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デジタル印刷特集 2019

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富士ゼロックス特殊色と紙の質感を演出〜新たな価値をもたらす印刷表現

ゴールド・シルバー・ホワイト+黒トナーを搭載

印刷ジャーナル 2019年3月25日号掲載

 オフセットやデジタルを問わず、多くの印刷機がCMYKの4色を使用して印刷物を生産している。しかし、この印刷における「常識」にとらわれず、CMYではなくゴールド、シルバー、ホワイトの特殊トナーにブラックを加えた4色を標準搭載したプロダクションプリンターが今年1月、富士ゼロックス(株)(本社/東京都港区、玉井光一社長)から発売された。その斬新な発想を採用した特殊色専用プロダクションプリンターが「DocuColor 7171 P(Model-ST)」だ。

DocuColor 7171 P(Model-ST)
 グラフィックアーツの分野において、CMYKの色分解によるカラー印刷は基本中の基本、いわば業界のスタンダードといえる。今回、発売された「DocuColor 7171 P(Model-ST)」は、この固定概念から脱却した印刷機として商品化されている。

 その発端となったのは、名古屋地区で営業職に従事する同社の鈴木佳代氏(グラフィックコミュニケーションサービス営業部 第三営業部 1グループ1チーム)ら、社内の有志が抱いた「特殊トナーを使った印刷物をもっと多くの人に、もっと手軽に作り出してもらいたい」という想いだ。

 同社では、新しいアイデアの具現化や社会的課題の解決に向けて、想いのある社員が組織の枠を超えて社内外のメンバーとともに自発的な提案・実践をするプログラムがある。鈴木氏らは、そうしたプログラムを活用し、また、経営層の賛同・協力を得て特殊トナーをより手軽に使用できる新たな商品を世に送り出すことを目指して活動を進めることになった。

   その想いの実現に向け、メンバーがトライしたのが、小型の既存機種を選び、CMYトナーを、ゴールド、シルバーなどの特殊トナーに差し替えて使うというアイデアだ。

鈴木氏(左)と後藤氏
 開発部門のメンバーを中心に実現性を評価、検証した結果について鈴木氏は、「技術的には小型機で特殊トナーを出力することについて一定の見通しがついた。その一方で、CMYトナーを搭載せず、フルカラーが出力できない特殊色専用機という特性をお客様が求めているのか、ということについては検証を進める必要があった」と振り返る。

 そこで同社では、お客様へのヒアリングを実施して市場での受容性を調査。その結果、特殊色専用機に対する関心が非常に高いことを確認できたという。
 
国内初の特殊色専用機

 そして様々なテスト検証を経て、ついに特殊色専用プロダクションプリンター「DocuColor 7171 P(Model-ST)」が発売に至った。

 同機は、100V電源で稼働するエントリーモデル「DocuColor 7171 P」をベースに、通常のCMYトナーに替えて、同社の1パス6色プリントエンジンを採用したハイエンドプロ市場向けプロダクションプリンター「Iridesse Production Press」で高い評価を得ているゴールド、シルバー、ホワイトの特殊トナー3色を搭載。

 これら特殊トナーとブラックトナーの4色で、高級感・季節感が演出できるアイキャッチ効果の高いデザインや、色紙へホワイトを活用したデザインなど、CMYトナーでは実現できない表情豊かな印刷物が出力可能となる。

 なお、既存の機種がベースになっているものの、単純にトナーを入れ替えただけではなく、特殊トナーを出力するにあたっての技術的な最適化が施されている。

 特殊トナーを搭載できるデジタル印刷機は市場で稼働しているが、ゴールド、シルバー、ホワイトを一度に出力できるデジタル印刷機は同機だけだ。マーケティングを担当する同社の後藤章一氏(グラフィックコミュニケーションサービス事業本部 マーケティング部 プロダクトマーケティンググループ)は、CMYKでのカラー印刷ができない一方で、特殊色専用機だからこそできる「表現力」があると説明する。

 「色紙とデザイン、そして特殊トナーを組み合わせることが、この印刷機を活かす最大のポイントとなる。例えば、赤い紙に濃度を抑えたブラックを印刷することで茶色を表現でき、また、同様にホワイトの濃度を抑えることでピンクを表現することができる。特殊トナーに特化した出力機ということで活用例としてゴールドやシルバー、ホワイトなど、それぞれ単色によるベタ印刷をイメージしがちだが、下地となる紙の色や風合いを活かし、そしてトナーの濃度調整をうまく組み合わせることで表情豊かな表現が可能となる」

濃度調整で様々な色を表現
新たな視点から「印刷」を再定義

 この他にも、紙とトナーの組み合わせによっては、地紋のような表現も可能。たとえば、黒い紙にブラックを印刷することで光沢感を演出でき、また、デザインを工夫することで視覚的にエンボス調のような作品に仕上げることもできる。

 つまり、従来からの印刷の概念を脱却し、紙の地色や風合いとの兼ね合わせなど、新たな発想からものづくりに取り組むことで同機の魅力を最大限に引き出すことができる。

黒い紙にブラックを印刷することでニス効果を演出
 鈴木氏も「4色モデルのデジタル印刷機におけるスピードなどの機能性向上だけでなく、この商品には新たな価値創出につながるアイデアへとつながるヒントやポテンシャルがある。導入されるお客様も、既存の仕事をさらに高い品質で提供されることにとどまらず、新たな仕事を創り出していくことに重きを置かれていると思う。そのため、私たち営業もそれぞれのお客様がお持ちの創造力を形にする支援を行っていきたい」と、ユーザーと一体となった新たな価値創出を目指していく考えを示している。

 今後の展開として同社では、特殊色のオンデマンド出力に関する認知を拡大するために、印刷会社だけでなく、その工程の上流となるデザイナーや広告代理店などにも積極的にアプローチしていく。そして将来的には、分野を限定せずに様々な業種に向けて特殊トナーがもたらす表現の可能性を訴求していく方針だ。

 「価格、設置スペースなど特殊色をより手軽に活用できる商品であり、従来の色分解によるカラー表現とは異なる特殊色ならではの新たな発見・発想を促し、紙メディアによるコミュニケーションに新たな価値をもたらすことを期待している」(後藤氏)