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 (社)日本印刷産業機械工業会(小森善治会長)は2009年10月、オフセット印刷における標準印刷色である枚葉印刷用ジャパンカラーを基準値としたJapan Color認証制度「標準印刷認証」を策定し、印刷物の標準化の確立に向けた取り組みを開始している。さらに今年3月までに「マッチング認証」、「プルーフ運用認証」、「プルーフ機器認証」の3つの認証制度においても取得企業が誕生し、印刷技術の標準化ツールとしての活用に期待が持たれている。

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グラフィック、12台の印刷機すべてをプロファイル管理

全機で標準印刷認証「範囲内」の印刷実現

印刷ジャーナル 2012年4月15日号掲載

 大手印刷通販の(株)グラフィック(本社/京都市伏見区下鳥羽東芹川町33、西野能央社長)は、前身の製版会社時代よりJapanColorに準拠したプルーフの出力を行い、品質の標準化を推進してきた。そんな同社は印刷会社に業態変革してからも同基準に準拠した色管理を徹底し、平成22年7月に「標準印刷認証」をハイデルベルグのニスコーター付6色UV印刷機で取得。以降、この印刷機のプロファイルを基準に印刷機同士のマッチングを進め、現在は12台の印刷機すべてで同基準に準拠した印刷が行える体制を構築している。

1998年よりJapanColorを色基準にした取り組みを開始

橋井浩工場長
​ 同社がJapanColorに取り組んだのは1998年。同社がまだ製版業を生業としていた頃である。
 同社ではその頃、DDCPとCTPにより、製版のプロとして高水準のプルーフ出力を追求していたが、その時に困っていたのが色の基準。橋井浩工場長は、「印刷会社の基準が各社によって異なるため、同じプルーフを出力しても、印刷会社によって印刷物の色がばらばらになっていた」と当時を振り返る。
 "色の「基準」が欲しい"。そんな思いから、同社ではJapanColorを基準としたプルーフを試験的に出力。これが同社の色基準とかなり近いことが分かった。以降、同社は同基準に準拠したプルーフの出力を開始。印刷会社に業態変革してからも、JapanColorを「基準」とした業務に取り組んできた。
 同社は2001年9月に初めて印刷機を導入したが、そのときの条件は測色機と色の品質管理装置が搭載されていることであった。「JapanColorに準拠して印刷するには、濃度ではなくLab値で色管理する必要があった」(橋井工場長)からである。
 それから10年以上にわたり、同社はJapanColorに準拠した範囲での印刷を続けてきたわけで、「当社にとって認証取得に向けた活動は特別なことではなく、これまで当り前にやってきたことに過ぎない。このため違和感なく、スムーズに取得することができた」(西野社長)のは当然と言えるだろう。
 JapanColor認証制度がスタートしたのは平成21年10月。同社であれば、すぐにでも取得できたはずであるが、ある理由から最初のエントリーには参加しなかったという。
 橋井工場長は、「当社では当時、50の銘柄の紙を取り扱っていたが、すべての紙をJapanColorに準拠させる必要があるのか。紙の種類によっては、別の方法の方が良い場合もあるのではないかという疑問を解決するのに時間がかかった」とその理由を話している。
 ちなみに現在、同社が取り扱う紙の種類は122銘柄、厚みも含めると207種類にも上り、そのバリエーションの豊かさに驚かされる。

「UV印刷機」で認証を取得

認証取得したニスコーター付き6色UV印刷機
​ 「標準印刷認証」はすでに全国で80以上の事業所が取得しているが、同社の認証で特筆すべきは「UV印刷機」で認証を取得していることだ。
 「当社は2006年9月に初めてUV印刷機を導入し、取得の時には4台のUV印刷機を保有していた。そこで、どうせならUV印刷機で取得にチャレンジしてみようということになった」(橋井工場長)。
 そして平成22年7月に「標準印刷認証」を取得。これを機に、同社はあることを開始する。これまでは刷版を印刷機ごとにドットゲインをかけて調整していたが、認証を取得したUV印刷機のプロファイルを基準に、12台所有するすべての印刷機を印刷機別・紙の種類別にプロファイル管理し、印刷機同士のマッチングを進めていったのである。
 「ドットゲインだけでなく、2次色、3次色の重なり合ったところまで、JapanColorの範囲に入ったプロファイルを作成し、それを他の印刷機に合わせていった。これにより、例えばδE3であれば、どの印刷機においてもδE3の色空間になることを実現した」(橋井工場長)
 すべての印刷機のマッチングが完了したのは認証取得から1年後の昨年8月。これにより、同社では12台すべての印刷機において、JapanColorの範囲に収まる印刷品質の標準化を図れるようになったわけである。
 さらに同社は、全印刷機のプロファイル運用と同時に、これまで175線を標準としていた線数を210線にまで高める取り組みを開始した。オフセット印刷の線数は175線が主流の中、210線を標準的な印刷線数に採用し、よりクリアな印刷を実現している。
 「210線の印刷は従来の175線に比べてアミ点が細かく、モアレの影響が少ないことが特徴。線数を引き上げれば高精細の印刷ができるのは理論的には可能である。しかし、それには色を安定させるために製版・印刷システム全般の様々な技術的な見直しが必要となり、決して容易なことではない」(橋井工場長)
 同社では長年にわたり280線の印刷「グラフィックビジョン」を運用してきた。その実績に加え、多くの印刷用紙に応じて色を安定させる同社の技術があったからこそ実現したものであると言えそうだ。

さらに利便性を追求した印刷通販へ

 同社が「標準印刷認証」の取得を目指したそもそもの目的は、顧客満足の向上にある。「印刷通販というビジネスモデルの性格上、プルーフ出力もないため、お客様に安心と安全を提供していくにはこうした第三者認証が必要と考えた」(西野社長)からである。
 同社は今後、この「顧客満足の向上」をさらに高めるため、さらなる品質の標準化と納期厳守を徹底するとともに、紙種のバリエーションをさらに増やしていく。そして紙以外の素材への印刷・加工にも取り組み「印刷の総合窓口」となる印刷通販を目指す方針。
 「価格についても、お客様に納得してもらえる価格で価値ある商品を提供していく。同時に、さらに簡単・手軽・効率的にネット上で発注してもらえるシステムの構築を進め、工程の自動化によりコストを削減し、それを価格で還元していきたい」(西野社長)
 印刷通販を代表する企業となりながらも、同社の成長はまだまだ続いていきそうだ。