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躍進企業REPORT

近江印刷:MEGA Jprint導入、両面機+ロールフィーダーで生産性追求

印刷ジャーナル 2007年12月15日
里西社長
MEGA Jprint

 日本のほぼ中央・湖国滋賀に約1万1,000平米の工場を構え、一般印刷とビジネスフォーム印刷を両輪に事業展開する近江印刷(株)(滋賀県愛荘町川原771-1、里西良之社長)は今年10月、IGAS2007でアキヤマインターナショナルが装いも新たに発表した菊全判両面4/4色機「MEGA Jprint」(ロール紙・枚葉紙兼用機)を導入。活発化する市町村合併に伴う受注ロットの増加傾向に対し、両面機の真骨頂である「生産能力向上」に「ロールフィーダー」という新しい武器を加え対応している。また、これまで外注していた仕事の内製化はもちろんのこと、仕事による機械振り分けのバリエーションが広がり、予想以上の効率化をもたらしているようだ。

10年間で急成長

 同社の歴史は、創業者である里西龍太郎氏が朝日新聞記者という経験を活かし昭和20年、ミニコミ紙「近江タイムス」を創刊したことに始まる。この近江タイムスの自家製作を目的に昭和33年、活版印刷機を導入し、印刷業として産声をあげたのが同社の前身・里西印刷所である。昭和40年にオフセット印刷を開始、後の昭和60年には現在の近江印刷(株)に改組するとともに、里西社長が二代目社長として家業を受け継ぐ。以来、滋賀を主エリアに、近畿圏、中部圏、遠くは関東圏にまで事業エリアを拡大し、「貴社の印刷応援団!」というキャッチフレーズのもと、印刷会社の第2工場としての役割に徹し、同業者からの厚い信頼を得てきた。
 同社の大きな転機となったが平成9年に竣工した工場面積6,000平米を有する新社屋への移転だった。当初およそ2億円の年商だったものが、広大な工場取得による生産キャパシティの増大と、彦根にあったビジネスフォーム工場を統合することで得た効率性が寄与し、10年でおよそ7億円を売り上げる総合印刷企業に成長。3年後には年商10億円を目指す。
 特徴は「カラー印刷にも伝票印刷にも強い会社」。一般印刷とビジネスフォーム印刷(コンピュータ用連続伝票)を2本の柱として、データ作成、印刷、最終製本仕上げまで豊富な設備と熟練の技術者で一貫自社生産している。「地方の強みを活かすには、トータルで充実した設備が必要」という里西社長。年度計画により毎年積極的な設備投資を繰り返し、同社が用意している設備概要リーフレットには、設備機がA4にびっしり記されている。

「三方よし」の機種選択

 同社の事業エリアで最も大きな割合を占めるのは、はやり地元・滋賀県。うち市町村関係の仕事が3割を占めるが、滋賀も市町村合併が頻繁に実施されている県の一つで、これにより印刷物の受注ロットが年々拡大傾向にあるという。「現在、当社がある愛荘町の人口はおよそ2万人。いずれ彦根市か東近江市と合併するだろう。もし人口約11万6,000人の東近江市と合併すれば、滋賀県2番目の市になる。そうなれば、我々も印刷の生産能力を向上させる努力をしないとブローカーになってしまう」と里西社長は危惧する。
 そこで同社は、生産性向上を菊全判両面4/4色機に見出す決意を固め、アキヤマインターナショナルがIGAS2007で装いも新たに発表したMEGA Jprint菊全判両面4/4色機(ロール紙・枚葉紙兼用機)を発注。10月から稼働を開始している。
 新型両面印刷機「MEGA Jprint」はこれまで、マイナーチェンジを重ねることで完成度を高めてきた。今回で5世代目となる導入機は、大きく機械構造を改善し、新開発の数々の装置を搭載している。
 機種選択の理由について里西社長は、「今回の改良で、高速運転時の安定性や機械の堅牢性、排紙の安定性などの面で、完成の域に達したと判断した。版胴・ブラン胴・圧胴のすべてが単胴のため、見当精度が高く、反転しないため、表裏の品質差がない。『両面機のパイオニア』であるアキヤマの技術に惚れた」と語る。
 さらにロールフィーダーオプションを搭載したことについて、「給紙に無理がなく、高速運転時での安定性が増す。もちろん紙代のコストダウンメリット(2割程度)も理由の一つだが、最大の理由は、紙積み工程を排除することにより、オペレータの作業を軽減するという『省力化』である。これは効率向上にも繋がるわけだが...」と説明する里西社長。「元気に、明るく、礼儀正しく」と社員教育に熱心な同社は、地元では「人生道場」と目されるほど。一方で、厳しい中にも社員の労働作業を少しでも軽減するための投資、また営業マンが自信をもって仕事を取ってくることができる環境への配慮が随所で見られ、ロールフィーダー仕様の選択もこの「里西イズム」に基づいているようだ。加えて、スピード&クオリティの実践、急成長を続ける同社業績、まさに近江商人の「売り手よし、買い手よし、世間よし」という「三方よし」の経営理念が息衝いている。

インカークラッチで多様な仕事に対応

 同社にとって初めての導入となった菊全判サイズの印刷機。しかもロールフィーダーを搭載している。「B3輪転機という選択はなかったのか」という質問に対し、里西社長は「もちろん選択肢の一つとしてあった。しかし市町村の仕事のほとんどがA判仕様のため、A4の8丁付けによる効率化を選んだ」と答えている。
 しかし、チラシ印刷の仕事も多いことから、輪転機の導入も視野に入れ、すでに用地を取得済み。これにより工場敷地面積は1万1,000平米となっている。
 ロールフィーダーを搭載した菊全判両面4/4色機「MEGA Jprint」は、片面4色の菊半裁と単純に比較して版サイズ+両面で4倍の生産能力となるが、ロールフィーダーを搭載することで、里西社長は8倍の生産能力に達すると試算する。さらに、操作性についても高く評価しており、同機は入社2年目の機長と今年の新入社員の2人が担当しているという。
 同機は4/4色機でありながら、地方ということもあり、様々な仕事をこなせる汎用性も問われる。同機には全ユニットにインカークラッチが標準装備されており、4色片面、2/2、1/1といった様々な仕様にインカーを止めることで対応できる。多様で豊富な印刷機を所有する同社にとって、同機が加わったことで、さらに仕事の振り分けのバリエーションが広がり、予想以上の効率化を実現しているわけだ。

水道水をそのまま湿し水に

 一方、地球環境保全へも積極的に取り組んでいる。「『関西の水瓶』である琵琶湖を汚さない」という使命を担う同社では、滋賀県内で設立された環境への負荷が少ない製品やサービスの優先的購入を進めるネットワーク「滋賀グリーン購入ネットワーク」へ参加している他、環境省のエコアクションや環境保護印刷マーク「クリオネマーク」のゴールドプラスを取得。さらに今秋予定のプライバシーマーク取得後には、ISO14001認証取得に着手する予定だ。
 さらに、光触媒と磁気を応用し、添加剤を一切使用せず、水道水を湿し水として利用できるようにする湿し水生成装置を導入し、現在検証中である。「将来的には全機種に採用する予定だ」(里西社長)