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躍進企業REPORT

田中紙工:田中社長が昇文堂を個人M&A

印刷ジャーナル 2018年11月15日
田中 眞文 社長

田中紙工とは別会社として経営

 田中眞文氏((株)田中紙工社長)は今年5月、トランプやカルタなど様々なオリジナル紙製カードを製造する(株)昇文堂(本社/東京都千代田区、齋田精一会長)を個人M&Aし、社長に就任。田中紙工とは別会社として経営し、新たな展開に挑戦している。

 同氏が平成18年から社長を務める田中紙工は、高度な技術が要求されるトレーディングカードやトランプ類などの断裁や加工を得意とする企業。1990年代終わりの頃、昇文堂からホームページを見ての問い合わせがあり、そこからトランプなどカード関係の仕事の取引が始まったという。
 「当時、昇文堂がフィニッシングの外注に出していた企業は丁合順を間違えるなどの事故を頻繁に起こしていたようで、大変お困りになっていた。当社に任せていただいたところ事故がゼロになったと大変満足をいただき、それがお付き合いの始まりとなった」(田中社長)

 2000年代に入り、田中紙工では各種ビジネス展に出展することが多くなった。しかし印刷業界の展示会でもないのに下請け加工のアピールをしても無意味である。そこで田中社長は昇文堂に、展示会に共同出展する話を持ちかけたという。

 「出展内容を検討するなか、共通ブランドとして『カードゲームファクトリー』を立ち上げて商標登録し、文具系展示会のISOTなどに共同出展するようになった。平成22年にはカードゲームファクトリーで昇文堂と業務提携を行った。そして今年5月、田中紙工としてではなく、個人M&Aで昇文堂を買収するに至った」(田中社長)

 会社ではなく、個人として買収した理由について田中社長は「田中紙工では、昇文堂以外の印刷会社からも加工を受注している。一方で昇文堂も従来通りの営業活動をしている。会社としてM&Aを行い、昇文堂を田中紙工の傘下にしてしまうと、昇文堂のコンペチターの印刷会社が田中紙工に仕事を出しづらくなるのではないかという懸念があった」と説明する。当面は子会社化やホールディングス化などの予定はないという。

「アキバ系」によるブランディングに期待

 昇文堂の本社は秋葉原駅から徒歩5分。言わずと知れた「オタク」の街である。将来的な構想として田中社長は、印刷機などハード設備は田中紙工の戸田工場に集約することで効率化し、現在の昇文堂の本社はショールームとしてオタクと呼ばれる人々を集客し、「アキバ系」の仕事の受注でブランディングに繋げていくことに期待しているようだ。

 「昇文堂はカード関係だけでなく、ノベルティやイベントの際にアイデアを提供できるデパートとして様々なアイテムを揃えている。アキバ系の仕事を受注し、それをSNSなどで拡散してもらえればブランディングできるのでは...」(田中社長)

 昇文堂の社長に就任した5月以降、業績は順調だと田中社長は話す。両社の今後の取り組みと新事業に挑戦する田中社長の経営手腕に注目したい。