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躍進企業REPORT

加陽印刷:UV印刷に「価格革命」、コストダウンと高付加価値両立

印刷ジャーナル 2006年12月15日
スピードマスターCD74-5-LX-C型

 「弊社は創業50年経ちますが、実はUV印刷機の導入は初めてです。初めは菊全判両面8色機を購入予定でしたが、輪転印刷と競合するし、他に何か付加価値を付けることが出来る印刷機を探していました」と話すのは、加陽印刷(株)(大阪市都島区高倉町3-5-28)の加福修社長だ。同社では、ここ10年の売上低迷や新規顧客の獲得の難しさ、また印刷機の買換え時期も重なり次の印刷機導入の検討を一昨年より始めた。2006年2月、大阪で初のハイデルベルグ製の菊半裁寸延びUV5色印刷機「スピードマスターCD74-5-LX-C型」を導入している。

 「UV印刷物の外注費の高さとプレスコートなどの表面加工の外注費を抑えることが自社でUV印刷機導入の直接の原因です。しかし、UV印刷機導入後数ヶ月経過して、何故今まで外注費が高かったのか疑問に思うようになりました。確かに印刷機械本体とその周辺機器、光熱費やインキなどの諸材料は油性印刷に比べて高価だが、その分デリバリコストや検品費用、不良印刷の防止、環境対応など様々なメリットがあることが判ってきました。また、薬品、化粧品、食品などのパッケージ分野でいち早くUV印刷に取り組んでおられる中堅印刷会社は下請け仕事をしませんし、下請け専門のUV印刷会社は印刷費が高すぎるため、私どものような小さい印刷会社はUV印刷の発注先に非常に困っていたわけです」と加福社長は語る。
 そこで、同社では、「常識を変える」を合言葉に、この既成概念を覆す研究を重ね、これまで高価が当り前と考えられていたUV印刷を同業者に低価格で提供するとともに、自社クライアントへは付加価値を強調し価格アップに成功するなど、コストダウンと高付加価値を両立させた「UV印刷の価格改革」に取り組み始めた。
 同社が昨年2月に導入したUVオフセット5色印刷機は、最大印刷面積B2、最大印刷速度毎時1万5,000回転の高生産性に加え、0.03~0.8ミリの幅広い厚さの用紙・原反に対応する。また、ロングデリバリ方式のUV照射ランプ、コーターニスのグロス値が非常に高いコーティングユニットを装備しているため、プレスコートと同等の光沢度の高い艶出し加工がワンパスで行なうことができる。さらに瞬間乾燥のためデリバリコストの低減と納期短縮が図れ、ホワイトインキやシルバーインキの厚盛が出来るのも大きな特長である。
 しかし導入当初はPETやPPなどの原反に施されている印刷適正加工や印刷後のトムソン加工などについての知識が乏しかったため、苦労は多かった。しかし旺盛な探究心で試行錯誤を繰り返した結果、導入から10ヶ月で自社独自のUV印刷を確立し、それを自社のみならず同業者へも安価に提供し、印刷会社の良きパートナーとして好評を博している。

■導入10ヵ月で独自のUV印刷を確立

 ここで、「常識を変える」を合言葉に、UV印刷の価格革命に成功した同社の事例の一部を紹介したい。
 コストダウン事例の1つとして挙げられるのはシークレットはがき(圧着はがき)。個人情報保護法の完全施行にともない、印刷後にPP貼りを行なう熱圧着方式が急増したが、同社ではさらなるコストダウンと環境に優しい方法のUV印刷+特殊加工方式を採用している。
 また、選挙ポスターや水周り製品のPP貼り加工の代わりに撥水性に優れたUVコーターニスを使用し大幅なコストダウンを実現した。
 さらにPETやPP、ユポなどの紙以外の原反に印刷されるPOPや看板、パチスロや自販機などのスクリーン印刷をUV印刷に切り替えると大幅なコストダウンを実現できるため、マーケット拡大に活用しているという。
 その一方、UV印刷による付加価値提案で、受注価格アップに結び付けた事例もある。
 ある封筒メーカーには、マット系の紙にベタ印刷した袋の製袋加工時の汚れ防止を提案。また、ある調理学校には「はじきニス」により立体的なイメージと高級感を醸し出す学校案内を提案した結果、いずれも価格アップを承知でUV印刷に切り替えたという。
選挙ポスターや学校案内の事例が示すように、提案力次第では適正な価格維持を保てるだけでなく、価格アップをも実現する魅力的な付加価値ツールとなることを同社は証明したと言える。

■最高のパートナーに

 同社は平成9年に300坪の自社ビルを竣工。菊全・菊半4色機の印刷機4台をはじめ、プリプレス、CTPからポストプレスまでの一貫生産体制を実現する頼れる設備を誇る。UV印刷の外注としてだけでなく、既成概念に捕われない同社に相談すれば、親身になって同業者のサポートを行なってくれる「最高のパートナー企業」が誕生したことは間違いなさそうだ。

【問い合わせ】電話06-6922-5871(代)