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躍進企業REPORT

京都美術化工:「薄雲紙」で新展開へ〜今年3月の「京都ギフト・ショー」にも出展

印刷ジャーナル 2019年1月1日
荻原 社長
市松落水

 京都美術化工(株)(京都市伏見区)は、和紙とPET素材を貼り合わせた自社開発の特殊紙「薄雲紙」(登録商標:2016-64397)により新たな展開に乗り出している。昨年10月に社長に就任した荻原眞人氏は「顧客からの要望を受けて4年前に開発して以来、少しずつであるが受注は増え続けている」と話しており、薄雲紙を使用した紙加工、パッケージやクリアファイルなど既製品の販売、薄雲紙の紙販売の3本柱で営業展開していく方針を示す。今年3月の京都ギフト・ショーにも出展する予定で、薄雲紙を使用した京都らしい商品の出品で国内外の来場者にアピールする考えだ。

 同社の創業は昭和26年。高級印刷物の表面加工業として京都市下京区の地で産声を上げたのが始まりだ。以降、時代の変貌とともに高度化・多様化するニーズに対応しながら設備の拡充に努め、現在は表面加工を行った後、最終の完成品になるまでの全ての加工を自社で一貫生産できる体制を構築している。「印刷物の価値を高める」という使命に徹して半世紀以上が経ち、現在は「特殊加工のコーディネーター」として、印刷会社から頼られるアドバイザー的な加工企業として信頼を勝ち得ている。

 そんな同社が4年前に顧客からの相談を受けて開発したのが、和紙とPET素材を貼り合わせて自社開発した特殊紙「薄雲紙(はくうんし)」である。荻原社長はその開発経緯について「薄い和紙を紙に貼り合わせて欲しいという依頼があったのだが、合紙にするとシートが沿ってしまったり糊がはみ出したりするため、そうならない手法を開発した」と説明する。和紙の風合いはそのままでPETと貼り合わせたことにより、紙が透ける表現を可能にしている。

 バリエーションも豊富で、「わたあめ」「桜」「すだれ」「網目」「浮雲」「小梅」「市松落水」をラインアップしている。UVオフセット印刷・箔押し・シルク印刷も可能で、最終製品までの一貫生産を可能としている。

 ネーミングについては取引先のデザイナーにも相談し、「薄雲紙」の特長とイメージに合う商品名となったようだ。

紙加工、既製品販売、紙販売の3本柱で展開

 同社は「薄雲紙」の営業展開について、(1)薄雲紙を活用した印刷物の紙加工(2)パッケージやクリアファイルの既製品の販売(3)紙販売の3本柱でさらなる事業拡大を目指していく考えで、荻原社長は「雰囲気に合うということで、仏具の灯籠に使いたいと紙を買われるお店もある。またクリアファイルについては京都らしくデザインし、箔押しと印刷を合わせて商品販売している。京都内のお土産屋や文具店などに置かせてもらっているが、外国人観光客などを中心に売れている。このほか、モミジ型のコースターなど『和』を強調した商品がうけている」と説明する。

 今年3月の「京都ギフト・ショー」にも出展予定で、「薄雲紙」を使用して京都らしさ、日本らしさを演出した製品開発を進め、国内外の来場者にアピールする考えだ。

標準化と多能工化で働き方改革実現へ

 一貫生産を強みとする同社には、多種多様な加工機が設備されているが、これは技術サービス面での強みである一方、今後の課題要因の1つでもあるようだ。

 荻原社長は「当社には特殊な加工機も多いので、すべての加工機を扱えるオペレーターはいないのが実情である。部署ごとに繁忙期と閑散期も違うので、オペレーター教育を見直し、多能工化と品質の標準化を進めていくことで効率化と働き方改革実現に努めたい」との考えを示している。

 今後の方針として荻原社長は「普通のものではなく、他社が目を向けないような変わったものを追いかけていきたい。当社の豊富な設備力を生かし、新しいものに取り組んでいきたい」としている。「特殊加工のコーディネーター」として、新たな製品を生み出していく同社に注目したい。