島村 本来、なぜ組合が中小・零細企業にとって必要なのか。それは業界動向を把握する場が必要だということ。言い換えれば自社の立ち位置を確認する場である。これが組合が提供できる最大のメリットである。
全印工連は、従業員数平均21人、売り上げ平均4億1,000万円規模の会社で組織されている。これら企業をどの方向へと導くか。全印工連の運営において、この視点を外すことはできない。
吉田 大印工組では、従業員30人以下の企業が84.1%を占めており、100人以上の企業はたったの3.4%、およそ20社程度に過ぎない。
私の会社も従業員は25人。歴代理事長の会社はほとんど100人以上規模の組織化された企業で、人、物、金、情報、人脈もある。そういう方々が小規模事業者の悩みを深く理解することはできないだろう。それも当然だろう。私に大印工組理事長の話がきた時、会社規模のことで多少悩んだが、「小規模事業者の悩みを分かち合えるのはお前しかいない」という言葉で決心した。そして若い世代の中から業界を引っ張ってくれる人材を育てることをひとつの使命として自らに課した。
大印工組の新しい執行部も大きく若返ったことで、危機感をもった組合運営に繋がると考えている。
島村 リアリティ、本音感のある組合運営ということだろう。全印工連の新しい執行部も従業員20〜30人規模が多い。
吉田 全印工連に同様の課題を共有できる人材が揃っていることは、非常に心強い。
事務局頼みの組合運営ではなく、議案事項についても自らの経験をもとに我々が真剣に考えていく。それがリアリティ、本音感のある組合運営ということだろう。そのためには若返り、そして教育が必要だ。そんな場を作るのが我々の役目ではないだろうか。
島村 その通りだと思う。先に触れた収益事業についても、企画はもちろん、講師も外部から招くのではなく、我々の仲間(組合員)が持っている経営の経験・ノウハウをセミナーという形で披露し、そこで得た収益を組合の運営資源として充てる。これがこれからの全印工連の基本スタンスである。
事務局任せのおざなりな事業はもう通用しない。そして、組合は大義名分として楽しむ社交場ではなく、役員の名誉職感覚は許されない。さらに最大のタブーは、情報を私物化するということ。組合にたずさわると様々な情報が入ってくる。それを自社だけに持ち帰るということを絶対に許してはならない。組合の仲間にその情報を分かりやすくまとめて発信することが組合にたずさわるものの使命だ。「組合員に貢献する」、そんな志をもった人材が求められ、すでにその人材は揃っている。