デジカメや携帯カメラの普及により、誰でも手軽に写真を撮影できる時代になった。しかしそれに反比例して、「写真業界でプリント出力の需要は年々減少傾向にある」と青木氏は話す。画像データとして、パソコンの中で完結してしまうからである。
そこで写真業界がプリント出力の需要を創出する商材として考え出したのが「フォトブック」である。これは日本よりも欧米で普及が進んでいる商材で、フォトブックが市場に登場し始めた2006年当時は日本では50万冊しか生産されていなかったが、欧州では350万冊、アメリカではすでに1,000万冊が制作されていたとのデータもある。
その後、日本でもフォトブック市場は成長を続け、2012年は440万冊、売上ベースで95億円の市場にまで成長することが予測されている。しかし一方、「フォトブック」の制作経験者はまだまだ少なく、周知を進めていけば、今後さらに伸びる市場であることが期待できる。
なお、「フォトブック」は1部〜数部までの極小ロットのものを差しており、学校の卒業アルバムなどの類はデータには含んでいない。
同協会ではフォトブックの定義として、(1)主として写真(アナログ・デジタル)を入力素材とするもの(2)印画紙か印刷用紙で出力されているもの。※印刷用紙の種別は定義しない(3)表紙と中面が一体となって綴じられているもの(頁が脱落しないもの)。※綴じ方は定義しない(4)表紙があるもの。※表紙の材料・形態は定義しない(5)用途は限定しない--と定めている。
昨今では、写真プリントショップや量販店などの店頭に設置されている受付機を使えば、ワンコインで手軽にフォトブックを制作できる。いわゆる簡易版のフォトブックで、従来のように1枚1枚をプリントしてアルバムに差し込んでいくことに比べると整理がしやすいというメリットがある。一方、子供の運動会や旅行など家族の記念として残したいフォトブックの場合は高級志向を求めるユーザーが多く二極化が進んでいるが、「いずれの場合も注文の『窓口』は今後、インターネットを介するのが当り前になってくる」と青木氏は予測しており、フォトブックビジネスを成功させる最大の鍵は、注文の窓口となるサイトにかかっていると指摘する。
それでは、どのようなフォトブックの受注サイトを開設すればよいのか。青木氏は次のようにアドバイスしている。
「フォトブックの受注サイトには、すでに多くのものが存在しているが、インターネットからの注文の場合、ユーザーが自分で最終の注文画面まで持っていかなければならない。このためユーザーが悩まずに最終画面まで進んでいけるサイト作りを目指して欲しい」
つまり、様々なニーズに応えようとテンプレートなどを増やしすぎると、逆にユーザーは悩みすぎてしまい、受注を逃してしまう可能性もあるということである。
また、フォトブックをクライアントなどに提案する場合は、「フォトブックにストーリー性を持たせることが大切」と青木氏は指摘する。簡易型のフォトブックでは基本的に1頁に1点の写真の場合が多いが、高級志向のフォトブックでは1頁に何点もの写真を入れることができるほか、文字やイラストを入れることもできるため、アイデア次第で様々な商品を提案できる。ここが「フォトアルバム」と「フォトブック」の異なる点と言えるだろう。
青木氏は、「フォトブックは印刷業界が使い慣れている印刷用紙を使用して作られているものも多い。また、さらなる市場拡大が見込める分野であるため、オンデマンド印刷の需要を創出する商材として印刷業界が取り組む価値は十分にあると認識している。多くの印刷業界の皆様にフォトブックに取り組んでいただき、普及拡大のためのアナウンスに協力してもらえることに期待している」と話している。