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 国際総合印刷テクノロジー&ソリューション展「IGAS2018」が7月31日、「スマートファクトリー」の潮流を明確に映し出すとともに、その先にある印刷ビジネス成功に向けた多くのメッセージを残して閉幕した。「Venture into the Next−変わる印刷、変える未来−」を統一テーマに、東京ビッグサイト東1ホールから6ホールにおいて、319社が印刷に関連する最新技術やサービスで競演したIGASには、およそ56,000人が来場し、「印刷の未来」を体感する場として盛況を呈した。そこで今回、このIGAS2018で発表された技術や製品、あるいは企業戦略などを改めて紹介する「after IGAS」シリーズを企画した。

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FFGS、「Fujifilm Smart Factory」具現化へ 〜 次世代の印刷工場提示

工程全体で自動化・可視化 〜 広報宣伝部 榎本勝義部長に聞く

 富士フイルムグローバルグラフィックシステムズ(株)(辻重紀社長)は、IGAS2018に過去最大規模となる130小間のブースを構え、「INNOVATION BEGINS HERE〜印刷を変える、未来を拓く」をスローガンに、ブース全体をひとつの印刷工場に見立て、受注から制作、印刷、後加工までの全工程にわたって自動化・効率化・可視化を実現した新たな印刷物生産システム「Fujifilm Smart Factory」を展開した。今回は、「after IGAS」として、同社広報宣伝部の榎本勝義部長に、そのIGAS出展を振り返って総括してもらった。
榎本 部長

 今回のIGAS2018で当社が掲げたテーマ「INNOVATION BEGINS HERE」は、「ここから変革をはじめよう」というお客様へのメッセージだけでなく、「富士フイルムグループ自らが変革を起こし、様々なソリューションを提供していく」という思いも込めたものである。
 その思いをカタチにして紹介したのが、新たな印刷物生産システム「Fujifilm Smart Factory」と当社が取り組む環境対応ソリューションの2つだったと言える。
 「Fujifilm Smart Factory」は、ジョブの内容に応じた出力機・後加工機などの生産システムの自動選択とスケジューリング、生産工程とコストの可視化により、最適な品質・納期・コストを実現する「次世代の印刷工場」。富士フイルムグループ内での相互連携はもちろん、業界内外の幅広いメーカー・ベンダーとオープンに連携し、受注から配送・納品までを一貫してサポートすることをコンセプトとしている。会場では、実際にホリゾンブースの後加工機器と連携し、「自動化・可視化」された工程全体の流れをデモで披露した。
 スマートファクトリー構想の核になるワークフロー分野では、XMF次世代バージョンや、これと有機的に連携する富士ゼロックスの次世代工程管理ワークフロー「SE-BizObjects Production Cockpit1.0(以下「Production Cockpit」)」を参考出品。また、デジタルプレス分野では、「SAMBA」ヘッドを採用した富士ゼロックス製輪転インクジェットデジタルプレス「11000 Inkjet Press」(仮称)と「Jet Press」シリーズの新ラインアップ「Jet Press 750S」を世界初出品したほか、国内初登場となる5m幅のハイエンドUVインクジェットロールプリンタ「Acuity Ultraシリーズ」も展示実演した。
 一方、もうひとつの柱となった環境対応ソリューションの訴求では、メインステージのプレゼンテーションにも力を入れた。いままでにない取り組みで、ある意味「チャレンジ」だったが、富士フイルムの環境に対する企業姿勢を示すことで、来場者からも高い評価を得ることができた。また、刷版や軟包装(水性フレキソ印刷)のコーナーでも「環境」を訴求。とくに刷版コーナーで紹介した、カーボン・オフセット制度を活用した環境貢献活動「Green Graphic Project(GGP)」には大きな注目が集まった。これは、「SUPERIA 完全無処理サーマルCTPプレート」のCO2排出量を全量オフセットし、「カーボンゼロ・プレート」として提供するもの。ユーザーは無処理プレートの購入でCO2排出量の削減をはじめ、開発途上国支援やCSR活動のひとつとして対外的にアピールできる。4月からスタートしたこのプロジェクトには、すでに80社近い印刷会社が参加していたが、IGAS会場で新たに14社の参加表明を頂いた。

