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太洋堂、ピアサポートサロンに会場を提供〜乳癌患者のケアを応援

印刷ジャーナル 2021年2月25日号掲載

 (株)太洋堂(本社/京都市右京区、瀧麻由香社長)は、2013年4月より、社屋の会議室・和室・研修室などを「京都乳癌 ピアサポートサロン」に無償提供している。瀧社長は2012年7月に自身も乳癌の宣告を受けており、「場所がなく、カフェなどでカウンセリングを行っているという話を聞き、同じ乳癌の患者さんのケアのお役に立ちたいという思いから、会場の提供を開始した」と、乳癌患者のケアを応援するCSRを開始した思いを語る。

瀧 社長

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 太洋堂は、創業85年の歴史を誇る京都の老舗印刷会社。現在の社員数は60名ほどだが、元々は100名近い社員がいたそうで、現社屋は100名の社員がいた時に建設した建物。このため、「人数が減っている分、建物スペースには余裕がある。さらに現在はオフセット印刷の設備を出し、オンデマンド印刷のみになっているため、さらに余裕ができた」と瀧社長は話す。地上4階建ての社屋4階には京都らしい和室と屋上庭園を備えるほか、会議室などが備わっており、イベントの内容や規模に合わせて最適なスペースを提供している。

 「現在は、緊急事態宣言下のため休止しているが、解除されたら再開する。患者さんとカウンセラーの方だけの少人数の場合もあれば、乳癌リハビリヨガ教室や、乳癌の患者の方のタオル帽子を作る会などで多くの方が集まる場合もある。音楽会を開催したこともある」(瀧社長)

 また、社屋のスペースを無償提供しているのは京都乳癌 ピアサポートサロンだけではないようで、その道の第一人者である講師を呼び、ベビーマッサージを開催していたこともあるという。「毎週、会社に赤ちゃんが来ていた」(瀧社長)。

 また、昨年は京都北区役所の主催により、オンラインでベビーマッサージ、マタニティヨガなどをリアル配信するイベントが開催されていたようだが、このイベントにも太洋堂の和室をスタジオ代わりに提供していたという。

 「このほか、社員へのおもてなし教育の場として、和室を使用し、隔月で書道家の方に講演に来てもらっている。印刷業は文字を扱う仕事であるので、これにより、文字やフォントの歴史や由来などについて学んでもらっている」(瀧社長)

乳癌リハビリヨガ教室に会議室を提供


CSRを通して社会貢献への「世界観」が変化


 また、同社ではスペースの無償提供だけではなく、社内に環境委員会を立ち上げ、美化活動など環境問題にも積極的に取り組んでいる。

 「京都市まちの美化推進事業団の『京都まち美化大作戦』に参加し、例年は梅小路公園の清掃を行うなど京都市内の美化活動を行っていたが、今年はコロナのため、会社周辺の清掃に取り組んだ」(瀧社長)

 これらのCSRへの取り組みは、社員の社会貢献への意識を大きく変化させることにつながったようで、瀧社長は「私も含めて、社会貢献というものへの世界観が変わった」。これにより、本業の仕事の考え方にも良い影響が出ているようだ。

 「これまでは、自社と顧客のためだけに仕事をしているところがあったことは否めないが、CSRに取り組むようになり、その仕事が社会貢献につながっているのかを意識しながら仕事に取り組むようになった」(瀧社長)

 そして、これらのCSRへの取り組みを自己満足ではなく、見えるカタチにして社員のモチベーションを高めたいとの思いから、同社は全印工連のCSR認定制度に取り組み、ワンスターを取得したという。


SDGsとDXの取り組みを推進


 太洋堂はこの10年で業態を大きく変革。昔ながらの町の印刷工場から、Webや映像などを得意とする企業への変貌を遂げた。そして2020年は、コロナ禍を生き残るための商材として、簡単に自社製品のECサイトを構築できる「ECサイト制作屋さん」、病院などでスタッフを減らしても問い合わせに自動で応答する「チャットボット屋さん」、椅子に空席を設けることでソーシャルディスタンスを確保できる「不織布シートカバー」などをリリースした。

 2021年、同社はSDGsとDXの推進を取り組みのテーマに掲げる。2月からは「バナナペーパー」の名刺印刷サービスを開始。また「チャットポット屋さん」の販売強化、このほど技術習得した「eラーニング」のシステム開発も急ぐ。「コロナ禍の中、太洋堂でできる取り組みを進めていきたい」と瀧社長。社会貢献に役立っているのかを常に問いながら、活動を展開する同社の取り組みに注目したい。