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視点の行方

モデル不足のデジタル印刷

印刷ジャーナル 2008年6月15日

 世界の印刷メディア産業全体に最も経済的、技術的影響を及ぼす地球規模の印刷産業イベント「drupa」。前評判通り「インクジェットdrupa」として、印刷産業に近未来の方向性を示し、11日閉幕した。
 注目を集めたインクジェット分野のトレンドは、ワイドフォーマット、UVインクジェット、トランスプロモなどに加え、富士フイルムと大日本スクリーンから発表された枚葉方式のインクジェットプレスなど。いずれもヘッド技術や材料技術の目覚ましい進歩で、品質及び生産性を向上させている。会場では、電子写真方式も含め、デジタルソリューションにおける具体的なアプリケーション事例の提案が目立ち、その用途はシールラベルやパッケージ分野に広がりを見せている。
 一方、日本市場を見ると、原油価格高騰に伴う資材調達コスト増の負担が大きく経営に陰を落とし、価格転嫁への早期対応を強いられる中、どこに正当な利益創出戦略の軸足を置くかが共通のテーマと言える。その有力候補として挙げられて久しいデジタル印刷ビジネスだが、欧米をはじめ日本以外のアジア市場では急速な進展を遂げる一方で、日本市場は出遅れている感が否めない。
 そんな中、(社)日本印刷産業連合会は「デジタル印刷の技術と将来展望に関する調査研究報告書」を発表した。同報告書は、デジタル印刷方式に関してアンケート及びヒアリングによる印刷会社の現状調査、アンケートによる印刷発注者の市場動向調査、デジタル印刷の各種比較による技術・品質調査などを実施し、高度に優れたデジタル印刷方式の技術・品質の現状とあるべき姿及び将来の新規事業展開のあり方などについて提言をとりまとめている。
 同研究調査によると、デジタル印刷機の活用への大きな課題は、「デジタル印刷にマッチしたビジネスモデルとITネットワーク技術の不足」だとしている。つまり、印刷営業はデジタル印刷の持つ可能性を顧客に提案できるケーススタディの習得が必要で、生産工程は可変データ生成技術や出力極小ロット・極短納期へのインターネット利用など、デジタル印刷機の機能を最大化するために、従来のDTPやCTP技術とは大きく異なるデジタル印刷特有のITネットワーク技術の習得が必要であるということを指摘している。
 同報告書のまとめでは「現状では実ビジネスにおける展開で多くの印刷企業が壁に突き当たっている実態も明らかになった。つまり、ビジネスモデルの醸成が未だ不十分であるということだ」との見解を示し、印刷企業への提言として「デジタル印刷機が持つ潜在力を引き出すためには、製造業体質に加えて本格的にサービス業体質を習得する必要がある。顧客に提供できる品目をさらに強化して次世代の自社の独自性を発揮していくためにも、印刷企業は業態変革を実行して体質改善することが強く求められる」と結論づけている。
 なお、同調査研究の成果報告会が7月14日、日本印刷会館2階大会議室で開催される。