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トップ > 特集 > JapanColor特集 2014:富士精版印刷、色調のクレームが「ゼロ」に

 「仕上がった印刷物の良し悪しは顧客の視覚的判断によって決められる」。これまではそんな明確な基準がない中で印刷物が作成され、発注者、デザイナー、カメラマンなどからの色再現の要求に対し、印刷会社は度重なる修正や刷り直しを強いられてきた。そこには印刷物作成に関しての標準的な基準がないという根本的な要因があった。この問題の是正を目的に創設されたのが「JapanColor認証制度」((社)日本印刷産業機械工業会)だ。これは、ISO国際標準に準拠し、日本のオフセット枚葉印刷における印刷色の標準である「枚葉印刷用ジャパンカラー」に基づいて認証を行うもので、現在4つの認証で構成されている。今回の特集では、JapanColor認証取得サポートで多くの実績を誇る富士フイルムグローバルグラフィックシステムズへのインタビューと認証取得企業5社の運用事例を通じて、その現状や課題、有用性に迫る。

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富士精版印刷
色調のクレームが「ゼロ」に 〜 数値管理・品質管理の現場意識向上

印刷ジャーナル 2014年3月15日号掲載

淀野顧問
​ 富士精版印刷(株)(本社/大阪市淀川区、里永健一郎社長)は、平成22年12月にJapanColor認証制度「標準印刷認証」を取得し、数値管理・品質管理に対する現場意識の向上や色調のクレームがゼロになるなどの成果を上げている。同社は1986年より自社基準による品質管理を行っているが、本年は新たに社長直轄の品質管理室を立ち上げ、顧客満足のさらなる向上とロスの削減を目指し、印刷事故を徹底的に排除する活動を展開している。製造本部の淀野温敏顧問と久保正人クロスメディア部次長に話を聞いた。


 同社の創立は昭和25年。石川忠会長の経営訓「商いは 高利をとらず 正直に よき品を売れ 末は繁盛」の方針に基づきながら事業を拡大し、現在はA横輪転機3台、B縦輪転機1台、枚葉印刷機3台、オンデマンド印刷機2台の設備を備えた総合印刷会社として、強みである技術力を活かした幅広い営業活動を展開している。
 そんな同社の品質管理は1986年、石川会長の「事故は隠すな、正直に報告し、原因を追求せよ」との言葉から始まっている。事故が発生すると品質管理部が事故報告書を発行。事故報告書には発生部署や事故内容・損失金額を記入し、不良見本を添付して会長をはじめ役員、社員に回覧して事故情報を開示し、事故発生部署と関連部署および品質管理部は原因を深く追求して再発防止に取り組んでいる。
久保次長
​ このような取り組みを長年にわたり行っているため、同社の会社全体の品質管理に対する意識は非常に高く、「JapanColor認証制度の必要性を会社に提案した際も、反対の声などは全くなかった」という淀野顧問の言葉も当然と言えるだろう。
 同社では、JapanColor認証制度に取り組む以前からベタ濃度とドットゲインの管理を行っており、その濃度もJapanColor認証制度に近い基準で設定していたため、取得に際しての不安はほとんどなかったようだ。「不安要素は測色器の『器差』だった。当社は測色器を複数台保有しているが、それぞれ測定結果には違いがあった。そこで2台の測色器を選び、数値をJapanColor事務局に送り、事務局の数値に近い測色器を選んで取得まで進めた」と淀野氏は振り返る。
 そして同社は平成22年12月に「標準印刷認証」を取得。JapanColor認証制度は2年に一度の更新となるため、同社ではこれまでに1度の更新を経験しているが、更新責任者である久保次長は、「更新にあたっては日常的な管理が必要になる。認証取得から更新日までどのような管理がされていたかの確認を行い、また2年間の間に他の印刷機でもJapanColorでの印刷が可能になるように水平展開していくことを目指した」と話し、取得よりも、取得してからそれを継続していく難しさを実感したようだ。
認証取得した油性4色枚葉機(現在はH-UV機に仕様変更)

​ 同社では、認証取得した油性4色機を「H-UV」に仕様変更したため、更新は別の印刷機で行っている。これは水平展開に成功した証明と言えそうだ。現在は3台の枚葉機のうち、2台でJapanColorの印刷が行えるように水平展開している。若干ドットゲインに『機差』があるようだが、プリプレスの段階で微調整することにより、どちらの印刷機でも同様の基準で印刷することができる。
 「現在、色彩値はCMYKともに⊿E3以内に入っているため問題ない。ドットゲインもCMYKともに14%プラスマイナス3%以内に入っており問題はないが、Kが13%とやや低くなっている。ベタ濃度はKの濃度がやや低いが、色彩値は⊿E0.84と非常に良い数値となっている」(久保氏)
 同社の色調管理は、コントロールストリップをPDCの色調管理装置を用い、1回のスキャンでドットゲイン、濃度など全体がわかるシステムで運営しており、数値的な管理はかなり正確にできているようだ。
 JapanColor認証制度の認証取得から3年以上が経過した現在、その効果について淀野氏は「色見本に対する刷り上がりが非常によくあっていると営業からは評価されている。また、JapanColorに取り組む以前はLab値の測定までは行っていなかったのだが、それにも取り組む中で、濃度とLab値の関係、ドットゲインとの関係などを概念的に理解できるまでに進歩することができた。そして枚葉の事故は格段に減り、色調のクレームはゼロになった」と話す。同社にとってのJapanColor認証制度の取得は、外部へのアプローチというよりも、むしろ社内印刷基準の安定と維持に大きな効果があったようだ。

プルーフ運用認証の申請を準備

 同社では現在、JapanColor基準に即した印刷を維持・継続して行っていくため、予防保全を意識した取り組みを行っている。また、昨年12月に新たなプルーフプリンターを導入したため、現在「プルーフ運用認証」の申請を準備しているということだ。
 本年は新たに社長直轄の品質管理室を立ち上げた同社。JapanColor認証制度の基準も活用しながら、顧客満足のさらなる向上とロスの削減を目指し、印刷事故を徹底的に排除する活動を展開していく。