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印刷会社の印刷通販サービス活用 2019

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プリントネット、九州工場を移転・拡張〜生産能力は4倍規模に

【量販型印刷通販サイト】「納期厳守」という時間軸へのこだわり

印刷ジャーナル 2019年6月5日号掲載

小田原 社長​ 「確実な商品を確実な納期で」--鹿児島県を創業の地とする「プリントネット」(本社/東京都千代田区丸の内、小田原洋一社長、https://odahara.jp/)は、「納期厳守」という時間軸への徹底したこだわりで顧客との信頼関係を構築し、ネット通販事業開始からわずか10年足らずで売上70億円、成長率150%を弾き出す量販型印刷通販サイトだ。昨年10月、東京証券取引所JASDAQへの上場を果たしたのをきっかけに、生産能力拡充とシェア拡大に向けて、一気にアクセルを踏み込んでいる。

成長支える「人材育成」

 年率20%以上の成長を続け、年商1億5,000万円から70億円規模の印刷会社へと成長を遂げている同社。その背景には決してドラスティックな成長戦略があったわけではない。「『確実な商品を確実な納期でお客様にお届けする』という経営理念を実行した結果に過ぎない」と小田原社長。ただ一方で、「企業は、その成長過程において『社員教育』が最も重要で、人材の成長に沿った成長戦略を描かないと必ず歪みが生じる」と語る。このことは経営理念にも示されており「人なくして成長なし。従業員の成長に金を惜しまない」という強い意志が「行動指針」としても示されている。

 従業員290名強を擁する同社の離職率はたったの2%。これも人材育成をベースとした成長戦略を実践してきたひとつの証で、それだけ毎年社員のスキルが底上げされることで強い企業体質を生んでいる。これこそが、同社が標榜する「確実な商品を確実な納期で」というコンセプトを下支えしている。

2019年は「設備投資の年」

https://odahara.jp/
 昨年10月、悲願だった株式上場を果たしたプリントネット。ここでの調達資金は、ここ数年抑制してきた設備投資や宣伝広告費に当てられる計画で、これを機に、生産能力増強とシェア拡大に向けて、スピード感のある「攻めの経営」に乗り出している。

 その第1弾として今年1月、創業の地でもあり、生産拠点として長年大きな役割を果たし、同社の急成長を支えてきた九州工場の移転・拡張を実施。同市内に生産能力が従来比4倍の規模となる新工場が新たに稼働している。

 九州工場移転・拡張の背景について小田原社長は「プリントネットの成長にともない旧九州工場の生産能力は限界に達していた。溢れた仕事は東京西工場やアウトソーシングに依存していたが、比較的雇用面で安定している鹿児島の地で生産能力を強化することにした。地域における新たな雇用創出、地域経済の浮揚発展に貢献できればと思う」と語る。

 新九州工場(鹿児島県姶良市加治木町木田1377-23)は、敷地面積3,708.86平方メートル、延床面積1,087.35平方メートル/1,797.6平方メートルの2階建て。竣工にともない、ハイブリッドUV仕様の菊全判8色印刷機2台を導入したほか、オンデマンド印刷機や封筒印刷機、中綴じ製本機などの後加工機も設備。初年度の生産計画としては10億9,300万円を見込んでいるが、フル稼働すると20億円規模の生産拠点となる。

 さらに、2014年に操業を開始した東京西第2工場(山梨県上野原市八ツ沢2193-11、東京西工業団地内)では、今夏にかけて既設機の入れ替え需要として、ハイブリッドUV仕様のオフ輪機数台、8色機数台を設備する計画で、ここでも大幅な生産能力の増強が実施される予定だ。


M&Aで関西圏強化

 一方、同社では今年2月19日開催の取締役会において、民事再生手続中だった大阪の(株)ウイズプリンティングの印刷・製本事業を譲り受けることについて決議し、事業譲渡契約を締結。実行日である4月1日から業務を開始している。

 ウイズプリンティングは、大阪で印刷・製本事業を手掛けていたが、取引先企業の移転に伴う受注減等により業績が悪化。平成30年7月31日に民事再生手続の開始決定を受けていた。

 一方、プリントネットにおける関西圏での売上は2018年10月期において10%程度。これら関西及びその周辺地域へのサービス強化と運送コストの低減等を図るべく、大阪に製造拠点を新たに確保するとともに、事業シナジーによる収益力の向上に寄与するものと判断したという。

 この関西工場(大阪府東大阪市池島町8-6-32)では、B系列オフ輪機1台とA系列オフ輪機2台が稼働しており、今後の運営においてはロングランのチラシ・冊子物を中心に展開していく考えだ。「今後、人員も拡充し、これまで弱かった関西方面を強化していきたい」(小田原社長)

 さらにスピード経営は止まらない。今年4月、全日本空輸グループの物流拠点であるOCS東京スカイゲート(東京都江東区辰巳3-9-27)に「東京デジタルセンター」を開設している。これは、都内の営業拠点だった虎ノ門支店を移転する形で新たに開設されたもので、6階のワンフロア1,976.28平方メートルを占有する同センターにはデジタル印刷設備が集約されている。POD機数台に加え、今後は枚葉UVインクジェットデジタルプリンティングシステムを数台順次導入していく計画だ。

 「今後、年率20%以上の成長を目指したい。いまからが勝負」と語る小田原社長。印刷通販市場におけるトップシェア獲得に乗り出している。