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特集|新たな付加価値を彩る「加飾技術」

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甲南堂、デジタル加飾で「感動を与える印刷」提供

価格への反映、顧客も納得 〜 営業活動のフックに、社内に「新しい風」

印刷ジャーナル 2019年7月15日号掲載

 (株)甲南堂(水落充社長)の「KONANDO Labo」(所在地:兵庫県神戸市中央区港島南町4-7-9)は、B2枚葉UVインクジェット印刷機「Accurio Jet KM-1」ならびにデジタルUVスポットニスコーター「JET vernish 3D」を設備する西日本唯一の印刷研究施設。インクジェットによりニス・箔などを版・型不要で施すことができる自社のデジタル加飾技術を「デコレーションタッチ」として商標登録し、「感動を与える印刷」の研究を進めている。コニカミノルタジャパンとの戦略的提携のもと、世界に先駆けてデジタル加飾技術を追求する同社の取り組みを紹介する。

水落社長(左)と水落常務

 同社は1929年5月に現社長の祖父が創業し、今年で90周年を迎えた老舗の印刷会社。これを機に、今年5月には従来の社名である「甲南堂印刷」から「印刷」の文字を取り、新社名のもと事業展開を進めている。これについて同社の水落翔常務取締役は「当社はデザイン、制作を得意とする会社であり、業務は広告代理店のような内容が中心である。このため、社名に『印刷』の文字が付いていることは逆に違和感を感じていた」と説明しており、今後は「印刷もできる広告代理店」という企業イメージを目指して事業展開していく考えだ。

 そんな同社が「デジタル加飾」という技術に興味を持ち始めたのは2018年の初めごろのこと。同社は同年1月に本社機能を本社のある神戸市東灘区からポートアイランドのモードピア(神戸市中央区港島中町6-5-1-6F)に移転。ここにはオンデマンド印刷機も設備し、制作関係を中心に営業、工務、経理、データ部門の社員など、約100名の社員が勤務しているが、「一般的な印刷物だけでは...という思いが以前からあり、もっと付加価値の高い高品質な印刷物を作りたいという気持ちがあった」(水落社長)ようだ。そんな中、コニカミノルタジャパンからデジタル印刷機「Accurio Jet KM-1」とデジタルUVスポットニスコーター「JET vernish 3D」の導入による産業印刷分野での戦略的提携の提案が持ちかけられ、話は急速に進展。同年夏にはモードピアから車で数分のポートアイランド内に「KONANDO Labo」の用地を取得。そして昨年のIGAS2018において、両機導入によるコニカミノルタジャパンとの戦略的提携を大々的に発表し、印刷会社としては世界で唯一、両機を設備する印刷会社としてコニカミノルタジャパンの協力も得ながら、デジタル加飾技術による「感動を与える印刷」の研究を進めている。

Accurio Jet KM-1
JET vernish 3D

自社のデジタル加飾技術を「デコレーションタッチ」として商標登録

 某大口顧客のチラシやカタログの受注が大部分を占める同社がもともと、デジタル加飾に取り組んだ最大の目的は「新規顧客の獲得」である。デジタル加飾の設備を導入以降、同社では自社主催の見学会をはじめ、同業組合やコニカミノルタジャパン主催の見学会などを数多く開催。これまでに300社以上がKONANDO Laboの見学に訪れており、水落常務は「デジタル加飾は営業のフックになる」と大きな手応えを感じているようだ。また、「ただ単に加飾できるだけでなく、武器となる新しい強みができたことにより、営業部の活性化や制作部隊にも前向きな気持ちが見られるようになるなど、社内に新しい風が吹いてきている」(水落社長)と、様々なシナジー効果が表れていることを肌で感じているようだ。

 そして、その「新しい風」は現実的な仕事の引き合いにも結び付いているようだ。水落常務は「印刷物の内容やロットにもよるが、価格が数倍から場合によっては従来の10倍以上でも納得していただくことができている。当社では、自社のデジタル加飾技術を「デコレーションタッチ」として商標登録して営業展開しているのだが、顧客にとっても印刷物を発注するというよりも、別のものを買っているという感覚を持っていただいている」と説明する。

 また、「Accurio Jet KM-1」と「JET vernish 3D」の組み合わせだからこそ実現できる営業活動面でのメリットについて水落常務は「1枚から制作できるため、見本サンプルを何種類も持って顧客に提案することができる。これはデジタル加飾だからこそ実現できる大きな強みであると考えている」と強調する。さらに「顧客も加飾代は高価であると認識しているので、なかには加飾校正代を支払うと言っていただける顧客もいるくらいだ」と営業的な魅力について語っている。

コニカミノルタ主催のグローバルコミュニティで特別エントリーの印刷物が受賞

 コニカミノルタは、2016年に欧米を中心としたグローバルコミュニティ「Prokom」を設立した。これは、世界中のコニカミノルタのプロダクションプリンターユーザーを対象に、ネットワーキングを通じてお互いが成長していくことを目指した活動を展開しているもので、その活動の一環としてプリントアプリケーションのコンテストである「コンファレンス」を毎年開催している。

 同社は「コンファレンス2019」に、「Accurio Jet KM-1」と「JET vernish 3D」で製作した印刷物をエントリー。6月5日と6日にスペイン・バレンシアで開催された同コンテストの表彰式において、「1st KonicaMinolta Innovative Print Award」を受賞した。

「KonicaMinolta Innovative Print Award」の受賞作品

 水落社長は「4つの作品をエントリーし、その中から『神戸牛』と『いくら』のポスターが採用され、記念楯をいただいた。自社ブランドのデジタル加飾『デコレーションタッチ』にもさらに自信を持つことができるようになった」と話しており、これを機に今後はデコレーションタッチを海外にもアピールしていきたい考えだ。

 「最近の受注の実例として、絵画の複製画の依頼を受け、デコレーションタッチによるデジタル加飾で製作した。レプリカであっても買いたいという需要はあるようで、海外への販売展開も考えている」(水落社長)

 水落社長はデジタル加飾の技術について「混沌とした印刷業界の壁を突き破れる潜在的な能力を秘めたものだと考えている。デコレーションタッチにおいても、印刷業界に一石を投じることができる商品やサービスを展開できるものと考えている」と未知なる可能性に期待しており、コニカミノルタの協力も得ながら、さらに自社のデジタル加飾技術に磨きをかけていく考えだ。