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トップ > 特集 > 検査システムによる品質管理と標準化:賢工製版、ダックエンジニアリング オンライン枚葉検査装置導入

 「印刷物」を「工業製品」と捉える以上、その製造メーカーには「品質保証」というひとつの責任が生じる。そこには生産工程における機資材の見直しや工程間での工夫など、様々な手段が考えられるわけだが、最終手段はやはり生産物を「検査」「検品」するということになる。印刷業界においても多くの検査関連機器が市場投入されており、「不良品をどう処理するか」、また「不良の原因を如何に生産工程へとフィードバックするか」といったシステマチックな検査工程から生まれる高品質で安定した製品供給は、クライアントの信用を獲得する手段であり、問題があった時もその製品の出荷時の検査記録などがチェックできる体制にあるかどうかが発注先の評価対象に加えられるようになってきている。つまり検査エビデンスの存在が求められるようになってきているということだ。また一方で、多品種・小ロット・短納期化が進む中では品質管理の検証による作業の効率化、損紙低減によるコストダウンなど、経営的観点からも重要性を増している。そこで今回は「検査関連機器・システム」を取り上げる。

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賢工製版、ダックエンジニアリング オンライン枚葉検査装置導入

ヤレ紙・無駄を削減〜現場の安心、営業の武器にも活用

印刷ジャーナル 2021年3月15日号掲載

 「営業が仕事を取りやすい生産設備を構築していくのが私の役割」。このように語るのは、印刷会社の仲間専門で事業展開する(株)賢工製版(本社/東京都品川区東品川5-6-15、佐野勝浩社長)の佐野貞雄会長だ。そんな同社は2019年11月、製薬業界など品質に厳しい仕事に対応するため、LED-UV搭載のRMGT A全5色印刷機にダックエンジニアリングのオンライン枚葉検査装置「TLC401M」を設置して導入。これにより、ヤレ紙の削減、インキや電気代などの無駄がなくなったほか、現場の精神的な安心、営業の武器としても活用するなど、検査装置の導入を最大限に活用している。

RMGTのA全5色機の前で佐野会長(左)と金井取締役


都内の下請専門工場として信頼と実績


 同社は、佐野会長が昭和56年に「刷版屋」として設立した。このため、同社の取引先は昔から印刷会社だ。20年前に印刷機などの設備を導入して業容を拡大。企画・制作・デザインから印刷までを一貫して行い、直受注していた時期もあったが、「現在は100%、印刷会社の仲間仕事を専門としている」(佐野会長)。取引先は都内の印刷会社を中心に約300社。コロナ化で取引先の印刷会社が廃業しても、「新しい取引先が自然に集まってくる。このため、取引先は減らない」(佐野社長)。刷版屋時代からの長年にわたる信頼と実績の所以であろう。

 品川の天王洲アイルという絶好のロケーションに位置するため、取引先には東京に営業所を構える地方の印刷会社も多い。「地方の印刷会社の東京工場としての役割も果たしている」(佐野会長)。また、都心の真ん中で立ち会いにも来やすいため、同社に初めて仕事を発注する場合でも安心というメリットもある。「刷版持ち込みで、本機校正して欲しいという取引先もあるが、それでも大歓迎である」(佐野会長)。仲間下請専門であるため、どのような要望にも対応していくのが同社のモットーだ。

 また、昨今は簡単な仕事は印刷通販に流れているため、「高度な技術が必要な印刷や、他社が嫌がる面倒な仕事が当社に集まってくる」(佐野会長)。しかし、せっかくの仕事を断るわけにはいかないため、同社では常に、先行的な設備投資を続ける。「このため、一向に借金は減らないのだが...」(佐野会長)。現在は全7台の印刷機を保有し、全ベタなど他社が嫌がる仕事や、偽造防止印刷などの特殊な技術が必要な印刷、また、厚紙から薄紙まで、様々な仕事にプリプレスから印刷、後加工のフィニッシュにまで対応する設備を構築している。

 さらに、環境保全活動に注力しているのも同社の特長のひとつ。FSCやGP認定、環境保護印刷のクリオネマークなどを取得し、環境に優しい印刷に積極的に取り組んでいる。同社の環境責任者である金井宏親取締役・製造部本部長は、「部分的にではなく、全方位にわたって環境負荷軽減に取り組んでいるのが当社の強み」。現像レスプレートの使用による廃液削減や加湿機の設置による湿度管理など、自社だけでなく、「地球レベルでの環境保全を視野に入れた活動を展開している」と佐野会長は話す。


RMGTのA全5色機に設置。インクジェットナンバリング機も


 同社がダックエンジニアリングのオンライン検査装置「TLC401M」を設置しているのは、LED-UV搭載のRMGT A全5色印刷機だ。同社は現在、全7台の印刷機を保有しているが、その中でも、とくに品質に厳しい製薬業界の印刷や偽造防止印刷など、高度な「技術力」を求められる印刷の専用機として活用している。

オンライン枚葉印刷検査装置「TLC401M」

 「定期モノなど、いつもの案件は勝手が分かっているため、他の印刷機でも問題なく対応できる。ただ、高い技術力や品質が求められる仕事は検査装置搭載の印刷機で行うようにしている」(佐野会長)。現場のオペレーターも、今では検査装置なしでは恐くて印刷できないとコメントしているということだ。佐野会長は「営業マンは、『当社の印刷機には検査装置が付いているため安心できます』ということをアピールすることで、営業力の強化にもつながっている」と話す。

タッチパネルで検査結果が簡単に確認できる

 ここでエピソードがある。今回で3回目の受注になるという偽造防止の印刷は単色の印刷。このため、1回目の受注のときは2色機で印刷したが、これが失敗した。本来ならコピーしなければ浮かび上がってこない文字が印刷の段階で浮き出てきているのである。

 「その結果、印刷した1万8,000枚のうち半分がヤレになってしまった。紙代、インキ代、電気代などもすべて無駄になってしまい、2回目からは検査装置を設置したRMGTの5色機で印刷するようにした」(佐野会長)。もったいない気もするが、「それでも確実なものを刷っていきたい」(佐野会長)。これにより、現場のオペレーターも心理的に安心して仕事ができるようになったようだ。

 また、同社は検査装置と合わせ、オプションのインクジェットによるナンバリング機を設置した。刷り出しと同時にすべての印刷物の端部にナンバリングするため、ペケが出た場合にその番号の印刷物をすぐに抜き取ることができ、検査作業をさらにスムーズに行うことができるようになる。

刷り出しと同時にインクジェットでナンバリングを行う

 金井取締役は、「検査装置が付いていても、できる限り抜き取り検品を行い、品質管理を徹底している」。同業の印刷会社が安心して仕事を発注できる企業として、品質管理は今後も追求していく考えだ。

 「今後も営業が仕事を取りやすくなり、そして現場が安心して生産していけるための設備投資を続けていきたい」(佐野会長)。佐野会長は昨年11月、40年近く務めた社長を2代目の勝浩社長にバトンタッチしたばかり。新社長を筆頭に、今年はこれまで以上の展開が期待できそうだ。