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視点の行方

LED-UVへの期待

印刷ジャーナル 2009年7月5日

 リョービが枚葉オフセット印刷機メーカーとして世界で始めて開発に成功した「LED-UV印刷システム」。A全判4色印刷機「RYOBI924」に搭載して関西地区初披露となったJP2009のリョービイマジクスブースには、連日多くの人集りができた。
 従来、UV(紫外線)硬化に使用されるランプには、水銀灯の一種であるメタルハライドランプが使用されているが、消費電力が大きく、赤外線を含むため熱を発生するという課題がある。また、ランプの寿命も短いためランニングコストが高い。
 これらを解決するものとして注目されているのがLED方式だ。長寿命、低消費電力のLED方式を採用した「LED-UV印刷システム」は、環境負荷の低減が課題となっている印刷業界において、次世代のUV印刷システムとして期待されているわけだ。
 リョービは、昨年ドイツで開催されたdrupa2008に参考出品し、予想を超える大きな反響を呼んだことから、製品化を急ぎ、昨年10月に主力商品のオプションとして発売。その後も他機種に展開し、ラインナップを拡充している。
 リョービイマジクスが発行している広報誌「スマートインプレッションズ」の2009年冬号には、その開発ストーリーが座談会形式で掲載されている。
 それによると、同システムは「電力量を半減させる乾燥装置」というリョービのdrupaに向けた開発テーマから生まれたとしている。
 同システムの最大の利点は、やはり消費電力の削減である。従来比で70~80%少なくてすみ、電気代の削減はもちろん、B2判機の場合、CO2換算で約86.6トン/年、森林面積で約6.8ha/年の環境負荷の軽減に相当すると試算している。
 また、LEDの寿命は約1万5,000時間で、従来のランプ方式と比べて約15倍である他、オゾンが発生しないため、脱臭装置や換気ダクトなどの付帯工事が不要。赤外線も含まないため、印刷資材や印刷機への熱影響が抑えられるメリットがある。
 一方、LEDは瞬時に点灯、消灯でき、乾燥装置に依存する待ち時間が発生しない他、用紙幅に合わせた照射幅の制御が可能で、LEDの効果的な運用が行なえる。
 パナソニック電工と東洋インキとの共同開発の中で、まず焦点となったのは、どこに設置するかだ。LEDの照射効率を高めるためには、できるだけ用紙と接近させる必要があるが、一方で用紙との接触という問題もある。試行錯誤の結果、現状は用紙搬送が最も安定している圧胴上に設置している。また、電気効率を最大限に高めるための用紙幅に合わせた電気制御にも苦労したとしている。
 現状の課題としては、フィルムへの印刷やニスコーティングへの対応があるが、現在もインキメーカーと開発を進めており、「まもなく解決される」としている。
 また、他の印刷機械メーカーも追随の姿勢を見せている。三菱重工業が6月30日、LED-UV乾燥システムの発売を発表。菊全判サイズの大型枚葉印刷機に対応させるとともに枚葉両面印刷(タンデムパーフェクター)への搭載も業界で初めて実現している。今後の動きに注目したい。