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視点の行方

09国内違法コピー損害額は1,700億円

印刷ジャーナル 2010年5月25日

 ビジネスソフトウェアアライアンス(本部/米国ワシントンDC、以下BSA)は、2009年における全世界のコンピュータ・ソフトウェアの違法コピーによる被害状況をまとめた「第7回世界ソフトウェア違法コピー調査」の結果を発表した。
 それによると、日本の違法コピー率は前年比変わらずの21%で世界2位(前年同)、損害額は厳しい雇用情勢が続く日本人の平均年収430万円のほぼ4万人分に相当する18・38億ドル(約1,719億円)となり世界ワースト8位(前年ワースト10位)という結果となった。
 今回の結果を受けBSA日本担当事務局長の松尾早苗氏は、「日本における違法コピーの被害が改善されず、とりわけ損害額が世界で8番目に悪い不名誉な結果であったことは非常に残念。1,700億円という損害額はあくまでソフトウェア産業に対する直接的な損害を示したもので、周辺産業への影響までを考えた場合、日本経済への影響は計り知れない」と述べている。
 全世界で見ると、違法コピー率が上昇した国19に対し低下した国が54と大きく上回った反面、違法コピー率の高い中国、インド、ブラジル等のソフトウェア・マーケットが急拡大したことで、違法コピー率は3年連続の上昇となる43%(前年比+2ポイント)、損害額は2010年内にEUとIMFがギリシャに融資をする計400億ユーロ(日本円換算約4兆8,000億円)にも匹敵する514億ドル(約4兆8,000億円)となった。
 (財)日本情報処理開発協会(JIPDEC)情報マネジメント推進センター副センター長の高取敏夫氏は今回の発表に際し、「昨年度、JIPDECではITサービスマネジメントの利活用の観点から、SAM(ソフトウェア資産管理)導入ガイドを策定した。とくにソフトウェアの不正コピーやソフトウェアライセンスの不正利用などの法的問題は、企業・組織の姿勢そのものに疑念を持たれることになり、社会的な信用の失墜につながっている」とコメントしている。
 SAMの導入は、ソフトウェアの不正利用の防止とソフトウェア投資の最適化につながる。昨年、自治体によるソフトウェアの不正使用に関する報道が多数なされたことから、国内におけるSAMへの気運は高まりつつある。一方で、BSAが開設している組織内違法コピーに関する情報提供窓口には、2007年より年間500件を超える多くの通報が寄せられており、そのほとんどの企業や組織ではSAMが導入されていない。

 そんな中、違法コピーによる被害状況が深刻なアジア各国のソフトウェア企業がその窮状を伝えるビデオを制作し、動画共有サイト「YouTube」で公開している(http://www.youtube.com/watch?v=01sFgpahyY8z)。「アジアのソフトウェア起業家:希望と挑戦」と題されたこのビデオでは、タイの辞書ソフトウェア企業の代表が、販売網を世界中に持つ多国籍企業に比べ市場が国内のみに限定される現地中小企業の方がはるかに違法コピーの影響が大きいことを指摘するなど、タイ、インド、台湾、ベトナム、マレーシア、インドネシアの6カ国のBSAアジアリージョナルメンバー企業計6社が健全な現地の市場形成および雇用創出に与える違法コピーの悪影響について語っている。
 各企業はビデオ内で、これらの問題解決にはアジア各国の政府レベルでの違法コピー取締り強化と、関連法規の早急な整備が必要であると訴えている。