PJweb news

印刷産業のトレンドを捉える印刷業界専門紙【印刷ジャーナル】のニュース配信サイト:PJ web news|印刷時報株式会社

トップ > 特集 > Withコロナ時代のCSR:美生社、「自主性」育むCSR経営

特集|Withコロナ時代のCSR

特集一覧へ

美生社、社員の「自主性」育むCSR経営

認証制度で「気づき」の積み重ねを体系化

印刷ジャーナル 2021年2月25日号掲載

 「立派な社会人になるために、立派な会社にする」--(株)美生社(大阪市西成区出城1-7-4、山本素之社長)は、社員の「自主性」を育むことで、その個々の「気づき」によるCSR活動を推進し、経営戦略の根幹に位置付けている。

【後方左から】西山氏、瀧氏、大河内氏、山本社長、【前方左から】山本取締役、伊勢氏

 同社におけるCSRの概念は、「私たちは美生社に関わるすべての人たちを幸せにします」という経営理念にもとづいており、山本社長は「美生社にとってCSRは、『当たり前のことを、当たり前にやる』ということの積み重ねに過ぎない」と語っている。30年以上前から続く地域清掃活動(月1回15〜30分程度)もそのひとつで、今では同社にとって大きな財産となっている。

 全印工連CSR認定制度への取り組みについては2015年5月、全体会議で「立派な社会人になるために、立派な会社にする」という山本社長の目標提示から始まった。

 同社は、印刷品質の向上と安定を目的に、JapanColor認証の「標準印刷認証」「プルーフ運用認証」を2012年12月に、また「マッチング認証」を2013年9月に、さらに2020年7月には「デジタル印刷認証」を取得している。一方、環境面では2014年に「グリーンプリンティング(GP)認定工場」に認定されたほか、2017年には「印刷産業環境優良工場表彰 奨励賞」を受賞。CSR担当の製版部の伊勢大介係長は、「常に第三者認証による外部評価を成長への『ものさし』にしてきた」と語る。このことから、CSR認定制度への挑戦においては、残る「情報セキュリティ」と「社会貢献・地域志向」を具体化することが課題となった。そこで、まずJPPS(日本印刷個人情報保護体制認定制度)を2016年1月に取得。さらに同社・山本哲会長の母校でもある地元の大阪府立今宮高等学校・グラフィックデザイン系の学生を対象としたインターンシップを実施。現在も毎年7月に半日の職業体験を行っている。

 これらの取り組みの結果、2016年6月に全印工連CSR認定制度「ワンスター認定」を取得している。


            ◇            ◇


 以前の同社は、典型的なトップダウンの会社だったという。その社風を変えたのが「QC活動」だ。製版部の瀧晋一郎課長は「社員の自立を促すきっかけとなったのがQC活動。現在、広報、新規事業推進、品質管理、CSR環境、保健安全コロナ対策の5つの委員会があり、QC活動が発端となった部署を跨いだコミュニケーションによって、若い社員も意見が言える環境が整っている」と説明する。

QC活動報告書

 JapanColorを推進する印刷部の西山俊一氏は「印刷で使用する溶剤などについても現場サイドから環境や健康を考慮した製品を積極的に経営側へ提案できる環境がある。これも印刷工程を通じたCSRに繋がっていると自負している」としている。さらに西山氏は、学生のインターンシップについて「少しでも印刷に興味を持ってもらうために毎年工夫している。その緊張感が刺激になるし、教えることで新たな発見もある」と語る。

 一方、CSR環境委員で総務部の大河内雅子さんは「飲み物などを配る時に、以前は紙コップを使っていた。これを繰り返し使えるメラミンマグカップに替えることで紙コップを焼却する際に発生する二酸化炭素を抑制できないかと考え、些細なことかもしれないが実践している。地域清掃もそうだが、私たちは地域に生かされていることに感謝し、『してあげる』のではなく、『させてもらっている』。それが結果としてCSRに繋がる。これが望ましい形だと思っている」と話す。

30年以上続けている地域清掃活動

 このように、同社のCSRは個々の「気づき」の積み重ねであり、瀧課長は「当社では以前から『三方よし』を単発的に実践してきた。CSR認証によって、それを体系立てることができ、さらなる継続・改善を促している」と説明する。

 一方、このコロナ禍において「感染防止の徹底」もCSR活動のひとつと位置付けている。山本晃司取締役は「昨年、当社の5Sに『うがい、手洗いの徹底』を選出した。マスク着用、手の消毒など『感染しない、うつさない』ということを常に意識することもCSRだと認識している」としている。また、これについて伊勢氏は「感染拡大当初、マスク不足が社会問題になったが、そんな時でも会社は『社員の身と安全を守る=家族を守る』ということからマスクを調達・確保し、社員に配布してくれた。いまでも感謝している」と話している。


            ◇            ◇


 同社では現在、全印工連CSR認定制度「ツースター認証」に取り組み、今年10月の取得を目指している。このプロジェクトも推進することになった伊勢氏は「ワンスターと違い、今度はCSRの運用、効果を検証する必要があり、現在そのPDCAサイクルの策定に取りかかっている」と話す。

 「CSRは経営戦略のひとつ。いまの会社の弱点を是正し、ワンランク上の会社、人材を育成する上でツースター認証に期待している。コロナ禍で社員も俯きがちのように思う。CSR認証という制度への取り組みを通じて、もう一度社員に顔を上げてもらいたい。ツースター認証がそのきっかけになれば」(山本社長)