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 従来の印刷営業スタイルが厳しい経営環境にある中、急激に市場規模を拡大し、業界の注目を集ている「印刷通販」。特にここ数年の伸長は目覚ましく、サイト数の増加とともに市場規模は現在500億に達すると見られている。印刷通販は、これまでの印刷ビジネスの営業価値を変革する新たなビジネスモデルとして注目される一方、従来のスタイルと比べて「低価格」を実現するため、印刷通販をアウトソーシング先として利用する印刷会社が増えていくことは間違いない。そこで今回、昨今の印刷業界から注目を集める「印刷通販」を特集した。

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印刷の営業価値を変革する「印刷通販」
寄稿 ~船井総研 経営コンサルタント 岩邊 久幸 氏~

印刷ジャーナル 2011年1月1日号掲載

岩邊 久幸 氏
なぜ、今印刷通販なのか?

(1)売上ダウン要因の変化
 2008年9月のリーマンショック以降、印刷会社の経営者様からの「売上アップ」のご相談が絶えません。以前からも多くのご相談をいただいておりましたが、さらに増えたような感覚を覚えます。
 色々とご相談いただいた各社の分析を行っていると、ある1つのことに気づきました。それは、「売上ダウン要因の変化」です。"売上=客数×客単価"で表現されますが、リーマンショック以前は、"客数減"による売上ダウンが多かったように記憶しています。しかし、リーマンショック以降は、"客単価減"による売上ダウンが非常に多くなっているようです。
 既存顧客1社当たりの年間受注金額が減少又は0円になっていたり、新規の受注金額が数万円と非常に小さいという状況です。また、大手企業はどんどんと内製化を進め、印刷会社への発注を減らしている状況もあるようです。
(2)従来の印刷会社の社長の悩み
 ご支援先やご相談いただく印刷会社様の悩みは次のようなものです。
▽企業や団体などの経費削減の影響を受けている
 ・既存顧客1社あたりの受注額が減少or受注額が0円になる
 ・新規顧客の獲得が以前と比べてできない
 ・新規顧客から受注できたとしても、受注金額が非常に小さい
 ・顧客の内製化が進み、特に大手企業からの受注金額が減少している
▽印刷通販が一般的になり、ネットやカタログへのシフトによる受注額減
 ・営業マンレス・DTPコスト不要によるローコストとハードルの低さというビジネスモデルの印刷通販に、クライアントが流れている
 ・相見積り先が印刷通販であり、その価格に合わさざるを得ない。
▽営業マンの生産性の低下
 ・営業マンのヤル気の低下・モチベーションの低下
 ・中堅・ベテラン社員が現状を理解できず、若手社員を指導できない
 ・業界の体質として、御用聞きスタイルであり、提案営業ができない
 ・営業マンが経験と勘に依存しているため、社内の営業の仕組みが確立できない
 ポイントは大きく2つです。1つ目は、印刷通販という営業レス・DTPレスによる低価格印刷に対する対策。そして、表現媒体が紙だけでなく、WEBやモバイル等多様化したことで、競合企業が従来の印刷会社だけでなく、IT企業や制作会社といった所謂"黒船"対策です。
 今回は、前記のことも踏まえ、改めて印刷通販というビジネスモデルに焦点を当てさせていただきます。
(3)なぜ、今印刷通販なのか?
 改めて、なぜ今印刷通販なんでしょうか?まず最初に、印刷通販とはインターネット上で印刷に使用できるデータを顧客に送信してもらい、それを印刷して納品するという印刷サービスです。低価格化のポイントは、営業レス(見積り無し・価格表示)、DTPレス、大量受注による刷版コスト削減の3点です。
 印刷通販が日本で初めて登場したのが1999年〜2000年です。そのときは、そのようなビジネスモデル自体、全く認知度が無かったですし、価格は安いけれどもITバブルの真っ只中です。安いものは、品質が悪いのでは?という消費者の不安もあり、注目を浴びることはありませんでした。しかし、2006年くらいから業界内で噂が広がり、参入する企業が増加します。そして、不景気に入り、ブレイクします。
 なぜ、今印刷通販が伸びているのでしょうか?根本的には、「時流の変化」といえます。「時流」=「お客様のニーズ」と定義することも可能です。
 1991年から2000年くらいまで、日本の経済は成長していきましたが、1991年から日本の経済変革が始まり2000年以降は経済縮小傾向になっています。印刷業界の市場規模も縮小傾向にあります。人口減少が加速し、リーマンショック以後や、今回の円高で日本企業の海外進出が加速していくことでしょう。あわせて、一般消費者の消費嗜好の変化が起こり、我々のクライアントである企業も変化していっています。
・大ロット→小ロット
・規模→効果
・低価格又は高付加価値
 
