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トップ > 特集 > 成長市場を追う:印刷通販特集2012:BEST PRINT、資本金12万円からのスタート

印刷の新たなビジネスモデルとして急成長を遂げた印刷通販。その市場特性と今後は?

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BEST PRINT、資本金12万円からのスタート

「請求書払い」で法人から支持

印刷ジャーナル 2012年2月5日号掲載

田仲社長
​ 「BEST PRINT(ベストプリント)」は、田仲達郎社長が資本金12万円で立ち上げた印刷会社・(株)五色が運営する印刷通販サイト。2010年に大手印刷通販会社と業務提携によって誕生した、この印刷通販サイトは開設以来、オフセットからオンデマンド印刷、各種後加工などのサービス提供を展開し、印刷通販市場で急成長を遂げている。
 同社・田仲社長は、流通業界から広告代理店業を経て印刷会社として2004年に独立、といった変わった経歴の持ち主。では、なぜ田仲社長は「印刷」という道を選んだのか。その背景には、田仲社長が流通業に従事していた頃の、あるエピソードが大きなきっかけであった。
 「当時は店舗のチラシ内容などを決定する販売主任を務めていた。あるとき店舗内で高齢の顧客が、そのチラシを見ながら商品を探している光景を目にした。普段は、あまり意識していなかった印刷物が年齢や性別を問わず、人に感動と利便性を提供するものだと感銘を受けた」(田仲社長)。

たった1人の印刷営業
 
 設立当初、いわゆる「飛び込み営業」による印刷ビジネスを展開。田仲社長は「1年やって無理ならやめるつもりで印刷会社を立ち上げた。結果として半年で300万円が貯まったので有限会社として組織基盤を整えることができた」と当時を振り返る。
 しかし田仲社長がたったひとりで孤軍奮闘するも事業自体は伸び悩みの状態であった。また田仲社長が「資本金12万円」と語るように印刷機などの生産設備を持たない同社にとって、営業活動だけが、売上につながる唯一の業務である。2006年には、ネット受注という印刷通販への取り組みを開始し、人手不足解消を試みたが、期待したほどの成果を残すことはできなかった。「もうここまで」と田仲社長が諦めかけた時、「大手印刷通販会社のような仕組みはできないの」という田仲社長夫人の一言で再び、「印刷通販ビジネス」へのチャレンジを開始することとなる。

大手印刷通販会社と提携
 
 田仲社長は、印刷業界は販売代理店という方式でビジネス展開しているケースが少ないことに着目し、すぐに企画書を作成して大手印刷通販会社に提出。もちろん、すぐに採用されることはなかったが田仲社長は何度となく足を運び、その印刷通販にかける熱意を訴え続けた。そして、その努力が実を結び販売代理店として認められ2010年2月、印刷通販サイト「BEST PRINT」を開設した。

登録会員9割が法人会員
 
 同社の大きな特徴として田仲社長は「請求書払い」を印刷通販会社として開始したことを挙げる。
 「従来の印刷通販では請求書払いが行われていないことから、請求書払いへのニーズが高いことを営業時代に確認していた。印刷通販で後発企業の当社がこの市場に進出するためには、差別化戦略が必要であり、その手段としてBEST PRINTは、開設当初から『請求書払いOK』を全面に打ち出した」(田仲社長)。
 この方策は、これまで印刷通販を利用したくても「前払いシステム」という問題から発注を見送ってきた顧客層に絶大な支持を得ることとなる。さらに担当者レベルで決済できるように審査を簡素化し、煩雑な手続きを省いたことも大きな要因となった。現在では同社・会員の構成比率は9割が法人会員、かつ上場企業も数多く登録している。
 現在では、コニカミノルタ社製カラーPOD機を導入し、オンデマンド印刷の自社生産を開始するなど、開設から2年という短期間で印刷通販市場で急成長を遂げた田仲社長は、今後の展開として海外展開を視野に入れた計画を予定しているという。