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視点の行方

広告業者の倒産2001年以降最多に

印刷ジャーナル 2009年11月15日

 日経広告研究所が発表した「有力企業の広告宣伝費2009年版」によると、2008年4月~2009年3月の有力企業4444社の広告宣伝費総額は前年度比7.33%減の3兆608億円で2年連続減少、連結ベースでは同6.02%減の5兆9245億円となり、5年ぶりの減少に転じた。
 国内景気は落ち着きを取り戻しつつあるものの、雇用環境の悪化や個人消費の低迷から、今後も厳しい状況が続くと見られる。そうした中、広告関連業者の倒産は増加基調が続いており、今年9月までの倒産件数は2001年以降過去最悪のペースで推移している。
 帝国データバンクの調査・分析では、2009年1月~9月の広告業者の倒産は前年同期比40.6%増の201件。9月時点で既に2001年以降過去最多の前年に迫り、倒産件数は過去最悪のペースで推移。広告業界は厳しい経営環境が続いている。負債額は「1億円未満」が142件(70.6%)、態様別では「破産」が194件(96.5%)、業種別では「広告代理業」が93 件(46.3%)でそれぞれ最多となった。
 2009年は3月にワールド・ベースボール・クラシックが開催され日本が優勝したほか、夏には総選挙も実施されるなど、広告業界にとってプラス要因となるイベントが開催されたが、その効果は薄かった。これらの関連広告の扱いは大手広告代理店に集中、倒産した201社の大半を占める中小業者には恩恵が及ばなかったとみられる。加えて、景気の低迷から全体として広告費の抑制傾向が続き、その効果は出にくかったものと思われる。昨年も北京五輪が開催されたものの、その広告業界への効果は限定的だった。
 2010年は6月からサッカー・ワールドカップが南アフリカで開催されるが、その波及効果も一部大手を除いて期待薄といわざるを得ないだろう。
 本格的な企業業績の回復が見込めないなか、企業の広告宣伝費の抑制傾向は今後も続くと予想される。消費不振や広がるデフレ懸念もあり、企業は広告費よりも販促費を重視する傾向が強いという見方もある。
 広告業界の不振は、業界の構造的な変化が要因になっている。電通の「2008年日本の広告費」によると、マス4媒体(新聞/雑誌/ラジオ/テレビ)は、前年比7.6%減となり4年連続で前年実績を下回っている。その一方で、インターネットや衛星メディア関連の広告費は、2ケタ増となった。
 こうした次世代型メディア関連の広告業者については今後も伸びが期待できると予測されるが、これまでの恒久的な経済成長を前提とした手数料を収益基盤とする「広告代理」というビジネスモデルは転換点を迎えており、一部の大手を除く中堅以下の広告代理業者の淘汰は今後も進んでいくものと見られる。
 こうした旧来型の広告業者に印刷業界がスキルを提供することも、今後のイノベーションの方法の一つと言えるだろう。