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トップ > 特集 > 【対談】印刷業界の社会的価値とブランディング:CSR普及・啓発と認定制度

 「ソリューション・プロバイダーへの進化」という大きなビジョンを掲げる全日本印刷工業組合連合会(以下「全印工連」)。今年度は「連帯」「対外窓口」「共済」という主要機能を存分に発揮できる体制を整え、「やる気のある会社の発展のために役立つ連合会」を目指し、組合団体の新たな価値創造、ブランディングに着手する。その牽引役として今年5月、島村博之氏(東京都印刷工業組合理事長/六三印刷(株)会長)が会長に、同じく吉田忠次氏(大阪府印刷工業組合理事長/(株)ダイシンコラボレーション 社長)が副会長に就任し、両氏をはじめとする新リーダーのもとで全印工連事業がスタートしている。今回は、その両氏にお集まりいただき、中小印刷会社5,669社で組織する全印工連の役割や目指すべき方向性、さらに課題解決に向けた施策などについて語ってもらった。

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CSR普及・啓発と認定制度

印刷ジャーナル 2012年7月25日号掲載

島村 今期の全印工連の実施事業は、来年9月の全印工連フォーラムで発表予定の産業成長戦略提言の策定をはじめ、印刷産業経営羅針盤を中心とした経営基盤強化の推進や、生産性を基軸とした企業改革のための「見える化」啓発など多岐にわたる。なかでも今回新たに設置したCSR推進専門委員会では、CSRの普及・啓発をはじめ、認定事業の構築に向けた取り組みを開始する。

全日本印刷工業組合連合会<br />吉田 忠次 副会長
吉田 現代社会において企業が永続的に成長するためには、環境、安全、福祉など、社会から求められる様々な要請に応えなければならない。とくに地域密着型の中小印刷業界においては、CSRへの取り組みは避けて通れないものであり、今後の企業の経営戦略そのものであると言える。
 「CSR」を辞書で引けば「企業の社会的責任」となるわけだが、しかし、その概念自体を10〜20人規模の企業経営者がどこまで理解しているのかは疑問である。
 大印工組では、全印工連の委員会設置に伴い、CSR推進委員会を立ち上げて、労務・環境・MUDを取り上げるが、まずは「CSR」そのものの概念の理解と周知が必要だと考えている。そこで、ここ1年は「CSRとは」からはじめて、理解と周知、そして企業経営において重要項目だということを呼びかけていきたいと考えている。
 さて、全印工連におけるCSR認定制度事業は、どのような展開を考えているのか。

島村 もともとCSRについては認証制度ありきではなかった。むしろ全印工連のやることではないという認識だった。
 ご存じの通り、CSRの普及・啓発活動は全国青年印刷人協議会(以下「全青協」)が過去2年間にわたって展開。全印工連では基本的にノータッチだったが、非常に内容が濃く、これにたずさわった会社においては、CSRを再認識することで自社の経営に役立てている。つまり実践されているわけだ。これを全青協だけでなく、全印工連という枠組みに拡大して、周知することに関して有効性があると判断した。そもそも最初にCSRの啓発活動があった。
 これと並行して、全青協の江森克治前議長が、地元の横浜でCSRの認定事業をすでに実施していた。彼としては「この認定事業を印刷業界で引き受けたい」、「しかも横浜という限られたエリアだけでなく、全国でCSRの認定事業というものを印刷業でやっていきたい」という夢を抱いていた。しかし全印工連が他の産業を含めたCSR認定機関となるのは「おこがましい」ということで、印刷関連の第三者団体に話をもちかけたが、前向きな返事をいただけなかった。そこで諦めかけるのだが、すでに評価点や認定項目がある程度整備されていたことから「もったいない」ということに。その対象を全印工連の組合員に絞った形で、啓発活動と並行して認定事業を実施する方向性が定まった。
 確かに自己満足かもしれないが、まず認定事業をやってみて、如何にCSRに興味をもってもらえるか。実際、審査員の育成や認定希望者および認定実績を増やさないといけないなど課題は多い。どこまでいけるか分からないが、まず行動することで方向性は定まった。
 この事業を4、8、12年と継続していくことで、ノウハウが蓄積され、これをビジネスにできる事例がたくさん出てくるはずだ。このプロセスこそが2年前に発表した産業成長戦略提言2010「ソリューション・プロバイダーへの進化」の経営ソリューションにある「CSRにおいてビジネスを成り立たせる」ということの根幹なわけだ。その第1歩を踏み出したということである。