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トップ > 特集 > 印刷の営業価値を変革する「印刷通販」:グラフィック ”低価格”以外でNO.1へ〜「付加価値」ある印刷通販サービス提供

 従来の印刷営業スタイルが厳しい経営環境にある中、急激に市場規模を拡大し、業界の注目を集ている「印刷通販」。特にここ数年の伸長は目覚ましく、サイト数の増加とともに市場規模は現在500億に達すると見られている。印刷通販は、これまでの印刷ビジネスの営業価値を変革する新たなビジネスモデルとして注目される一方、従来のスタイルと比べて「低価格」を実現するため、印刷通販をアウトソーシング先として利用する印刷会社が増えていくことは間違いない。そこで今回、昨今の印刷業界から注目を集める「印刷通販」を特集した。

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グラフィック、"低価格"以外でNO.1へ
「付加価値」ある印刷通販サービス提供 〜既成概念にとらわれない取り組みで先駆

印刷ジャーナル 2011年1月1日号掲載

西野能央社長
​ 登録会員数8万を誇る印刷通販の大手「印刷の通販 グラフィック」を運営する(株)グラフィック(本社/京都市伏見区下鳥羽東芦川町33、西野能央社長)。平成元年に創立した同社は、平成12年に印刷通販サイトを開設。インターネットの普及にともない、売上・事業規模を飛躍的に拡大させ、今や従業員650名の企業に成長した。現在は「低価格」を売りにするだけの印刷通販サイトではなく、「付加価値」ある印刷通販サービスの提供、デザイナーなどユーザー業界に関連するイベントへの協賛など、従来の印刷通販の既成概念に捉わらない取り組みで印刷通販業界の先駆を走っている。
 
24時間以内のクイックレスポンス
 
 従来の印刷営業スタイルが厳しい経営環境にある中、市場規模を飛躍的に拡大し、業界の新たなビジネスモデルとして注目されている「印刷通販」。DTP、インターネットの普及にともない、利用者は急増している。
 8万件の登録会員数を誇る「印刷の通販 グラフィック」には、電話だけで毎日1000件を超す問い合わせが入るが、同社では全国50名のコールスタッフで、これらの電話やメールの問い合わせに対応しており、それに対するキャパシティの高さには自信を持っているという。
 「大手の印刷通販サービスの中には、電話がつながらない、メールの返信が遅いなどの不満の声をユーザーから聞くことがある。印刷通販はユーザーと対面しないビジネスだけに、クイックレスポンスは顧客に安心感を与える上でも重要な条件。当社では50名のコールスタッフを配置し、24時間体制で問い合わせに対応しており、電話においてお客様を待たせないことはもちろん、入稿データのチェックも24時間以内にレスポンスするよう努めており、初めてのお客様でも安心して利用できるサービスの運営を心掛けている」(印刷通販課 中野英治課長)
 8万件のユーザーの半分は印刷会社や一般法人、半分はイラストレーター、デザイナーなど個人ユーザーとなっているが「当印刷通販サイトのリピート率はかなり多く、新規の会員登録も多い」と中野氏。短納期のニーズがますます進む中、電話がつながらなければ別のサイトに問い合わせようと考えるのがユーザー心理。そう考えると、同社に新規会員登録が多いことも頷ける。
 
「高品質」と「付加価値」を印刷通販で提供

京都市伏見区の本社外観
​ 特にデザイナーやイラストレーターから高く評価されているという「印刷の通販 グラフィック」。その理由のひとつとして、同サイトでは安売りのイメージが強い印刷通販の既成概念をくつがえす最高品質のプレミアム印刷として「グラフィックビジョンリアル」など「高品質」な商材を提供していることが挙げられる。
 同商材は、280線の高精細印刷と最適な高濃度、広色域を実現することで、デザイナーの高品質のニーズに対応しているものである。
 「280線の高精細印刷のため、モアレはほとんどない。特に名刺やポストカードなどのカード系は、ポスターなどと違い近くで見るものなので、視力の良い人なら網点が目立ってしまう。その問題を解決したのがこのサービス」(中野氏)
 さらに、「高品質」に加えてユーザーへの「付加価値」を提供しているのも同印刷通販サイトの特長と言えるだろう。
 「例えば、当サイトのコアユーザーであるデザイナー業界には『@クリエイターズ』という、無料で利用できるポータルサイトを開設し運営している。その他にも、関連するイベントに協賛している。また、クリエイターの作品を年賀状仕様にして、箔や浮き出し、トムソンなどの加工を加えて配布するなど、ユーザーのビジネス拡大に協力する取り組みを展開している」(西野社長)
 ユーザーとのコミュニケーションを大切にしながらサイトを運営してきたことが、同印刷通販サイトを今日まで成長させてきた秘訣と言っても過言ではない。
 
ワントゥワンのニーズにきめ細かに対応
 
 10年前の開設当初から飛躍的に会員数と売上を伸ばし続けている同社。しかし競争が激化する近年、同社が他の印刷通販サイトとの差別化を図るために取り組んでいるのが「ワントゥワンサービス」の展開である。
 「印刷通販業界もすでに安さだけで競う時代ではない。当社のユーザーの中でも『これ以上は安くしなくていいから、その代わりにサービス面を充実させて欲しい』というニーズも多くある」(西野社長)
 そんなユーザーニーズに応え、オプションとして展開してデザイナーから好評を得ているサービスのひとつに「スピードデータチェック」がある。
 「印刷通販を利用する場合、デザイナーはデータを印刷通販サイトに入稿して仕事を終えるわけだが、急ぎの仕事の場合、会社を出た後にデータに不具合が発生するとまた会社に戻らなければならなくなってしまう。そこで、データチェックのみを他より優先させて行うサービスがデザイン現場から好評を得ている。今後もユーザーのかゆいところに手の届くサービスを展開していきたい」(中野氏)
 同社では、全てのユーザーが安心して心地よく利用できるサービスを心掛けた印刷通販サイトを今後も展開していく。
 
「低価格」以外で印刷通販ナンバーワンへ
 
 厳しい経営環境が続く中、「低価格」が印刷通販の魅力であることは間違いない。しかし同サイトにおいて「価格」は第一優先ではない。西野社長は、品質や付加価値などあくまでも他のサービスのレベルを落とさない範囲でコスト面も還元していく考えである。
 「当社の価格も従来の印刷価格からすると確かに破壊的な価格であるが、これは従来の方式とはやり方が全く違うからであり、低価格でも利益が出るから安くしているわけである。当社では、はじめに価格ありきではなく、あくまでも品質やサービスを落とさずにできる範囲で価格サービスを行い、多品種小ロットや納期など、価格以外での印刷通販ナンバーワンを目指していく」(西野社長)
 今後もひとつひとつの商材をブラッシュアップしながら、バラエティに富んだ印刷通販サイトを構築し、将来的には高品質を求めるユーザーに向け、お手軽に色校正も行えるような印刷通販システムの開発にも着手していきたいと語る西野社長。「低価格」という従来の印刷通販の既成概念をくつがえす挑戦を続ける同サイトの今後に注目したい。