図1
(4)印刷業界だけではない!異業種でも同じことが起こっている!
▽消費動向の時流:バリューとワース
 1つ目は、バリュー。バリューとは、一言でいうと「お値打ち」です。安くて、品質の良いサービスの提供です。安かろう、悪かろうではダメです。なぜなら、日本人は目が肥えており、品質にうるさいからです。しかし、これを実行することは、非常に難しいです。価格は下げても良いが、品質は下げてはいけないのです。価格を下げることは簡単です。しかし、すぐに利益が出なくなります。価格を下げても利益が出る仕組みを作らなければいけません。各市場の中で、大手と言われている企業は、ここに対応できなければ、厳しい状況になってきています。
 消費者のメインボリュームが、年収400〜600万円世帯から300万円世帯に移行しています。大手企業は、ターゲットをメインボリュームに合わせないと、売上の維持が難しいのです。ですから、この市場に対して、どのような戦略をとるのかを考えないといけません。
 逆に、中小企業はここに対応できなくても、ワースという考え方があります。ワースは、簡単に言えば、「こだわり」です。「ニッチなニーズ」です。特殊技術を持っている美容室へ、大阪の女性はわざわざ東京に1泊2日で通うそうです。客単価が3〜5万円で、とにかくお客様に感動を与えるサービスで有名なレストランがあります。ここは、相変わらず予約をしなければ食事をすることはできません。こだわりがある企業・店・商品には、消費者はいくらでも高いお金を支払います。
 バリュー戦略は、例えば、ファスト○○と言われている業態です。ファストフードのマクドナルドや、ファストファッションのユニクロ、フォーエバー21、H&Mと言われる企業に代表されます。デザインは、悪くなく、品質も悪くない。でも安いという業態がとても業績が良いのです。印刷業界でいえば、印刷通販がその好事例でしょう。印刷品質は良く、価格が安い。都心では50億円以上、地方では30億円以上の印刷会社様は、商圏内で1番店規模です。ですから、横綱相撲を取らなくてはなりません。ですから、この業態への参入は必要不可欠なように感じます。
 逆に、ワース戦略は高付加価値戦略です。スマート○○という業態・商品が代表格です。高機能携帯端末のスマートフォンといったものです。2番店以下の企業は、薄利多売で、設備が充実している大手企業の印刷通販には価格で負けてしまいます。ですから、超高付加価値高価格商品で1点突破していくことが良いように感じています。
▽産業動向の時流:上グレードと下グレード
 産業界においてはどうでしょうか?これは産業構造で見ないといけません。表現方法が異なります。上グレードと下グレードです。下グレードが悪いというわけではありません。
 産業には、戦略立案、リサーチ、商品開発、プロモーション、営業、アフターフォローという流れがあるように、この流れの中のどこにポジショニングをするのかということがポイントです。
 上グレードにおいては、産業構造の中で、より付加価値を付けて、上へ上へ向かっていく企業が続出しています。この工程におけるキーワードは、「コンサルタント化」、「情報提供」です。私のご支援先においても、コンサルティング事業部を立ち上げ、業績が急回復している企業様がございます。
 我々の業界に近い業種で、システム業界や、広告業界も同じ動きをとっています。システム業界は、今とても厳しい業界です。売上が10〜20%前年比ダウンという企業も続出しています。この不況下、システム投資をする余裕がどの企業もないからです。我々、印刷業界や、広告業界に非常に類似しています。システム業界における上グレードにポジショニングしている企業はコンサルティング領域に近づいています。SIヤーといわれるゼネコンのようなポジションの企業は、コンサルティング会社を名乗っています。グループ会社ではコンサルティング会社を立ち上げる企業も出てきました。なぜなら、コンサルティング会社は戦略から入ります。戦略から入るということは、会社の方向性等を全て決定します。その中で、システムの位置づけを決定し、販売しようということです。広告業界最大手の企業も、先日経営コンサルティング会社を立ち上げました。より上グレードに入っていかないと、広告や販促物、システムは販売できないという判断です。上グレードをとってしまえば、取引先も浮気ができない状況になります。ですから、私のご支援先様には、販売促進支援業というポジショニングを確立してもらう提案を一部では行っています。
 一方で、下グレードは下請け特化型です。印刷通販のように、営業コストは一切かけずに、ただ印刷をするだけという、作業をこなすのみという業態です。WEB制作の業界やデザインの業界にもそのような企業が登場してきました。コーディングというHTML化する作業があるのですが、1P○○円という超低単価な価格設定です。その代わり、デザイン等は全て、自社で行ってくださいというスタンスです。
大切なことは、「どちらを選ぶのか」ということです。中途半端に、うちは何でもできます!的な企業は、苦戦しているということが事実です。不景気は、中間層と取引していた企業は、必ずどちらかに動きます。より付加価値が強い企業と取引をするか、より価格が安い企業と取引をするかです。企業として、どんなものでも良いというスタンスでいると、余計に業績が悪化してしまうので、取引先はどちらかに動くのです。ですから、中間層に位置している企業は、客数が減り、苦戦するのです。

