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「印刷の新しい領域に挑み続ける。」──富士フイルムグローバルグラフィックシステムズ(株)(山田周一郎社長、以下「FFGS」)は、サービス子会社である富士フイルムGSテクノ(株)を4月1日付けで吸収合併するとともに、同日付けで社名を「富士フイルムグラフィックソリューションズ株式会社」に変更する。「保守・修理等の各種サポートを含め、一層幅広いソリューションをより最適な形で提案し、顧客ニーズに応えていく」とする同社。今回、山田社長にインタビューし、改めてその背景と今後の事業展開や方針について聞いた。

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新生FFGS、4月から「富士フイルムグラフィックソリューションズ」に
富士フイルムGSテクノを吸収合併〜事業ポートフォリオ再構築へ

「当たり前を、もっと当たり前に、よりスマートに」
山田周一郎 代表取締役社長に聞く

印刷ジャーナル 2023年3月15日号掲載

 「印刷の新しい領域に挑み続ける。」──富士フイルムグローバルグラフィックシステムズ(株)(山田周一郎社長、以下「FFGS」)は、サービス子会社である富士フイルムGSテクノ(株)を4月1日付けで吸収合併するとともに、同日付けで社名を「富士フイルムグラフィックソリューションズ株式会社」に変更する。「保守・修理等の各種サポートを含め、一層幅広いソリューションをより最適な形で提案し、顧客ニーズに応えていく」とする同社。今回、山田社長にインタビューし、改めてその背景と今後の事業展開や方針について聞いた。

山田 社長

─まず、2004年に分社化した富士フイルムGSテクノを今回、改めて吸収合併する背景や狙いについてお聞かせ下さい。

山田 当社は、基本的に刷版を中心とした材料ビジネスを生業にしてきた会社です。現在も事業の中心は刷版で、依然として最も重要な事業に位置付けていますが、年々減少傾向にある需要とコロナ禍の影響により、ここ1年でも刷版の国内総需要は2〜3%落ちています。

 繰り返しますが、刷版は当社にとって今後も非常に重要な事業であることに変わりはありません。材料ビジネスは売上の最も主要な分野であり、国内でもトップシェアを長年キープしています。今後もこの事業の開発・生産は継続していきます。しかし、それだけでは事業会社として今後安定的な成長を望むことは難しいと容易に推測できます。新しい時代において印刷業界のお客様が求めるものを改めて精査し、少しずつではありますが事業ポートフォリオ、いわゆる「足場」を変えていくことを意識しています。

 今回のサービス子会社の吸収合併は、このように次の一手を打つための変革を続ける中で、販売会社としての組織体制を改めて強化する狙いがあります。その先には、変化する市場と、そこに挑戦し続けるお客様に寄り添い、信頼の置ける「相談相手」として、ともに歩んでいくという、我々の強い意志と思いがあることをご理解いただければ幸いです。

─今回の組織変革によって、具体的にどのようなシナジー、ひいては新たな価値を提供していこうとお考えですか。

山田 昨年6月の代表取締役社長就任以来、私は「材料の供給」「機器システム提供」、そして「アフターサポート(サービス)」を三位一体で提供することの重要性を感じています。

 富士フイルムGSテクノは2004年にFFGSから分社化した会社です(2017年にFFGSテクノサービスから社名変更)。当時は、CTP機器の導入が本格化する中で、機器サービスのレベルアップが急務でした。そして、料金体系をともなうサービスの事業、いわゆる年間保守契約という概念に対する理解が市場で進み、保守メンテナンスに対する価値が認められはじめた頃です。これをきっかけに、保守メンテナンスの技術は飛躍的に向上しました。しかし、営業とサービスが別会社であるために、両社の判断基準の違いなどもあってスピーディーで効率的な運用の妨げになっていた部分も否めません。

