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躍進企業REPORT

エービーエス:ボーレンベルグ社製断裁機「pro-tec」日本1号機導入

印刷ジャーナル 2007年5月15日
「pro-tec」日本1号機

 紙工とタグラベル生産加工のエービーエス(株)(京都市右京区西院西田町26、古川浩二社長)は今年1月、進化を遂げたボーレンベルグ社の最新鋭断裁機「pro-tec(プロテック)」日本一号機を導入した。機械化による「精度」「スピード」を追求する同社の核となる断裁工程を支えてきたのは、創業以来すべてボーレンベルグ断裁機。「良い物を早く作れば商売は成功する」という信念のもと、古川社長がこだわり続けるボーレンベルグ断裁機と、進化を遂げ、日本再上陸を果たした「プロテック」の魅力を取材した。

 昭和39年、印刷物の加工全般を手掛ける「エビスヤ紙工」として創業した同社。当時は言うまでもなく高度経済成長期の真っ只中で、創業するや否や大量の仕事が舞い込んだという。しかしそんな好景気にも踊らされることなく、古川社長は、「良い物を早く作れば商売は成功する」という信念のもと、機械化・自動化によるスピードとクオリティを追求することで企業価値を高めてきた。
 また、同社は当時、内職による手作業であった下げ札糸付け工程をイギリスから取り寄せたシステムでいち早く機械化に成功。現在では日産60万枚のタグラベルの生産加工を手掛け、同分野のパイオニア的存在としても知られる。
 下げ札糸付け加工を機械化する上で、重要なポイントとなったのが、その前工程となるブッシュ型抜きの精度、そしてその精度を維持するための高い断裁加工精度。つまり同社が標榜するスピード&クオリティ実現のベースとなるのが断裁工程での精度であったわけだ。そこで機械が好きで、機械化にこだわる古川社長が選んだのがドイツ・ボーレンベルグ製断裁機であった。「ドイツの工場もこの目で見学し、その機械作りの姿勢を評価した上で決断した」と当時を振り返る。
 日本市場におけるボーレンベルグ断裁機の歴史はおよそ40年。同機の京都一号機を導入した同社の歴史とほぼ重なる。以来、述べ7台のボーレンベルグ断裁機を導入してきた同社が今年1月、最新のボーレンベルグ断裁機「プロテック」日本一号機を導入した。

 日本市場におけるボーレン断裁機の展開には若干のブランクがあったと言わざるを得ない。昨年1月、それまでボーレンベルグ断裁機の販売・アフターサービスを手掛けていた(株)イリスから業務移管を受け、新たな国内総代理店としてスタートしている製本機材専門商社のケイズカンパニー(株)(大阪市北区天満、高橋龍男社長)はこの1年間をマーケティングに費やした。そして、いよいよ約135年の歴史から生まれたボーレンベルグ社のDNAを受け継ぎ、進化を遂げた最新鋭断裁機「プロテック」を日本に上陸させ、本格展開をスタートさせた。その記念すべき日本一号機が京都の印刷関連機材総合商社である(株)ファイブ(京都市伏見区毛利町、出口昭二専務)を通じてエービーエスに納入された。
 このブランクの間、さすがにボーレンベルグの精度にこだわり、ボーレンベルグ一筋であった古川社長も他社のドイツ製断裁機の検討を始めたという。「代理店が変わったことによる不安や、実際ここ数年間はボーレンベルグ断裁機自体が進化していなかったことで、次の機械導入の準備として他社のドイツ製断裁機を検討していたが、メーカーによって刃の降りる方向が違うという違和感から悩んでいた。ちょうどそのタイミングで新しい国内総代理店となったケイズカンパニーと古い付き合いのファイブから新しいボーレンベルグ断裁機の話をもらった。その機械の進化に納得し、買う価値があると思い導入を即決した」と古川社長は説明する。

 「顧客からの要望に柔軟に対応し、自然の流れの中で、業務を是正していく」というサイクルを繰り返してきた同社。そこには必ず進化が必要になる。古川社長は「新しいボーレンベルグ断裁機にはテクノロジーとデザインともに進化が見られ、従来のボーレンベルグファンにもうれしい機構が多く残されている」と評価している。
 その進化の最たるものはスピード。プロテックは、刃の降りるスピードが従来比約20~25%速くなっている。そのため、ハイス刃では負けてしまい、かぶったり精度が出なくなることから、同社納入機は超硬(超微粒)刃仕様となっている。またサーボモーターによる高速バッグゲージドライブを採用することで、バッグゲージは秒速最大350ミリで高速移動し、迅速な断裁機のセッティングが可能。さらに、ジョイスティックによるバッグゲージ制御は、正確で操作性にも優れ、位置決めの微調整に優れた効果を発揮する。
 同社の綾城昭一工場長は、「いままでは機械の処理スピードよりオペレータの作業スピードが先行していたため、待ち時間もあったが、プロテックでは常に機械処理が先行するため、体感的におよそ1.5倍の作業効率向上を実現している」と説明する。

 中国生産が進む繊維関係に追随する形で大ロットのタグラベルの生産も中国へ流出している一方で、一般印刷物の断裁の仕事が増え、加工の一部分であった断裁工程のウエイトが高くなっているという同社。しかもその納期短縮の傾向は著しいものがあるという。
 8台目となるボーレンベルグ断裁機「プロテック」を含め、現在3台のボーレンベルグ断裁機が稼働しているが、さらに生産能力と瞬発力を強化するため、ケイズカンパニーが出展するJP展の出品機を9台目として導入(更新)することが決まっている。
 「私がボーレンベルグ断裁機にこだわる理由には、企業として同機を導入するというインパクト、つまりブランド力という側面もある。『精度』『効率』『インパクト』を満たす機械として、今後の進化にも期待している」(古川社長)