PJweb news

印刷産業のトレンドを捉える印刷業界専門紙【印刷ジャーナル】のニュース配信サイト:PJ web news|印刷時報株式会社

トップ > 視点の行方 > 違法コピーは経営リスク
視点の行方

違法コピーは経営リスク

印刷ジャーナル 2008年7月25日

 ビジネスソフトウェアアライアンス(本部:米国ワシントンDC、以下BSA)が5月に発表した「第5回世界ソフトウェア違法コピー調査」によると、日本における2007年の違法コピー率は前年比2ポイント減の23%と世界で4番目(前年3番目)に低かったものの、同損害額は約17.9億ドル(約2,112億円)と世界ワースト9位(前年5位)となっている。一方、全世界の違法コピー率は、調査対象108カ国のうち8カ国で上昇したのに対し67カ国で低下したが、高違法コピー率国の急激なPC市場の拡大により、全世界の違法コピー率は対前年比3ポイント増の38%、同損害額は20%上昇の約480億ドル(約5兆6,640億円)となっている。
 この調査結果についてBSA日本担当事務局長の竹下千恵氏は、「日本の違法コピー率が2ポイント低下した反面、損害額は高止まりを続けており、依然として国内の違法コピーによる影響は大きいのが現状である。権利者保護だけでなく、重要な資産であるソフトウェアの正規ユーザーを保護する観点からも、BSAは引き続き違法コピー状況の改善および予防に向けた活動を積極的に行なっていく」と述べている。
 一方BSAでは、日本でPC用ソフトウェア違法コピーが10%低下すると、1万2,400人の新たな雇用、20億ドルの税収増、89億ドル分の経済成長の加速化が見込まれるという調査資料も発表している。
 2007年、人口1億2700万人超の日本では、コンピュータ、周辺機器、ネットワーク装置、パッケージソフトウェア、情報技術サービスなどのITに1,060億ドル近くが投入された。この支出額は国内総生産(GDP)の2.4%に及び、92万人超のIT産業従事者を抱える13万7,000社超のIT企業を支えたのに加え、IT関連の税収1,160億ドルの創出を促したとされている。
 しかし、今後4年間で、日本のPCソフトウェア違法コピー率を10%低下させ、前記のような経済効果を創出できれば、ITの日本経済に対する寄与額をさらに高めることができると思われる。
   ◇   ◇
 企業のコンプライアンスや社会的責任が問われる中、ソフトウェアの違法コピーなどの著作権侵害も2007年7月より罰則が強化され、個人では10年以下の懲役、または1,000万円以下の罰金(またはこれらの併科)、法人で最高3億円の罰金が科せられるようになった。また、民事責任においても法人だけでなく、違法コピーや管理体制の不備を漫然と放置した経営者個人に対しても損害賠償責任を認める判決が下されている。
 違法コピーに関する通報が多く寄せられている業界は、情報サービス事業者に次いで、印刷・出版業界である。違法コピー問題を企業経営リスクと捉え、この機会に違法コピーの予防および組織内でのソフトウェア資産管理体制を見なしてみてはいかがだろうか。