 そしておよそ20年が経ったいま、富士フイルムのすべてのグラフィック製品において「材料の供給」「機器システム提供」「サービス」を1つの窓口で対応するというシンプルな組織にすることで連携を強化し、サービス事業のレスポンスを高めるフェーズに入ったということです。「効率化」といっても決して人員を削減するというような話ではありません。結果として変化する技術への対応において、さらにレベルアップでき、質の高いサービスを持続的に提供できると確信しています。

 今回の吸収合併について、何人かのお客様にお伝えしたところ、シンプルで分かりやすい事業構造として評価するお声を頂いています。

─一方、今回はさらに社名を変更するということですが。

山田 はい。同じく4月1日付けで社名を「富士フイルムグラフィックソリューションズ株式会社」に変更します。これまで皆様には「FFGS」という呼称で親しまれてきたこともあり、これを継承することを意識して社名を決定しました。引き続き「新生FFGS」としてご愛顧賜りますようよろしくお願い致します。

 この新社名には、富士フイルムグループの「事業活動を通じて社会課題の解決を目指す」という企業姿勢を体現すべく、印刷業に携わる顧客の課題解決となるソリューションを提供し続ける会社でありたいという想いを込めています。モノを提供するだけではなく、「一緒に考え、価値を提供していく会社」ということです。

─事業ポートフォリオを再構築していく中で、刷版に次ぐ「第二の柱」は、やはりデジタル印刷の分野でしょうか。

山田 はい。そう理解いただいて結構です。ポストコロナを見据えた現在、消費者の考え方や嗜好が多様化するのにともない、印刷物にも小ロット多品種化に対応する生産方式が求められています。さらに原材料価格の高騰や人材確保が難しい社会環境において、デジタル印刷の比率が高まることは言うまでもありません。それにともなって、当然のことながら、サービスのスキルや質を変えていく必要性があり、ここは今回の組織変革において着実に強化していきます。

 当社は、昨年のIGAS2022でも「オフセット印刷ユーザーがデジタルを実践的に活用する」という視点で、オフセットとデジタルの共存運用を最適化し、そこで生み出された「余力」を再分配するという考え方にもとづく「最適生産分析ソリューション」を実践に近い形で提示し、生産効率を高め、新しい印刷物を創造することを提案しました。デジタル印刷分野における出力機のポートフォリオとして、当社は乾式トナーおよびインクジェットの技術・製品があります。これらを如何に最適な環境の中で活用いただくかという提案は、今後非常に重要になると考えています。

 この分野のソリューションは、2021年7月に富士フイルムの「グラフィックシステム事業部」と富士フイルムビジネスイノベーション(「富士フイルムBI」)の「グラフィックコミュニケーションサービス事業本部」が統合されたことを起点に、大きく加速しています。富士フイルムBIとのシナジー創出は、富士フイルムグループの一貫した方針です。FFGSが持つ印刷リテラシーおよび顧客基盤と、富士フイルムBIが持つデジタル印刷分野での顧客基盤および技術を掛け合わせ、印刷業界にさらなる「価値」を提供することを目指しています。

 IGAS2022においても、その一端をご覧いただけたと思います。統合型ワークフロー「Production Cockpit」にも両社の知見が反映されてきているほか、双方の強みを生かしたハイブリッドな商品化プロジェクトも始まっています。とくにプロダクトマーケティング・商品企画の部分ではかなり協業が進んでいます。また、両社ともにポートフォリオを持つインクジェット分野では、まだまだシナジー効果を高めることができるでしょう。さらにバリエーションを拡張し、新たなシステムの市場投入も可能だと考えています。

─最後に、今回の発表について、市場のお客様へのメッセージをお願いします。

山田 今回の発表は、「我々自らが変化していく」という意思表明であり、いままでとまったく異なる事業を行うというわけではありません。まず、そこはご安心下さい。ご相談相手としての機能を強化し、製品、サービスともに、より良質なソリューションを提案するための組織へと変革していくための一歩です。「当たり前のインフラを、もっと当たり前に、よりスマートに質を高めていく」という我々の取り組みをご理解いただければ幸いです。

─ありがとうございました。