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北東の方角を「鬼門」と風水では呼び、忌み嫌われることがある。迷信・まやかし・学問だと色々な受取り方があるようだが、北東工業(株)の由来は大阪の北東部を発祥地としているのではなく、当社社長が創業した東條プリント工業が、大阪府印刷工業組合の北支部に所属していた事から「北の東條さん」と呼ばれ、そこから製版部門を受け持つ新会社を北東工業と命名したそうだ。今回、北東工業(株)IT推進部の塚脇一輝氏による連載を企画。DTPを中心に過去から現在に至る業界や技術の変化を、その経験を基に綴ってもらった。題して「鬼の門を叩く」。14回にわたる連載を紹介する。(2005年〜2006年)

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第1回 混沌への招待状

北東工業(株)IT推進部 塚脇 一輝 氏

印刷ジャーナル 2005年2月掲載


北東の方角を「鬼門」と風水では呼び、忌み嫌われることがあります。
迷信・まやかし・学問だと色々な受取り方があるようですが、北東工業の由来は残念ながら(?)大阪の北東部を発祥地としているのではなく、当社社長が創業した東條プリント工業が、大阪府印刷工業組合の北支部に所属していた事から「北の東條さん」と呼ばれ、そこから製版部門を受け持つ新会社を北東工業と命名したと、聞き及んでおります。
北東工業が誕生し、月日に関守(せきもり)なしのことわざ通り、昨年で35年目を迎えることができました。
ここまで無事やってこられたのも、ひとえにお客様あってのことと感謝しつつも、とくにここ10年、15年という間の変化の凄まじさたるや、多くの方も経験されて来たと思われます。
昭和61年頃、私はCEPSの責任者でした。
CEPSとは、いわゆるトータルスキャナと呼ばれていたもので、当社でも数億円という費用を掛け、製版業務の効率化に取り組んでおり、まさに右肩上がりの経済成長に押し上げられるかのように製版業の電子化が進んで行きました。
しかし、それから僅か数年後にトータルスキャナの先行きがないことを、思い知らされることになります。
世は平成の時代となり、私もCEPSから離れ、少し自由に動ける立場になっておりました。
そんなある日、得意先でもあるデザイン会社から一つの相談事を持ちかけられました。
「マッキントッシュを導入しようかと考えているが、業界としての動きはどうか?」というものでした。
当時、DTPという言葉と、マッキントッシュなるコンピュータの存在は知っており、大阪でもDTP出力センターは既に存在していたのですが、僅か数百万円のコンピュータと数千万から数億円のトータルスキャナを比べるべきものもなしと、高を括っており、「生産効率が悪く、しかも製版上のリスクを負うだけなので、お勧めは出来ませんね」とお伝えしてしまいました。
後悔先に立たずですが、言った以上は発言に責任を取らねばなりませんし、言いながらも何処か引っかかることもあり、それから一生懸命調査を始めた訳です。
出力センターや、各メーカーにお話をお伺いさせて頂き、あちらこちらでご協力頂いたのですが、初めてフォトショップを目の当たりにした時には、まさにカルチャーショックとしか言いようがない衝撃に打ちのめされたのでした。
確かに生産効率という点では、まだまだトータルスキャナに歩があると感じたのですが、いずれ無用の長物となることは明白だとその時感じとれました。