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「印刷」という枠組みの中で、新たなビジネスモデルとして登場してから10年以上が経過した「印刷通販」。一般コンシューマを中心に、ユーザーニーズを的確に捉えることで、需要を取り込み、また新たな需要を創出しながら印刷通販市場は急成長を遂げ、需要全体の先行きが不透明な印刷ビジネスにおいて、営業価値を変革する新たなビジネスモデルとして注目されている。一方、昨今ではプロの印刷会社が自社のアウトソーシング先として印刷通販を利用する例も増えている。本紙が昨年Web上で行ったアンケート調査によると、印刷業による利用率はすでに50.3%にのぼり、その数はさらなる高まりが予測される。これらの需要は印刷通販ビジネスにとって効率的かつ大きな市場であることは言うまでもない。  そこで今回、印刷通販サービスを「緻密なノウハウの蓄積によって究極の効率化を追求するビジネスモデル」として、また「プロの需要・要求を満たすアウトソーシングサービス」として特集し、「印刷通販の今」に迫ってみる。

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ウエーブ:量販型印刷通販サイト
設立30周年を迎え、さらなる飛躍へ

瞬発力と高品質で信頼 〜 様々なキャンペーン、新サービスを展開

印刷ジャーナル 2015年7月15日号掲載

白子 社長 ​ 印刷通販の「WAVE」を運営する(株)ウエーブ(白子善久社長)は、今年5月2日に設立30周年を迎えた。当時30歳だった白子社長が昭和60年、ソフトウェア開発業としてたった1人で立ち上げた同社は、平成8年より通販による印刷業を開始。平成12年には日本の印刷業界として初めてのオンラインサービスを開始した。以降、インターネットの普及にともない年々増収増益を続け、今や売上高27億円超、従業員330名、ユーザー数14万件の規模にまで成長している。30周年の今年は年初から様々な記念キャンペーンを展開しており、これによりさらなる受注増加とユーザー数の拡大を図り、次の目標に向かって勢いを加速させる。


 同社は昭和60年5月2日、製版関係の色分解に用いるスキャナの商社で約7年間にわたり技術者をしていた白子社長が、ソフトウェア開発や機械製造を手掛ける企業として立ち上げた。以降、ロシア語ワープロの外字登録、写真の切り抜きをする装置の開発、オフコンのデータをファックスで送信するためのソフトウェアの開発などを手掛けてきた。
 平成8年3月、3台のオンデマンド印刷機を購入して、通販による印刷業を開始した。当時のオンデマンド印刷機は品質も良くなく、また1枚あたりの単価も高かったという。そこでA3縦通しのリョービ4色オフセット印刷機を購入し、日本初のギャンギングを導入した。当時について白子社長は「技術出身で営業が得意でなかったため、はじめから通販のスタイルでやる予定だった。近所にチラシを入れ、ハガキくらいのフライヤーやチケット、A4パンフなどの小物を中心に取り扱っていた。商業印刷で、値段をオープンにした印刷会社は当時では当社だけだった」と振り返る。
 この頃はインターネットも普及していなかったため、モデムで顧客とやり取りしていたが、インターネットが普及しはじめた平成12年、同社は日本の印刷業界として初めてのオンラインサービスを開始した。
 「当時は他の印刷会社よりもはるかに安い値段でやっていたが、それでも値段がとれた時代だった。当社では値段をぽっきり価格にして、データチェックも修正も無料でやっていた。また、当時は一般の印刷会社が『1,000枚も5,000枚も値段は変わらない』と押し売りする時代だったが、当社では必要な部数のみの小ロットに対応。それにより、少しずつ、良いお客様が増えていった」(白子社長)

