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躍進企業REPORT

スキット:ポケットフォルダー生産を大幅効率化

印刷ジャーナル 2017年12月15日
KBD MOLLシステムの前で田村社長
最高毎時4,500部の生産性により超短納期での大量生産が可能になった

「KBD MOLLシステム」1号機を導入
自動化による作業性向上実現〜超短納期の大量生産、マチ付きにも対応

 ポケットフォルダーの累計実績450万部を誇るスキット(株)(本社/福井県福井市高木中央1-328、田村美津雄社長)は今年8月、製袋・グルーシステム・紙折の加工機能を統合したフィニッシングソリューション「KBD MOLLシステム」の1号機を導入し、ポケットフォルダーの生産性を飛躍的に向上させるとともに、従来の内職作業の自動化を実現。これにより、超短納期での大量生産も可能になった。品質・納期・価格のすべてでポケットフォルダー日本一の企業を目指すという同社の田村社長に話を聞いた。

 同社は1973年に製版業として設立した企業。受け身体質になりがちな製版業からの脱却を図り、1997年頃から印刷機や後加工機の導入を開始した。そして、2010年には初のインターネット通販となる「ポケットフォルダー専門店」を開設した。その後、「選挙印刷専門店」、「圧着DM専門店」、「ノベルティ制作専門店」、「封筒印刷専門店」、「車両広告専門店」を順次開設し、現在は6つの商品展開型の通販サイトを運営している。

 その中でも、これまでの累計制作実績450万部を誇り、日本一を目指しているのが従来の営業スタイルと通販との両輪で営業展開している「ポケットフォルダー」事業だ。田村社長はポケットフォルダーの制作サービスを開始した背景について「約15年前に地元の印刷会社から、クライアントへの販促ツールとして作って欲しいと下請けで仕事を受けたのが初めての受注。ポケットフォルダーは30〜40年前にも流行したことがあると現場のベテラン社員からも話を聞き、その流行はまた来るのではないかと考えて本格的に生産することを決めた」と振り返る。まさにその予感は的中したようで、2010年からとっている制作実績の統計では、生産部数は毎年平均10%の割合で増えているという。

 しかし、同社では当時グルアーを設備していなかったため、糊貼り工程は外注に出しており、近年のような短納期に対応することは難しかったという。そのような中、廃業するという同業者からその会社で使用していたグルアーを使わないかと話があったことから、平成27年11月にアメリカ・MOLLのポケットフォルダー専用グルアー機「MARATHON」を導入し、ポケットフォルダーの内製化を開始した。それが同社とMOLLとの初めての出会いとなった。

 それから約2年間、同グルアーは問題なく稼働していたことから、田村社長の中でMOLLへの信頼感は自然と高まっていたようだ。そして、ポケットフォルダー事業のさらなる拡大を目指してグルアーの増設を検討していたところ、MOLLの新製品である製袋・グルーシステム・紙折の加工機能を統合したフィニッシングソリューション「KBD MOLLシステム」を(株)光文堂から紹介された。イタリアとドイツの海外メーカー、国内メーカーとも比較検討したようだが、「MOLLは使用経験があるという安心感に加えて、価格面でも他社よりも安価であったため、導入を決定した」と田村社長は話す。従来機のグルアー「MARATHON」と比較しても約3倍となる毎時4,500部の生産性を実現するほか、性能面においても従来機にない機能を備えているため、様々な導入効果が表れているという。

 田村社長は、「KBD MOLLシステム」の導入メリットについて「MARATHONはポケットの糊付けはできるが最後にポケットフォルダーを2つ折りすることができなかったため、最後の折りの工程をこれまでは内職による手作業で行っていた。KBD MOLLシステムでは最後の折りまでを自動化できるため、生産性が飛躍的に向上した。また、品質についても手作業ではないため安定している」と自動化による作業効率と生産性の向上、そして品質の安定を挙げている。

「カードキーケース」を柱にポケットフォルダーで日本一の企業へ

 同社では、基本的には10数種類ほどのタイプのポケットフォルダーのメニューを用意しているが、ユーザーニーズに応じてカスタマイズしたポケットフォルダーの制作も行っている。KBD MOLLシステムはベース使用でも100種類以上の形状の加工が可能なため、そんな同社の業容に最適なシステムと言えそうだ。

 また近年、同社が力を入れているのがホテルで使用される「カードキーケース」だ。実際にKBD MOLLシステムの運転を担当する同社・印刷製本部の伊藤敏行主任は「カードキーケースはサイズが小さいためMARATHONでは対応が難しかったが、KBD MOLLシステムであれば問題なく加工できる。通常のA4ポケットフォルダーのロットは1,000部ほどだが、カードキーケースは1〜2万ロットはあるため、同じジョブを大量生産することを得意とするKBD MOLLシステムに適したアイテムと言える。給紙は上から乗せるだけのため簡単で、セッティングして動かしてしまえば、あとはノンストップで最後まで生産できる」とその生産性を評価している。

 また、田村社長は「東京オリンピックを2020年に控えてホテルの数が増えている中、カードキーケースをポケットフォルダー事業の柱にしたいと考えている。現在の受注量は年間20万ロット程度だが、KBD MOLLシステムの導入により超短納期で大量ロットに対応できる瞬発力ができあがったので、年間100万〜1,000万部の受注を目指したい」としており、カードキーケースをポケットフォルダー事業の柱に、品質・納期・価格のすべてでポケットフォルダー日本一の企業を目指す考えだ。

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 同社は、企業理念である「ビジネスパートナーとWIN・WIN・WINの関係を目指す」ための取り組みに常に挑戦している。製版業からの脱却を図り、ISMS/環境/社外報/商品開発の委員会を約5年前から立ち上げていることも、そのための行動であるといえるだろう。受け身ではなく、常に積極的に事業展開を進める同社の今後に注目したい。