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視点の行方

Windows Vistaの普及とその影響

印刷ジャーナル 2008年1月15日

 マイクロソフトがWindowsの新OS「Vista」をリリースしておよそ1年が経過した。当初、従来OSである「XP」との文字環境の違いから、印刷業界での混乱が予想されたが、この1年間は概ね穏やかに推移したようだ。ただ、その最大の要因がVistaそのものの普及の伸び悩みにあるという見方が大半を占めている。
 Vistaの売れ行きについては、様々な情報が交錯した1年であった。多くのアナリストが、発売1年目のVistaの売れ行きは予想よりも低調だったとし、Vistaは失敗に終わるかもしれないという予想まで出た一方で、マイクロソフトは3月末、一般消費者向けVistaの最初の1ヶ月間の販売数が2,000万本となり、「XP」の2倍以上のペースだと発表。また、9月末までの小売店での販売数が8,800万本、企業との契約によるボリュームライセンス販売数が4,200万本と発表している。総じて「売れ行きは好調だ」とアピールし続けてきたわけだ。
 そして注目すべきはここにきて民間調査機関から、企業によるVistaの本格導入は依然として足踏み状態にあるものの、爆発的な普及はもう間もなくだと予測するレポートが出始めていることだ。このきっかけとなるのが、2008年第1四半期に公開予定の「Windows Vista Service Pack 1」のリリースである。これは、マイクロソフトが最初のサービスパックをリリースするまで、企業は新しいWindowsを不安定でバグが多いと捉える通念からだと分析されている。
 調査会社のForrester Researchが11月に公開した調査報告では、企業顧客の半数近くがVista配備計画を立てているが、すでにVistaを配備済みの企業顧客はわずか3%に過ぎない。しかし、32%もの企業顧客が、2008年末までにVista配備を開始する計画だとし、現況を「嵐の前の静けさ」と表現している。
 同時期に発表された他のレポートの中には、企業のIT担当者の90%がVista移行に懸念を抱いているとする調査結果もあるが、日本におけるVistaの普及はこれから本番を迎えると考えるのが妥当だろう。その時期が、XPのサポートが終了する2014年まで、どのようなペースで進むか予想するのは難しいが、当初波紋を呼んだ文字数・字体といった文字環境の違いによる問題が、ある時期に再浮上する可能性は充分にある。
 とくに日本においては、漢字に関する文部科学省や法務省の施策に対応した最新のJIS規格(経済産業省)「JIS2004」をWindowsの新OSが採用したことにより、ここに含まれる印刷標準字体が今後普及すると予測される。その時、一般企業(クライアント)に文字・字体に関する認識が定着しているとは考えづらい。やはり、文字文化の継承を支える印刷業界がこの問題を整理し、対応準備を進めながらクライアントをリードしていく必要があるだろう。