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トップ > 特集 > 【対談】印刷業界の社会的価値とブランディング:収益事業拡大と魅力づくり

 「ソリューション・プロバイダーへの進化」という大きなビジョンを掲げる全日本印刷工業組合連合会(以下「全印工連」)。今年度は「連帯」「対外窓口」「共済」という主要機能を存分に発揮できる体制を整え、「やる気のある会社の発展のために役立つ連合会」を目指し、組合団体の新たな価値創造、ブランディングに着手する。その牽引役として今年5月、島村博之氏(東京都印刷工業組合理事長/六三印刷(株)会長)が会長に、同じく吉田忠次氏(大阪府印刷工業組合理事長/(株)ダイシンコラボレーション 社長)が副会長に就任し、両氏をはじめとする新リーダーのもとで全印工連事業がスタートしている。今回は、その両氏にお集まりいただき、中小印刷会社5,669社で組織する全印工連の役割や目指すべき方向性、さらに課題解決に向けた施策などについて語ってもらった。

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収益事業拡大と魅力づくり

印刷ジャーナル 2012年7月25日号掲載

東西の両リーダーが対談
島村 印刷需要の冷え込みや資材の高騰など、中小印刷業の経営は厳しい局面を迎えている。その集合体である全印工連の会長を拝命し、吉田副会長同様、課題は山積していると認識している。
 まず、「数」の問題だろう。全印工連の組合員数は1970年をピークに年々減少傾向を辿り、今年3月末で5,669社。ピーク時の半分以下にまで減少したことになる。これが組合の財政を圧迫しているわけだ。組合の今後、また存続という面においても非常に大きな問題である。
 この解決には2つの方法がある。まず1つ目は賦課金を上げること。しかし、これをやってしまえば、さらなる組合員減少を招くことは目に見えている。ならばもう1つの方法として「収益事業の拡大」しかない。全印工連の新しい執行部では、この収益事業に注力していく方向性を明確に打ち出している。地域において財政状況は様々だが、各県工組でも「収益」ということを真剣に考えていく必要があるだろう。

吉田 島村会長も私も、全印工連という立場での運営責任と、地元での運営責任、この両方で多くの課題を抱えている。
 「数」の問題では、大印工組も1995年をピークに減少傾向を辿り、今年3月末で568社。全印工連同様、ピーク時の半分を切っている。この減少傾向はまだまだ続き、500社を割り込むのも時間の問題だろう。むしろそのような状況下でも運営できる体制を整備していくのが急務ではないだろうか。やはり賦課金の値上げは、いまの社会情勢の中では無理である。
 とは言え、一方で新規加入促進への努力も必要だ。我々は、大阪府下で2,000社以上のアウトサイダーがいると試算している。その方々に加入してもらえるだけの「魅力ある組合づくり」は永遠のテーマだし、一方で、印刷関連業者に広く門戸を開く「規約改正」も必要だと考えている。加入資格については各県工組でかなりバラツキがあるようだが、「印刷に関わる企業」の集合体として印刷組合が存在してもいいのではないか。繰り返しになるが、もちろんそこには魅力づくりが必要で、その柱となるのが広報・情報発信である。
 さらに関連団体との統合も視野に入れた合理化はできないものなのか。このことについては以前から議論され、そこには様々な問題があるわけだが、ここ5〜10年先を考えた時、新しい枠組みによる組合運営のあり方が必要になると認識している。島村会長、これについて全印工連主導で協議できないものなのか。

島村 関連団体も、互いに組合運営は厳しい状況にあることは間違いない。これには様々な問題が絡み合っており、「今すぐ」とはいかないかもしれないが、前向きに検討すべき課題だと私も認識している。

吉田 ぜひお願いしたい。
 私は組合員増強、脱退回避のためには情報提供が大きなテーマだと考えている。大印工組では今年、機関誌「大阪の印刷」を「PRI・O(プリオ)」としてリニューアルした。コンセプトは若い社員にも見てもらいたいということ。なぜなら我々は世代交代を急ぐ必要があると考えているからだ。全印工連も大印工組も執行部では大きく世代交代したわけだが、企業においても世代交代を進める必要性を訴えている。賛否両論だとは思うが、高度化する情報を確実に受け取って、それを生かせるのは若い方々である。数年後に事業を譲ると考えているならば「いま譲らなければ」と言いたい。
 そういう意味から大印工組では、ビジョンに「次世代に健全なる業界を継承し、『後継者には夢を...従業員とその家族には希望を...』持てる経営基盤の確立を目指す」を掲げている。
 例えば、「PRI・O」はそんなメッセージも込めてリニューアルしたもの。現在、専門学校にも配布しており、いずれはクライアントにも渡せるようなものにしたい。「たかが広報誌でピーアール活動ができるのか」という声もあるが、これはあくまでも手段のひとつであり、目的は業界の地位向上。我々の思いを次世代の方々、また一般クライアントにも分かっていただく広報活動も必要だと考え、現在、力を入れている。