配送までを含めたトータルコストで競争力

http://www.wave-inc.co.jp/
​ 同社は現在、平均応答時間9秒というコールセンター(平日:午前8時30分〜午前0時/土日祝:午前8時30分〜午後6時)をはじめ、ユーザー満足度の高いサービスの提供と安定の高品質、瞬発力のある生産キャパでユーザーからの信頼を獲得している。会員数は14万件を越しており、今年中には15万件に到達する見込み。また、1ヵ月に1回以上の利用があるユーザーからの受注が9割を占めており、そのリピート率の高さからも信頼度の高さが伺える。
 「昨今は、『品質が安定しているので校正不要でお任せします』といった仕事も増えてくるなど、当社の品質への信頼が拡大していることを実感している。また最近では、有名人を登用した印刷物など何回も校正のやり取りが必要そうな印刷物でさえ、校正なしの注文が当たり前になりつつある」(白子社長)
 滋賀と仙台にある2ヵ所の生産拠点には、印刷から後加工までの豊富な設備を有しており、白子社長は「当社では昨年3月の増税前の駆け込み需要時にも、受注制限をほぼかけることなく対応することができた。これによりユーザーからの信頼が大きく広がり、超大手企業の新規ユーザーとの新たな取引も始まった」と自社の瞬発力ある生産キャパに自信を持つ。
 その瞬発力の高さに加え、同社は全国複数箇所への分納にも対応しており、配送先を数千ヵ所に分けることができる。このため、最近の傾向として数十万部以上の大ロットチラシを1ヵ所への配送ではなく、大量箇所へ分納する受注が増えているようだ。
 白子社長は「印刷料金だけでは大ロットチラシを得意とする印刷会社との競争に勝てないが、宅配料金までを含めたトータルコストで比べてみて欲しい」と話す。同社では毎日宅配便を使用するため、配送料が安くなるという。また、分納作業も短納期でこなす。このため、大ロットに限らず、大量の配送先に素早く分納したい注文の場合は印刷料金だけでなく、トータルコストで比較してみてもいいだろう。

様々な「30周年記念キャンペーン」を展開

 設立30周年を迎えた同社は年始より、様々なキャンペーンを展開している。白子社長は「今年はできるだけ多くのキャンペーンを展開し、受注増加とユーザー数の拡大を図るとともに、当社の製品を数多くのユーザーに知ってもらいたい」とキャンペーン開催の目的について話している。
 なお、キャンペーンの一例としては、7月30日までの期間、高精細オフセット印刷のA4チラシが1,000部/2,100円など、小ロットから中ロットを中心に大幅に値下げしているほか、8月31日正午まで、「加工基本料金半額キャンペーン」を展開している。数多くの加工オプションの中から、人気のある6種の加工において加工基本料金を半額で提供する。現在、チラシなどのオフセット印刷料金が最大67%オフとなる設立30周年記念キャンペーンを開催中のため、印刷料金も加工料金もリーズナブルに注文できる。
 このほか、期間を限定しない新サービスとして、顧客から支給された用紙(印刷物や白紙)に加工を施して納品する「加工専門サービス」を開始した。第1弾として「箔押し加工」の受注をスタート。11色の箔素材から1色を選び、最大1250平方センチメートルまでの範囲に加工を施すことができる。
 また、外国人に向けて効果的な印刷物を作りたいというニーズに対応する「多言語デザインサービス」では、各国の嗜好に詳しい同社の外国人スタッフがデザインを提案し、納品までをトータルサポートする。このほか夏の季節商品として、「販促うちわ」の取り扱いも開始している。
滋賀事業所・工場

将来的にはグローバル展開を目標に

 白子社長はこの30年間を振り返り、「本当にたくさんのお客様に助けられながら、ここまで成長することができた」と感謝の思いを語る。
 しかし同社は現状に甘んじることなく、さらなる発展を目指していく方針で、現在の滋賀事業所、仙台事業所に加えて新たな生産拠点を数年のうちには竣工する予定。さらに国内マーケットが縮小する中、将来的なグローバル展開を目指し、外国人および語学の堪能な人材を積極的に採用していくなど、段階的に準備を進めていく。