質管理全般を統括するのは資材・生産管理部の池田俊紀氏。池田社長のご子息である池田氏は、2003年に日本プリンティングアカデミーに入学。4年間、印刷全般の知識を学んだ後、東京の印刷会社で3年間の修行を経て、今年、豊榮印刷に帰ってきた。時を同じくして、豊榮印刷では工場を増築、ハイデルベルグ製SM102(4色機)を新たな戦略機として迎え入れ、「攻めの経営」に乗り出している。
 池田氏は日本プリンティングアカデミー時代、産学協同の一環でOEM研究会に所属。測色機担当として、あらゆる機種の検証を行ってきたという経歴を持つ。ここで濃度とLabを測定し色管理を数値化することの重要性に加え、「湿度や温度といった工場全体のトータル管理の中で、はじめて製品として印刷物は生まれる」という概念を植え付けられたと振り返る。
 さらに卒業後、修行の場となった(株)金羊社(浅野健社長)では、「良いものを作るということは、良い環境を作ること」という理念を叩き込まれた。今年増築した工場には空調をはじめ様々な温湿度管理設備が導入されており、同社の品質管理はもう一歩先へと進んでいる。
 また同社は、「機械をきれいに使う」ということにひとつのこだわりを持っている。メンテナンス作業には多くの時間を費やし、通常、メーカーでの作業を必要とするような作業も自社で手がけることが多いという。池田氏は「品質はもちろんのこと、何より機械の寿命に大きく影響する」と説明する。

 「印刷物を測定する」。同社ビジネスを支える原点ともいえるツールは、新たな戦略機にも必要である。そこで同社が選択したのは、テシコン製の自走式分光濃度計「スペクトロドライブ」だった。
 OEM研究会で様々な測色機の検証を行ってきた池田氏。そんな池田氏がスペクトロドライブを評価する点は「ソフトウェアの汎用性」だ。
 「エクセルで印刷特性要因を表にしている私にとって、エクセルとソフトウェアの高い互換性は非常に優位性があった。最も使いやすく簡単で、しかも融通の利くソフトウェアだと感じている」と説明する。
 「スペクトロドライブ」は、ハンディ型の分光濃度計とほぼ同サイズのボディにモーターユニットを装備し、ガイドトラック上を150ミリ/秒の速度で自走しコントロールストリップ(カラーバー)を高速に測定する自走式分光濃度計。自走式でありながらガイドトラックから簡単に取り外してスポットの測定も行なうことができ、その接続にはブルートゥースのワイヤレス通信を採用している。
 偏光フィルタの自動切替装備も大きな特徴で、1回の測定で往路に偏光フィルタで濃度測定を行ない、復路では偏光フィルタをOFFにして色彩値の測定を行なうことが可能である。
 池田氏が高く評価する専用ソフトウェア「ExPresso(エクスプレッソ)」は、各色のインキキー濃度やグレイバランスのほか、基準色からのΔE*ab表示や色差から濃度値のガイドをするインクチェック機能も搭載。また、測定結果を各メーカーの色調ソフトウェアに転送するための機能も装備されるほか、XML書き出し、任意領域のみのデータ書き出しにも対応する。

 「測色機は色や濃度の測定はもちろんだが、最大の利用価値は、印刷機の健康診断ツールとして機能することだ」と語る池田氏。数値管理によって印刷機の健康状態を把握することで、はじめて品質は安定するということだ。ひいてはメンテナンスコストにも影響してくるという。
 同社にとってなくてはならない存在の測色機。ただ全国的に見てもその利用状況はおよそ6割程度と見られている。このことについて池田氏は次のように語っている。
 「7年前頃の当社もそうだったが、昔は無かったもので、現に今も無くても印刷はできるため、効果を理解されていない部分が大きいのではないか。ただ濃度だけを測るのなら不要だと思う。それを自社にあったツールに如何にカスタマイズできるか。濃度はあくまで目安。それをどうやって印刷の品質管理に落とし込むかということを理解できるかどうかだと思う」