印刷通販市場はどうなるのか

(1)印刷通販サイトは、今何サイトあるのか?
 先日、グーグルとヤフーで「印刷 通販」と検索し、250サイトずつ見ていきました。その中で、船井総研の印刷通販サイトの基準を満たしているサイトは全部で207サイトでした。インターネット上は無限ですから、拾え切れないサイトもありますが、最低でも200サイトはあるということです。また、前記の検索キーワードで各サイト上位10P以内に出現する印刷通販サイトのcopyrightから設立年度を推計すると、図2のようなグラフになります。ちなみに、copyright年度が未記載のサイトについては設立数カウントから省いています。
 
図2
 図3を見ると、1999年から2006年までは、毎年2〜4サイトの増加数なのですが、2007年を境に2010年まで毎年14〜20サイト増加していることが分かります。ちなみに、弊社においても印刷通販参入のご支援を以前は行っておりましたが、ご相談が増えたのが、2006年だったと記憶しています。ですから、2007年から印刷通販ビジネスが成長期に入ったと予測することができます。
(2)印刷通販ビジネスの市場規模はいくらまで行くのか?
 現在、印刷通販ビジネスの市場規模は、500億前後といわれています。現状ももちろん大切なのですが、印刷業界でビジネスをしていく上で、大切なことはこれから印刷通販ビジネスはどのくらい成長するのかということです。
 結論から申し上げますと、あくまでも予想ですが、私は印刷通販の市場規模は、おそらく2000億〜3000億まで成長すると予測しています。現状印刷業界は約6兆円の市場規模だと言われています。印刷通販市場は、現状中堅以下がメインプレーヤーであり、商業印刷がメインです。印刷業界大手2社の印刷業売り上げは、約1.7兆です。そして、つまり、約4.3兆円の市場で我々中小企業はシェアの獲得競争をしていることになります。そして、そのうち商業印刷は約46%と推定すると、約2兆円の市場になります。商売は、上グレード・中グレード・下グレードで分かれると前述しましたが、20:60:20の法則を当てはめると、下グレードつまり印刷通販市場が約4000億円となります。おそらく、今後印刷業界の市場は、メディアの多様化により、減少傾向になるだろうことを織り込むと最低でも2000〜3000億円までは成長するだろうという予測です。
(3)ライフサイクルから、今後の印刷通販を読み解く
 ライフサイクルというグラフがあります。ライフサイクルとは、ビジネスモデルや商品の栄枯盛衰を表すグラフです。人間が赤ん坊で生まれて、お年寄りになってお亡くなりになるように、ビジネスや商品にも人生があるわけです。
 ライフサイクルを上手に活用すると、今後自社が何をしなければいけないかが分かるようになります。
 なぜなら、ライフサイクル上どこに位置しているかによって、活性化の手法が異なるからです。
 ここで大切なことは、ライフサイクルの見方です。図3のように、ビジネス側面と消費者側面と2種類の観点から見ないといけません。なぜなら、ビジネスが先行してサービスを提供し、消費者は後からサービスを享受しますので、どうしてもタイムラグが生じるのです。ですから、どのビジネスにおいてもそうですが、テレビ等で新しいビジネスが紹介されていて、そのビジネスに参入すれば最大限の利益を獲得することができるかというと、確率は低くなることでしょう。
図3
 印刷通販市場は、現在成長期にあると予測できます。ライフサイクルを上手に活用すると、今後自社が何をしなければいけないかが分かるようになります。なぜなら、ライフサイクル上どこに位置しているかによって、活性化の手法が異なるからです。
 これから実行しなければいけないことは、「便利さ(サービス)一番」戦略を念頭に置きながら、「価格一番」戦略を取るということです。
 現在、成長期にある印刷通販市場は、参入企業が多いということが特徴です。先行している企業は価格戦略をしかけ、価格がどんどん下がっていっているのが、現状です。自社が最も安い価格をとっても、先行している大手印刷通販市場が何日後かには、その価格の下をくぐる価格を提示してくるという現象を今印刷通販サイトを運営されている企業様の多くが経験されているのではないでしょうか?
 なぜ、成長期の戦略が品揃え一番に対して、価格競争が起こっているかというと、先行している大手は、一歩先の戦略をとることで、市場を一歩前に推し進めているからです。ですから、私の予測では2014年には、価格競争は終了するのではないかと予想しています。つまり、現在印刷通販でポジションを確立させようと思うと、先進企業は、規模に応じて全ての商材で最も安い価格を取りにいき、総合印刷通販企業としてのポジショニングを獲得しなければいけません。そして、後発参入企業は、最も得意な商材で価格一番を確立することに専念し、「○○分野(○○という商材)では最も安い」というポジションを確立しなければいけません。
 そして、今後大手印刷通販企業は、便利さやサービスの部分を強化してくると予測しています。ですから、私のご支援先では自社の得意商材の価格一番を念頭に置きながら、便利さやサービス力の強化に注力し始めており、大手印刷通販企業と共存していくことを考えております。

