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特集:進化する製本・後加工 2013

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オービービー、小野工場に芳野製 最新型無線ライン導入

10数年ぶりの国産メーカー導入〜「使いやすさ」を最大評価

印刷ジャーナル 2013年2月25日号掲載

小川社長
​ 大手カタログ通販会社の発行する印刷物の製本、封入作業、発送業務からマーケティングまでを行う(株)オービービー(本社/京都市右京区西京極南庄境町2番地、小川浩社長)は、昨年の夏に小野工場(兵庫県小野市匠台58番地)に芳野マシナリー(株)の最新型無線ラインを導入し、生産性と品質、作業効率を大幅に向上させた。ここ10数年の設備投資は海外のメーカーのみだったという同社が国産メーカーを選択した理由とは--。その魅力と同社の展開について紹介する。


 同社は大正10年3月に小川製本所として創業。製本業界トップクラスの設備を有しながらも、約10年前まで事業内容は印刷会社からの受注を中心とする一般的な製本会社であった。
 そんな同社が転機を迎えたのは平成13年7月、小川浩社長が3代目に就任した頃からだ。従来の印刷会社からの受注を中心とした体質からの脱却を図り、大手カタログ通販会社をメイン顧客とする体質へと大きく方向転換したのである。
 その翌年9月には現在の(株)オービービーに社名変更。さらに翌々年3月には顧客データベースをもとに一人一人異なるカタログやチラシを自動的に選択し、封入していく「カタログ選択丁合システム」の特許を取得。現在は売上の95%はカタログ通販会社からの受注で占めており、「カタログ通販会社の事業効率化と利益拡大に貢献する」をモットーに、もはや製本・封入会社の領域を超え、マーケティング・流通までを支援するカタログ通販会社のパートナー企業として事業を展開している。
西日本最大級の製本・封入設備を誇る小野工場
​ 西日本最大級の生産量と設備を誇る小野工場は、約7万平米の土地に約2万9,000平米の工場を建設。封入・封緘システムなどの発送ラインに加えて、現在11台の無線ラインが稼働している。
 昨年の夏、その最新ラインとして小野工場の戦列に加わったのが、最新型の芳野マシナリー製 高速無線ライン(143型-30駒 高速ロータリー丁合機+最新型VEGA-26C 高速無線綴機+最新型DENEB三方断裁機)だ。
 「当社の仕事はページ数・ロットともに大量のものが多いため、設備投資の際はスピードと耐久性を最重要視して機種選択を行ってきた。その結果、ここ10数年は海外のメーカーのみ導入していたが、芳野マシナリーが昨年に発表した最新型の無線ラインは、生産性をはじめ各機能が大幅に向上していた。当社は芳野マシナリーの古い機種を昔から使用しているのだが、芳野の機械は使いやすさという点で現場からは一番の支持を得ていた。また、新機種の性能への期待感もあり、10数年ぶりの国内メーカーの導入となった」(瀬戸修 取締役生産管理部長兼技術部長)
高速無線機VEGAの前でオペレーターの松本氏(左)と黒崎氏
​ 同社が小野工場に導入した高速ロータリー丁合機「143型-30駒」は、毎時1万5,000回転の高生産性を誇る。そのスピードもさることながら、丁合の空振りや2枚取りが生じた際にも、機械を停止することなく自動排出する「キックオフ」の機能を搭載しているため、その生産性を最大限に発揮できる丁合機となっている。
 半年間にわたって使用した実感について、小野工場東工場長補佐の吉田勲係長は「キックオフはこれまでの芳野の丁合機にはなかった新しい機能。停止することがないので、生産性が飛躍的に向上した」と話しており、現場からの評価も高い。また30駒全てに乱丁検査カメラ「トライデント」が搭載されており、「芳野のカメラは今回初で設置した。他社製のカメラと比べたい」と瀬戸氏。このコメントからは、芳野マシナリーの技術革新への期待が感じられる。
 また、最新型の高速無線綴機「VEGA-26C」は、毎時1万2,000回転の実質最高生産速度を誇る高速機だ。特に生産性が上がりやすい素材を選んでVEGAで生産するようにしているようだが、その生産性はもちろん、操作性に優れていることを吉田氏は最大限に評価している。
自動排出機能を搭載した143型-30駒高速ロータリー丁合機
​ 「表紙のガイド幅からプレスに至るまで、これまでの芳野の無線機は手動で調整する必要があったが、VEGAはタッチパネルに数値を入力すればその後の微調整もほとんど不要。海外メーカーのバインダーは、性能は優れているが操作が難しく覚えにくいという一面がある。その点、芳野の機械は簡単操作で覚えやすく、特に新人オペレーターには最高の機械と言える」(吉田氏)
 新台を機種選択する際、現場では誰もが「芳野を入れて欲しい」と言ったという。その最大の理由は操作性の良さにあったようだ。
 さらに吉田氏は、「生産性の高さ、セット替えの早さ、本の形、品質面の全てで申し分ない」と百点満点の評価をコメントしてくれた。「VEGA」が今後の小野工場にとって大きな役割を果たしていくことは間違いないと言って良いだろう。

本年1月に東京営業所を開設。数年後を目処に埼玉工場竣工へ

 西日本の地盤を固めた同社は本年、いよいよ関東への本格進出を目指す。その第1弾として、本年1月に東京営業所(東京都千代田区内神田3-4-12トーハン第7ビル3F)を開設した。まずは取引先を開拓したのち、数年後に予定している埼玉工場(仮称:建設予定地:埼玉県深谷市「春日丘工業団地」内 敷地面積 約2,500坪)の竣工に向けて本格的な準備を進めていく。
 埼玉工場が竣工すれば、久世工場、小野工場に次いで3つ目の工場の誕生となり、関東進出は同社が現在、最も注力している事業である。
 まさにカタログ通販会社のパートナー企業として先駆を走る同社であるが、最後に、同社はCSR活動としても先進的な取り組みを行っているので紹介したい。
 同社の小野工場では約4年前より、兵庫県加古川市の「加古川刑務所」(交通刑務所)の受刑者を送迎し、受刑者と一般作業者が一緒に作業できる環境を提供している。これは平成6年に小野工場を竣工した同社が、社会貢献活動の一環として始めたCSR活動。これまでに延人数で約5,000名を受け入れ、その先進的な取り組みは地元新聞などにも取り上げられた。
 「刑務所の外での作業環境を提供する企業は当社が初めてだったようだ。昨年には、大阪警察管区からも表彰を受けた。今後もこのようなCSR活動を続け、社会のお役に立てる企業を目指したい」(山本伸一取締役総務部長)