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トップ > 特集 > 第15回[国際]電子出版EXPOレポート:書籍検索端末・自動販売機

7月8日〜10日までの3日間、第15回国際電子出版EXPOが東京ビッグサイトで開催された。電子書籍元年と言われた2010年に続く2011年の動きとして、参入企業各社の方向性をより鮮明に映し出した展示会となった。東京国際ブックフェア・ライセシングジャパンと同時開催ながら、それぞれの会場共に大盛況であり、3日間で来場者数6万1,336名という、市場の関心の高さがうかがえる過去最大の展示会となった。そこで今回、約150社におよぶ出展企業の中から、印刷企業および電子書籍市場における注目商品やサービスを紹介する。

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書籍検索端末・自動販売機

印刷ジャーナル 2011年7月25日号掲載

 電子出版EXPOで注目されていたもののひとつに「自動販売機・検索システム」がある。リアルな大規模書店には、書籍の検索システムが数台設定されており、書籍タイトル・著者・出版社などをキーワードに書籍検索ができるが、今回出展されていた各ブースのシステムでは、さらにその先を行く、新たな取り組みが見られた。

■知の検索型ナビシステム

知の検索型ナビシステム
​ 「自分でも気付かない、本当に求めている本と出合えるサービスを」との思いから、松岡正剛氏監修の目次録(編集者として30年に渡って蓄積してきた2万冊以上の目次録と解説集データベース)と書誌データベースおよび連想計算エンジンを組み合わせた新たな書籍推薦端末が大日本印刷から参考出展されていた。
 実際に操作したところ、読者の関心のあるキーワード入力を元に、一般的な関連書籍にとどまらず、意外な関係性を持つ書籍まで提示してくれるのには驚かされる。リスト画面から、そのまま書籍購入へと進むことができ、出版状況や読者の意向によって、リアル書店での取り置き・宅配・電子書籍ダウンロード購入のいずれかを選択し、レシートをプリントできる。
 タッチパネル方式で見やすい画面になっており、「何が出てくるのだろう」という知的好奇心を刺激してくれる、端末操作が楽しい検索システムに仕上がっている。
 参考出展とのことで、実際に店頭や電子書籍マーケットに組み込むのは、まだ先のことになるが、書籍との新たな出会いを引き出す検索システムであった。

■電子書籍自動販売機JTS

電子書籍自動販売機
 会場でひときわ注目を集めていたのが、自動販売機メーカー、グローリーの「電子書籍自動販売機JTS」だ。
 出版社が提供するコミックや小説の表紙画像がリストされており、欲しい書籍をタッチして購入へと進むことができる。購入ボタンに触れると、QRコード付きの購入券がプリントされる。このQRコードを携帯電話で読み取り、アクセスコードを入力すると、ダウンロードできる仕組みとなっている。
 グローリーでは、これまでの自動販売機のノウハウを生かし、簡単決済で、駅や書店店頭で気軽に使える書籍自動販売機の製作に踏み切ったとのこと。決済については、今のところ携帯電話のみに対応しているがスマートフォンや電子書籍端末への対応も検討中という。
 現状、駅のホームでは文庫本自動販売機が稼働しているが、品数には不満があるところだろう。この電子書籍自動販売機が駅や空港などにお目見えすれば、多くの電子書籍の中から、読みたい本を選択し、自動決済してその場でダウンロードできるという生活スタイルが身近なものになる。そんな未来を予感させる、新たな書籍購入のスタイルが提示されていた。

■MY BOOKコンシェルジュ

MY BOOKコンシェルジュ ​ 「読みたい本に出会うための手助けをする」というコンセプトでフラワーガーデンから出展されていたのが「MY BOOKコンシェルジュ KIOSK端末」だ。
 コンシェルジュとは、「総合的な世話役」という意味の言葉である。デパートや家電量販店の売り場をまたいだ購入支援や、携帯電話のアプリなどで認知されるようになった言葉だが、書店における書籍選びについても、コンシェルジュが登場したようだ。
 遊び心満載の端末になっており、タッチパネル方式の画面の質問に答えていくと、「こんな書籍はいかがですか」という本を提示してくれる。質問には、年齢・性別・読書頻度といった一般的な質問から、「好きな人には自分からアタックしますか」など、面白い質問もあり、その人の性格や好みを分析した上で本探しに付き合ってくれる。書籍をプレゼントする際に、相手のことを考えながら推薦書籍を選ぶのにも使えそうだ。
 読者に適した書籍を推薦するプロである書店の店員さんに代わって、そのノウハウをKIOSK端末に取り入れたという。書籍との出会いを、その人の性格や心理に合わせて支援するというコンセプトは、未来の書籍検索・推薦システムの形として目新しいものとして映った。
 出版不況といわれる昨今、書店や出版社に元気になってもらいたい...という一心でいろいろな工夫を試みているという担当者の話が印象的だった。

■彩(sai)・PiT SPOTほんやチャンネル

60インチ大画面の検索システム「彩(sai)」
​ 同時開催の第18回東京国際ブックフェアにも、新しい書籍検索システムが出展されていた。
 出版・書店のシステムを手掛けてきた光和コンピュータでは、デジタルサイネージ要素を取り入れた60インチ大画面の検索システム「彩(sai)」を展示し、多くの人の目を惹いていた。
 60インチという大画面で、書籍の検索からチラ読みまでをサポートしている。等身大くらいの画面でチラ読みする小説は圧巻だ。「彩」は、これまで、映像や書籍の店頭サイネージとしての実績があり、婦人服の着せ替えシステムとしても活躍しているそうだ。
 同ブースでは、4月から運用を始めている「PiT SPOT」という検索端末も併置されており、書籍やCDの検索・予約をデモしていた。近刊情報データベースとの連携で、いち早くPiT SPOTに書籍情報を提示できる。購入者は、端末で探した近刊書籍の予約シートをプリントして控え、届いたら書店で購入できるというもの。書店にとっては、仕入前の段階で予約状況を把握できるメリットも生まれ、どの程度仕入れば良いかという判断材料としても使える。出版社・書店の仕組みを知り尽くしたシステムメーカーだからこその提案である。
 さらに、電子書籍の自動販売機も参考出展していた。電子書籍と音楽を扱う自動販売機になっており、音楽については、調整中だが年内にはリリースする予定とのことだ。
 各社それぞれの思いの先には、書店・出版社を活性化したいという話が聞かれた。紙・電子を問わず、今後、書籍の流通形態がより人間の活動範囲に近づき、嗜好や知的好奇心を刺激するものへと変わる可能性を垣間見た気がした。