印刷通販ビジネスのポイント

(1)まず最初に知っておかなければいけないこと
 印刷通販ビジネスを展開されている企業様でご相談をいただくケースとして多いのは、以下の点です。
 ・サイトをオープンしたが、なかなか受注件数が増えない
 ・アクセス数が増えない
 ・競合の単価がどんどん下落するため、価格競争についていけない
 ・どういう店舗が受注率や見積り率を上げられるか分からない
 ・これから印刷通販にどれくらい力を入れればよいのか分からない
 ・今まで、対面商売で商売を行ってきたが、未だに非対面で受注できることが信じられない
 皆様は、いかがでしょうか?私は当然だと思います。なぜなら、今まで印刷会社様は営業対面商売を行ってきました。しかし、今までとは全く真逆の方法をとらなければいけないので、感覚が分からないからです。事実、私のご支援先の社長様も1件100万円超の受注を印刷通販で受注している光景を見て、本当に信じられないとおっしゃいます。
 印刷通販ビジネスを展開する上で、押さえておかなければいけないポイントが3点あります。
 非対面商売であるということ
 リピート率重視の商売であるということ
 口コミ商売であるということ
 まず最初に、改めて非対面商売であるということを認識しなければなりません。ですから、サイトの使い方や購入方法はもちろんですが、日々営業がクライアントに伝えている情報、例えば紙の種類の説明や、それぞれの商材の用途等です。また、同業他社をターゲットにしているときは、印刷業界用語を多用しても良いのですが、ターゲットが一般ユーザーの場合は、お客様目線での言葉で説明していかなければなりません。そして、アクセス〜商品の選択〜購入までの導線をスムーズにしなければいけません。今までは、営業マンが全て手配していたので良かったのですが、これからはお客様に商品の選択〜決済までを行っていただかなくてはなりません。ですから、当然のように使い勝手が悪いサイトは、今後使っていただけなくなるわけです。
 次に、リピート率を重視するということです。運営されている企業様はよくご存知かと思いますが、サイトオープン当初、購入客数が少ないときは、販促費や一部営業コストがかかるため、営業利益が出ません。オープンして間もないときは、先行投資として販促費や営業コストを投入し、まずは「会員数を増加させる」ことに専念する必要があります。そして、一度購入していただいたお客様に、二度・三度利用いただくために、常にお客様と接触できる環境を用意しておくことが重要になります。
 最後に、クチコミ商売であるということです。パソコンが一人一台の時代であり、インターネットに常に接続できるという環境であり、ソーシャルメディアが流行している現在、クチコミを発生させやすい環境だといえます。よって、良い噂も悪い噂も広まることが今まで以上に早くなりました。ですから、品質や納品スピードはもちろん、電話対応のスピードや丁寧さは必須であり、リピート・紹介を誘発させる仕組みが重要になります。
(2)差別化の8要素を使って、独自性を出して行こう!
 船井総研では、同業内でのシェアアップを図る際、差別化の8要素というものを基準にしながら、お手伝いしています。
差別化の8要素とは、
 1.立地
 2.規模(売り場面積)
 3.のれん
 4.商品力
 5.販促展開力
 6.営業・接客力
 7.価格力
 8.固定客化
を言います。これは、同じ条件の企業や店舗だった際に、お客様が購買を決定する要因をさしています。1番〜8番まで優先順位になっており、お客様は最も近いところで購買し、距離が同じであれば、規模(売り場面積)が大きいところで購買し、距離と規模が同じくらいであれば、認知度や歴史があるところで購買し...というイメージです。また、1番〜3番は戦略的差別化といい、明日明後日にはすぐに変えることができない要素であり、5番〜8番のことを戦闘的差別化といい、明日からでもすぐに変えることができる要素と捉えています。
 印刷通販の場合の立地は、「お気に入り登録」されている状態やYahoo!・Googleで検索された際に最も上位に表示されることになります。ですから、販促を強化すれば、立地一番が取れることが可能になります。
 余談ではありますが、差別化の8要素から、なぜ価格競争になるのかも説明がつきます。それは、立地始め、商品力や販促展開力、営業・接客力を強化していないからといえます。これは、印刷営業においても同様のことがいえます。印刷営業の場合、結局は値下げと人脈で仕事をしているので、価格競争に陥るのであって、商品力や販促展開力、そして営業力を強化すれば、価格競争にはなりにくいということが、私のご支援先でも事例として証明されています。