ワークフロー

 新製品の発表は、やはり「Fujifilm Smart Factory」を担う製品群が中心。その中核となるのがワークフロー製品だ。
 富士フイルムのワークフローシステム「XMF」次世代バージョンと、これに有機的に連携する富士ゼロックスの次世代工程管理ワークフロー「Production Cockpit」を参考出品。両社の技術融合体制強化によって構築が進んでいる次世代ワークフローでは、「生産工程全体の自動化・可視化」「状況に応じた作業計画作成」「外部システムとの柔軟な連携」が実現。また、「印刷物の生産性」の捉え方を、「ひとつひとつのジョブの処理時間短縮」から、「さまざまな品目の大量ジョブの集約・最適生産」へと転換することで、デジタルプレス時代の最新ニーズに対する的確な対応が可能になる。IGASでは、ホリゾンブースと富士フイルムブースを連携させ、「Fujifilm Smart Factory」の第1段階として「入稿からポストプレスまでのシームレスな流れ」を紹介した。
 drupa2016で「プリント4.0」、あるいは「インダストリー4.0」が提唱されていたが、それらは概念的なものに留まっていたように思う。今回のIGASでは、各社がその具体的なソリューションを提示し、なかでも当社が最も現実的な形でその可能性を示したと自負している。
 今後発売予定の「XMF」次世代バージョンは、GUIを刷新しているほか、構造も大きく変え、自動化や連携機能が強化されている。また、ラインアップ構成も変更し、従来はRIP、リモート、他社システムと連携するコントローラーなどをモジュールとして提供してきたが、それをひとつにパッケージ化し、エントリーモデル〜拡張モデルという形で提供することになる。
 一方、「Production Cockpit」は、生産状況の可視化や印刷工程の自動化、システム連携による情報の統合化などの機能により、複数ジョブの工程間の滞留を解消し、生産性向上に貢献する工程管理機能も含むシステムである。
 IGASでは、ブース前面の大きなスペースを使って、富士フイルムの「XMF」と富士ゼロックスの「Production Cockpit」の融合による次世代ワークフローを紹介することができた。両製品の目指すところは変わらない。そこで手を組むことで今後も開発スピードを上げていく考えだ。
「SE-BizObjects Production Cockpit1.0」コーナー

デジタルプレス

 新製品のデジタルプレス2機種を発表した。そのひとつが「Jet Press 750S」である。
 同機は、ワールドワイドで150台以上稼働している「Jet Press720S」の上位機種。基本性能を継承しながら、生産性をさらに向上させている。
 プリントヘッドの打滴速度を高速化・高精度化し、新たな乾燥機構の採用により、毎時3,600枚という高速出力を実現。加えて、最大用紙サイズを750×585ミリに拡大したことで、一般的な書籍のサイズであるB5サイズが1枚に6ページ分印刷できる。
 また、印刷用紙をベルトコンベアに密着させ、直接熱を与える新たな乾燥機構により、消費電力を約10%削減。乾燥装置本体の全長が従来機に比べて70センチ短縮したため、設置面積も約15%削減している。
 さらに、画像部全面スキャンによる自動スジ検知を実現した専用の内臓検査システムをオプションとして開発。機械学習機能によってチューニングされた独自アルゴリズムで、従来不可能とされていた吐出曲がりなどによる「白スジ」現象を検出可能になっている。将来的には「11000 Inkjet Press」への搭載も検討したい。
 なお、今回はリョービMHIグラフィックテクノロジー(株)ブースにもOEMブランド「RMGT JP750」として展示実演されていた。
Jet Press 750S
 もうひとつが富士ゼロックス製輪転インクジェットデジタルプレス「11000 Inkjet Press」。これはdrupa2016で技術発表されていた「SAMBA」ヘッド採用の輪転型デジタルプレス。ヘッドとインクは富士フイルム、用紙搬送やコントロール部分はゼロックスのオリジナルである。
 プレコートなしでコート紙に安定した印刷が可能で、1,200×1,200dpiの高解像度で最高80m/分(画質優先モードで50m/分)、1,200×600dpiモードで150m/分の高速印字を実現。画像のスジ・ムラを自動補正する高精度センサーも搭載している。
 サンプルはショーケース内に展示し、手にとって見ていただくことはできなかったが、来場者からは「商業印刷分野で使える輪転インクジェットプレス」としての評価と期待の声を頂いた。富士フイルムブースの目玉製品であったが、IGAS全体でも注目された製品のひとつ。発売は今年の冬頃を予定している。
11000 Inkjet Press(仮称)

