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(一社)日本印刷産業機械工業会(日印機工、森澤彰彦会長)とプリプレス&デジタルプリンティング機材協議会(プリデジ協、辻重紀会長)の共催による「IGAS2022(国際総合印刷テクノロジー&ソリューション展)」が11月24日から28日までの5日間、東京ビッグサイトにおいて開催される。統一テーマは、「Venture into the innvation!〜新たなイノベーションへの挑戦〜」。コロナ禍以降の印刷業界では、初のビックイベントとなる「IGAS2022」は、リアル展を主軸としつつ、リモートを併用したハイブリッド形式で開催され、国内外に広く最新情報を発信していく。 [事前情報 随時更新中!]

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IGAS2022|木田鉄工所、1対1の照合で高精度・高速検査

新世代の印刷物検査装置を発表〜共同開発の検査システム搭載

 (株)木田鉄工所(大阪市都島区大東町2-13-5、木田庄一郎社長)はIGAS2022において、数多くの納入実績を誇るブランクスおよび枚葉検査高速搬送装置に、外観検査システム開発会社の(株)メガトレード(本社/京都市下京区、笹井昌年社長)と共同開発した検査システムを搭載した、新世代の印刷物検査システムを発表する。

 加湿器や印刷工場向けの自動化システムおよび省力化システム、周辺機器の設計・製造・販売までの一貫生産およびサービス対応を手掛ける同社。とくに搬送機に強みを持ち、17年前にブランクス・枚葉検査搬送装置の初号機を納品してから改良・改善を重ね、「検査の歩止まりを最小限に抑え、多種にわたるワークに対応し、高速で安定した確実な搬送と検査とを可能にした装置」として多くのユーザーから高い評価を得ている。とくに厳格な品質管理が求められる医療用パッケージや高付加価値・高意匠パッケージの品質検査目的での導入例が増えている。

 これまで搬送機メーカーとして、他社製カメラを搭載してきた同社が、自らカメラ検査システムの開発に乗り出したことで、より安定性と確実性に優れた印刷物検査装置が完成した。

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 従来の検査規格は0.5〜0.8ミリ程度の不良を検知することが条件とされてきたが、それでは小数点やピリオドなどの文字抜けは検知できず、効能書きや電流電圧の数値や桁に1文字でも抜けがあると致命的な「事故」に繋がりかねない。そこで検査条件を0.3ミリまで厳しくすると、見当ズレや丁番の違いによる抜き型のズレまでも不良として判定してしまう。結果、苦肉の策として行われたのが複数枚のマスターを重ねて合成をかけるマスター加算である。つまり、モザイク模様にぼやけた画像がマスターになってしまい、当然のことながら検査があまくなり、抜け・欠けを検知できない。医薬品や美粧箱などの付加価値の高いものは目視で検査せざるを得ないのが現状だ。

 そこで今回同社が共同開発した検査システムでは、A-1、A-2、B-1というような丁番毎のマスター、あるいはデザインが違えばデザイン毎のマスター登録を行い、流れてきた印刷物がどの絵柄かを判断し、そのマスターとのマッチングをかける。つまり1対1の検査(特許出願中)と高度な位置補正を行うことで「検査の致命傷」を解決している。

 「そうなると、多くの情報量を処理する必要があるため、検査速度は落ちないのか?」。同システムは、AIを活用した特殊なアルゴリズムにより、高精度ながら従来と同等以上の処理速度を実現しているという。

安定した搬送と独自検査システムを融合

 また、白色LEDを全方向から拡散照射する完全ドーム照明を採用することで、光沢部分、箔、ホログラムの検査が安定的に行えるのも大きな特徴だ。IGAS2022では、蒸着紙に印刷、ホログラム、箔加工された、医薬品の箱をイメージしたサンプルでの検査を実演する。

 また、雲竜紙などの和紙に印刷や箔押しされた、目視以外の術がなかったものでも高速で検査できる。その他にも罫線・輪郭部分の検査処理(特許出願中)や測長、キズ・スジ、バーコードの検査も可能で、完全バリアブル検査にも対応。色調検査はH(色相)・S(彩度)・V(明度)で判定し、最終的には⊿Eで判定することもできる。

 同システムについて木田社長は「今後は、ブランクスだけでなく、紙面検査やシールラベル検査、あるいは印刷機や加工機のインライン検査にも広げていきたい」としている。

 今回、同検査システムを今年6月に導入した大信印刷(株)(本社/名古屋市昭和区、江端茂義社長)を取材し、その評価について聞いた。


大信印刷、セット時間が1/6に
品質保証体制を「価値」に


 大信印刷は、企画・設計・デザインからプリプレス、印刷、後加工までの一貫した生産・管理体制を強みとするパッケージ印刷会社。コロナ禍では、人流抑制にともないお土産品や百貨店などの紙製パッケージの受注が激減する一方で、マスク箱や衛生用品、化粧品、巣ごもり需要にともなう通販やDIYなど、企画提案力を活かした営業展開で、コロナ前よりも売上を伸ばしている。営業本部長を兼務する松山忠貴常務取締役は「今後は催事やイベントのディスプレイ関係、広告販促にともなう包材の需要回復に期待している」と語る。

 そんな同社は近年、品質管理のシステマチックな運用にも注力しており、今年6月に生産拠点である小牧工場に導入した木田鉄工所製のブランクス検査システムもその取り組みのひとつだ。

大信印刷・小牧工場で稼働する新型ブランクス検査装置

 ブランクスの検査工程については、実は以前にも他社製の検査システムの導入で「目視」からの脱却を図った経験があるが、搬送時のキズの問題や領域選択などのセットが複雑だったことから運用を断念した経緯がある。これらの課題を解決したのが、今回木田鉄工所が発表する検査システムだ。

 執行役員で工場長の逢坂敏雄氏は、「テスト段階で大きな驚きが走った。ブランクス検査はやはり搬送部が肝。ズレ、傾き、伸縮・変型補正など、細かなところまで考えられた装置である」と当時の心境を語っている。

 また、大きな導入効果をもたらしたのがセット時間の短縮だ。新規製品でも検査側で10分程度、搬送機側は主要なところに配置されたダイヤル操作で10分程度、計20分程度でセットが完了する。「以前の機械では2〜2.5時間かかっていたものが20分で完了する。かつ製函の知識がなくても安定した検査が可能だ。これが経営的に最大のメリットだった」(逢坂工場長)。また、逢坂工場長はこの他にも、「複雑な形状でもスムースに搬送し、デリバリ部で綺麗に揃う」「粘着ローラー式の紙粉除去装置」「赤(血など)を重点的に検知してくれる機能」などを評価している。

 松山常務は、「現在、医薬品関係などのシビアな品質管理が求められる仕事で活用しているが、当社の品質保証体制としてブランクス検査を標準化したいと考えている。

検査工程を担う現場スタッフ

 同社では来年1月に印刷機の更新を控えている。導入予定機はダブルデリバリ仕様で、インラインカメラにより良品・不良品を判別して排紙できる。「将来的には、インラインでの検査工程とブランクス検査装置での検査工程を連動させた効率的な『品質管理』の運用を目指し、それをコストや納期にも波及させることで差別化に繋げたい」(逢坂工場長)

 さらに、松山常務は「脱プラへの関心の高まりから、食品トレーなども紙製に流れるトレンドがある。ここでも今回導入したブランクス検査装置が活躍できる場面が出てくる」との考えを語っている。

 完全フルバリアブルも可能な同検査システム。そこにも差別化の種はある。将来的には複数台のブランクス検査装置で品質保証体制を標準化し、「大信クオリティ」を価値としてクライアントに提供していく考えだ。