PJweb news

印刷産業のトレンドを捉える印刷業界専門紙【印刷ジャーナル】のニュース配信サイト:PJ web news|印刷時報株式会社

トップ > 視点の行方 > 企業存続と事業承継
視点の行方

企業存続と事業承継

印刷ジャーナル 2008年11月5日

 「企業の寿命は30年」と言われるが、これはれっきとした統計結果に基づくもの。企業の成長はおよそ30年でピークを迎え、それ以降は現状維持もしくは下降線を辿るのがほとんどであるという統計が出ている。
 そんな中、50年、100年と存続する企業の共通点は何か。30年というと世代交代が起こる時期でもあり、企業存続と事業承継は密接に関係していると考えられる。
 中小、零細企業が大部分を占める印刷業界では、そのほとんどが同族企業である。先代社長にとっては子息が社業を継ぐものと考えるのはもっともであるが、「子息なのだから当然」というだけの理由であるなら、事業承継を成功させて会社を存続させるためにも、「なぜ子息への事業承継が最適なのか」を改めて考える必要がある。
 企業の事業承継について、後継者経営戦略研究所の大島康義氏は、「価値あるものを次世代につなぐこと。これは経営者が必ずやるべき仕事である」と指摘している。事業承継のかたちは1つではなく、子息への承継もあれば、親族への承継、社員への承継(EBO・MBO)、他社への承継(M&A)、社会への承継(積極的清算)など様々なかたちがある。(株)東京商工リサーチ調べによると、従業員への承継やM&Aなどの「親族外承継」の比率は4割程度まで増加している。
 大島氏は、「事業承継は成り行きでなく、企業、そして経営者自身にとって、最も望ましいかたちで成されなければならない」とも指摘している。事業承継してから「こんな筈ではなかった」と嘆いても遅い。そうならないためのポイントとして大島氏は、(1)環境整備をする(2)事業承継の方向性・戦略を考える(3)1人で考えずにブレーンに相談する(4)覚悟を決めることが大切であると述べている。また、「事業戦略の基本は、自社の強みを徹底的に活かすことである。後継者は自社の強みをしっかり認識し、引き継ぎ、強化し、そして自社に新たな強みを与えられねばならない」とも。
 そして自社の可能性を追求し、自分自身の可能性を追求し、自分自身を燃焼させること。これにより、事業承継を成功させる可能性が出てくるという。
 一方、石橋経営会計事務所の石橋研一氏は、事業承継における後継者教育のポイントとして、「後継者には受け身的でなく、自発的に事業承継に取り組ませなければならない。後継者には各部門をローテーションさせ、責任ある地位に就ける。関連会社や子会社があるなら、その社長に就かせるのもいいだろう。他社での勤務を経験させることも大切」と指摘している。
 印刷業界では後継者不足に悩んでいる企業が多い。石橋氏は事業承継の有り様について、「営業利益が出ていない会社は論外である」と厳しくコメントするが、たとえ現状の経営状態は良くなくとも、後継者が将来に可能性を感じることができる会社にしていくことができれば、この問題も解決していく筈である。