ワイドフォーマット

 国内初登場となる超高画質・高生産性ハイエンドタイプの3.2/5メートル幅ロールプリンタ「Acuity Ultraシリーズ」を展示実演。国内はもとより、アジアからの来場者にインパクトがあったようだ。
 出展機は5メートル幅モデル。最小3ピコリットルプリントヘッドと専用に開発されたUVインクにより、高いトータル性能を実現している。
 最高解像度は1,200×1,200dpiで、最高実用印字スピードは236平方メートル/時(5メートル幅モデル)。メディア厚は0.1〜2ミリまで。C、M、Y、K、Lc、Lmの標準6色で、ホワイトはオプション。海外では発売済みで、国内は今秋発売予定。
Acuity Ultraシリーズ

パッケージ

 新製品として、ポリマーや光重合に関わる最新技術を複合的に投入することで、生産性・画像再現性・取り扱い性が一段とアップした水現像フレキソ版「FLENEX FW-L2」を展示した。「露光時間」と「洗い出し時間」の大幅な短縮により、溶剤現像版の約5倍の生産性を実現し、フラットトップドットの形状もさらに向上し、シャープな画像再現を実現している。
 一方、独自のEUCONテクノロジーを搭載した軟包装用UVインクジェットデジタルプレス「Jet Press 540WV」も展示実演。フィルム系基材上で鮮明な画質再現が可能で、CMYKW5色で毎分50mの高生産性を実現。UVインク特有の臭気を大幅に低減している。
 今回は導入ユーザーによる実サンプルを多く展示し、「ここまできたか」という驚きの声も頂いた。軟包装、水性フレキソ印刷分野の大きな可能性を示すことができた。
Jet Press 540WV

CTPシステム

 完全無処理プレート「SUPERIA ZP/ZD」に加え、新聞向けでは合紙レス完全無処理プレート「SUPERIA ZN-II」も発表した。同プレートは、2015年に発売した「SUPERIA ZN」の優れた性能を継承しながら、ユーザーから要望の多かった「合紙レス化」「エッジ描画性の向上」「エッジ汚れ防止効果の向上」を実現している。
 また、page2018に参考出品したショートコンベアも稼働展示。省スペースや使い勝手の良さで高い評価を得た。

         ◇            ◇

 今回のIGASでは、当社を含め、具体的なビジネスを想像できるサンプル展示が多かったように思う。連携しながらの自動化、効率化、ロボット活用などが目立った。総称を付けるならば、やはり「スマートファクトリーIGAS」になるのかもしれない。
 過去最大規模となる130小間で挑んだIGAS2018だったが、複数台にわたる大型機の出展、また通路も広めにとったことで、来場者には我々のソリューションをじっくり見ていただくことができ、全体としても成功のIGASだったと言えるだろう。
 また、「ビジネス」という面でも2社の成約セレモニーをはじめ、会場では多くの成約を頂いた。今後は「Jet Press 750S」や「11000 Inkjet Press」の発売を機に、具体的な商談を進め、販売に繋げていきたい。