(3)商品力は自社の強みを最大限に表現して強化しよう!
 まず最初に、商品とは、ネーミング、価格、内容の3つの要素で構成されます。印刷会社における商品の強みは、設備に左右されます。ですから、自社の設備において、最も得意な商品を前面に押し出す必要があります。まず、大切なことはネーミングです。商品の価値を最大限伝えるためには、必要不可欠です。印刷商材の価値は、「機能(品質と効果)とスピード」です。ですから、機能と納期を前面に押し出した商品名やキャッチコピーを採用していただきたく思います。また、印刷以外の付帯サービスが得意な企業もあるかと思います。例えば、加工や保管・発送といった物流等の後工程です。それらも商品化する、又は商品に組み込む際は、キャッチコピー・商品名に反映させることが重要です。そして、価格においてです。印刷通販というビジネスモデルの機能として、やはり「安さ」があります。ですから、価格面の訴求は必要です。しかし、全ての商品で日本一の価格提供ができることが最もベストなのですが、全て安くする必要は無いと思っています。自社が最も得意で、「ここだけは他社に負けない!又は負けたくない!」と思う商材に関して、価格訴求を行い、多商材は品質やサービス部分の訴求を行うと良いでしょう。
(4)店舗は、自社のコンセプトを表現しよう!
 商品力において、自社の最も得意な商材を決めたかと思います。それを中心に会社のカラーも含め、店舗に反映させなければなりません。図4を例に紹介しましょう。
図4
 まず最初に、決してこのようなデザインが良い!と言っているわけではありませんので、誤解しないでください(笑)
 このサイトは、自社のコンセプトを徹底的に店舗に反映させている好事例です。この企業は、オフ輪を持っており、ご存知のとおり大ロットのチラシにとにかく強い企業です。彼らは、自社の強みを「大ロットチラシの徹底的な安さ」と設定し、安さ感を表現するための「黄・赤調」や「最低単価表示」、「キモカワキャラクター」を採用しています。おかげさまで、オープンして1年も満たないのですが、設定予算に対して順調にクリアしていっています。
(5)プロモーションは、CPRを重視しよう!
 先にも申しましたとおり、ネット通販ビジネスは、リピート商売であり、クチコミ商売です。ですから、オープン当初はとにかく会員数を獲得していくことに注力していかなければなりません。
 ネット通販の売上の方程式は、以下のように表すことができます。
 売上=新規見込み客数×受注率×1回当り平均単価+既存客数×リピート率×1回当り平均単価×年間購入回数
 ですから、会員獲得や受注を増やすためには、当然のことながら、アクセス数を上げていかなければならないのです。そのためには、プロモーションが非常に重要になります。
 プロモーションには、大きく分けて3種類あります。ネット販促、リアル販促、広告・宣伝です。
 ネット販促の主な目的は、アクセス数アップです。例えば、リスティング広告や各種サイトバナー広告といったものがメインになります。そして、リアル販促は主に購買促進を目的にし、DMやFAXDM、同梱広告が主な手法です。最後に、広告・宣伝は主に認知度アップを目的にしており、TVCMや交通広告といったものになります。
 ネット販促やリアル販促に関しては、効果が測定できるということに対し、広告・宣伝は効果がはっきりと分からないということが大きな特徴です。
 プロモーションを実施していくうえで大切なことは、CPRやCPOを重視し、検証を図るということです。CPRとは、コストパーレスポンスの略で、会員1件獲得当りの広告費のことをいいます。そして、CPOとは、コストパーオーダーの略で、受注1件獲得当りの広告費のことをいいます。CPRは会員1件3万円台が普通であり、4万円台の媒体・手法は、効率が悪く、2万円台は効率が良いという判断をしながら、各種販促手段と投資金額を決定していくとよいでしょう。
(6)3回安定・10回固定の法則。固定客化は接客頻度重視
 船井総研では、「3回安定・10回固定の法則」というものがあります。顧客は3回購入すると、他店へ行くことが少なくなり、10回購入すれば、絶対に離れなくなるという法則です。
 つまり、固定客化を図り、リピート回数を増やすためには、まず最初に3回購入していただくことを目的に施策を組むと良いでしょう。そのためには、徹底的な接触回数アップを行わなければなりません。新規で初めて購入いただいたお客様は、時間が経てば経つほど、自社・自店に対する帰属意識は低くなります。ですから、初回購入から2回目購入を促進するために、注力する必要があります。そのためには、メルマガや同梱広告、ポイントサービスが主な手法でしょう。

