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視点の行方

電子書籍貸出サービスの課題と期待

印刷ジャーナル 2016年12月5日

 (一社)電子出版制作・流通協議会(電流協、中尾光宏会長)は、今年7月から8月にかけて、公共図書館の電子図書館・電子書籍貸出サービスアンケートの調査を全国の公共図書館に実施し、公共図書館に関する電子図書館・電子書籍貸出サービスの調査結果を報告書としてまとめた。
 同調査は、2013年に第1回目を実施し、今年で4年目を迎えるもの。今回は、全国の公共図書館(中央館)1,352館のうち、メールやWebで連絡がとれる1,077館に依頼し、466館からの回答を得た結果および、昨年との比較などを分析している。
 同調査によると電子図書館サービスのうち、公共図書館での「電子書籍貸出サービス」の導入館は53館(自治体ベース)で、これは前年(2015年)から13館増えているが、全国の1,352館(中央館ベース)からみると3.9%と、まだまだ普及していない状況であることが判明した。
 公共図書館において、「電子書籍貸出サービス」の導入が進まない課題についての質問では、「コンテンツの価格」が61.6%、「提供されているコンテンツが少ない」が59.9%、といった電子書籍コンテンツの課題のほか、「予算の確保」が74.0%、「電子書籍貸出サービスを実施する十分な知識がない」が51.6%、「電子書籍貸出サービスが継続されるかどうか(サービス中止に対する不安)」が49.4%などの回答が多くあった。
 また、「電子書籍貸出サービスに期待する機能」についての回答では、「文字拡大機能」が71.9%、「音声読み上げ機能」が67.6%、「文字と地の色の反転機能」が50.2%といった、アクセシビリティ機能に対して期待が多く寄せられており、これは、2016年4月から施行された「障害者差別解消」の対応に向けた期待ととらえることもできる。
 同報告書では、公共図書館に地元の小中高等学校への支援を質問するとともに、「学校教育における電子書籍の利用と課題」についても報告している。それによると「紙の資料や書籍の貸借などの支援」は、94%の図書館が行っていると回答があり、ほとんどの公共図書館で実施している。ただし、「デジタル資料・電子書籍に関する支援」は、4館しか行っていないという回答であった。これは、まだ公共図書館自体では、デジタル資料・電子書籍利用が進んでいないことがうかがえる。
 なお、同調査報告の詳細は、「電子図書館・電子書籍貸出サービス調査報告2016」として発行・発売している。