自社の独自・固有の長所を最大限表現しよう!

 印刷通販に限らず、印刷会社様のご支援を全国数社させていただいておりますが、いつも感じることがあります。それは、「自社の強みを伝えることが下手だなぁ」ということです。
 どの業種においてもいえることですが、繁盛している企業やお店に共通している点は、「自社・自店の強みが分かりやすく表現されている」というところです。商品に特徴がある企業もあるでしょう。営業に特徴がある企業もあるでしょう。店舗に特徴がある企業もあるでしょう。総じて、会社・店の特徴がはっきりしているのです。
 あなた様の会社はいかがでしょうか?あなた様の会社の特徴をはっきりと言えるお客様は何社いらっしゃるでしょうか?
 どの業種においても1人勝ちの様相を呈してきました。同一カテゴリー同一商圏内で、残るのは多くても3社くらいではないでしょうか?
 印刷通販市場においても、参入企業が今後益々増加することが予測されます。数年経ったとき、印刷通販市場も儲かるサイトと儲からないサイトの二極化が激しくなることが予測されます。
 そのときに、是非今のうちから、「自社の強み・特徴」を最大限表現し、「カテゴリーNO.1」になりませんか?


岩邊 久幸氏(経営コンサルタント)
船井総研に入社以来、幾多の小売り店・サービス業のプロジェクトを経験し、現在主に広告業界、印刷業界を中心にコンサルティングを行う。
年間250日超を現場における業績アップ支援に充て、全国を駆け回る。下請企業の元請化、営業力アップでは業界内の評価も高い。机上の空論ではなく、即実践、即業績アップする手法はクライアントからも高く評価されている。