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躍進企業REPORT

ウエマツ:GTB製・検査装置「コレクトアイ SIS」導入

印刷ジャーナル 2017年5月15日
福田 社長
湯澤 取締役
緒方 執行役員
コレクトアイ SIS
品質管理システム構成図

新たな検査体制を構築 〜 品質管理システムとして運用開始

 (株)ウエマツ(本社/東京都豊島区、福田浩志社長)は今年3月、同社・戸田工場(埼玉県戸田市)に(株)ジーティービー製の非接触型スキャナー入力印刷物検査機「CorrectEye SIS(コレクトアイ シス)」を国内総代理店である(株)メディアテクノロジージャパンを通じて導入し、品質管理体制の強化を図っている。さらに同社では、新たな検査装置導入を契機に、品質管理システムを構築し、運用を開始した。今回、同社・福田社長、湯澤利和取締役、緒方章一執行役員に、導入に至った背景や今後の取り組みなどについて伺った。


 戸田工場は、片面両面兼用機1台、両面印刷機8台、片面印刷機8台の合計18台124胴のオフセット枚葉印刷機が稼働している同社の生産拠点。18台の印刷機による高い生産性だけでなく、環境配慮にも積極的に取り組んでおり、第12回印刷産業環境優良工場表彰(主催=日本印刷産業連合会)では、最優秀賞である経済産業大臣賞を受賞している。
 その同社では、年々高まっていく顧客からの品質要求に対応するために約7年前より、プロジェクトチームを発足し、検査装置に関する研究を行ってきた。しかし当時は、CCDカメラで印刷物をチェックするインライン検査装置の採用が前提であったという。そのため福田社長は、インライン検査装置を導入している印刷会社に、積極的に足を運び、その機能性などを検証してきた。
 印刷機に搭載することで、全数検査を実現するインライン検査装置の機能性を高く評価する一方、福田社長は、ある懸念も抱いていた。それは不良検知件数の多さだ。
 「当社の予備紙率は、約5%程度。仮にインライン検査装置を導入し、検査精度を上げて稼働させた場合に8〜9%の不良を検知してしまう可能性がある」(福田社長)
 検査精度を高めると検知率も比例して上がっていく。逆に検査精度を低く設定すると不良を検知できなくなるなど、運用面での課題が判明した。

オフライン検査装置による運用を開始

 検証の結果、インライン検査装置を前提とした検査体制の強化を一旦、白紙に戻した福田社長は、同社が1,000枚ごとに実施している抜き取り検査を強化することで、全体的な検査レベルを向上させる方法を選択した。
 「1万回転で印刷すると1,000枚の印刷は約6分。あっという間の時間であるが、この抜き取り検査の精度を向上させることが不良発生を最小限に抑えることに効果的であると判断した」(福田社長)
 そのためには、これまでオペレータの目で確認していた検査を、より高精度に検査できる設備が必要と考えた福田社長は、オフライン検査装置の導入を決意。そして約4年前にメディアテクノロジージャパン社からの紹介を受け、ジーティービー製のカメラ入力式検査システム「コレクトアイ」を導入した。
 しかし、一定の成果があったものの湯澤取締役は、「当時は検査基準となる画像データの入力時間、そして実際の印刷物を読み込んで検査するまでの時間が、想定していたよりも長かったことが課題となっていた」と振り返る。
 「コレクトアイ」が1枚の検査に要する時間は、約1分半。スペック的には、短時間で検査できる装置であるが、同社のように18台の印刷機が稼働し、加えて1,000枚ごとの抜き取り検査の実施となると、当然ながら1台の検査装置では、効率的に対応することは難しい。そのため当初、計画していた、すべての受注物件で1,000枚ごとの抜き取り検査を行うのではなく、より品質要求レベルが高い印刷物やロット数の大きなものを中心に検査を実施することとした。同時に福田社長は、より効率的な検査体制の構築を目的にジーティービー社およびメディアテクノロジージャパン社と協力し、作業時間を短縮できる製品開発に向けて協議を開始した。そして昨年末、試作機が完成したとの報告を受けた福田社長は、デモルームでその機能を検証し、その結果、複数台を導入することで同社の目指す品質管理体制が構築できると確信したという。その検査装置が、「コレクトアイ SIS」だ。

圧倒的な検査スピードを評価

 「コレクトアイ SIS」は、新たに開発された非接触スキャナタイプの検査装置。インライン検査装置では、検出不可能なレベルのピンホールや欠けなどの不良も瞬時に検出し、さらにデジタルデータとの比較検査も高精度で行うことができる。
 スキャン時間は、菊全サイズで約13秒、スキャン開始から検査終了までの時間は約45秒という高速検査を可能とする。検査解像度は、300dpiと600dpiから選択でき、ニーズに合わせて入力精度の変更も可能。入力サイズは、約四六全判(1,091mm×788mm)で、TIFFやPDFファイルにも対応する。
 「他社メーカーの検査装置も検討したが、迷うことなくコレクトアイ SISを選択した。他社製品よりも検査スピードが圧倒的に早いというのが理由の1つではあるが、ジーティービー社とは、今後もパートナーとして付き合っていけると評価している。既存の製品ラインアップから機種選定をするのではなく、当社の想いを機械として具現化してくれる可能性を強く感じた」(福田社長)
 そして今年3月末、同社は国内第1号機となる「コレクトアイ SIS」を一気に2台導入。これにより、同社のオフライン検査装置は、「コレクトアイ SIS」を含めた3台の体制となった。また、福田社長は、インライン検査装置の機能も高く評価しており、現在、戸田工場に設置されている4台の印刷機にはインライン検査装置が搭載されている。

検査基準の見直しにも着手

 より効果的な検査体制構築に向け、同社では検査基準の見直しを図り、運用を開始している。それは、品質要求レベルが高い印刷物はもちろんだが、2万枚以上のロットについても1,000枚ごとの抜き取り目視検査に加え、「コレクトアイ SIS」による5,000枚に1枚の検査を実行するもの。
 「当社は、1,000枚ごとの抜き取り目視検査を基準としている。当然、人間が行うことなので、不良を見逃すこともある。しかし、コレクトアイ SISによる検査を組み込むことによって、目視で発見できなかった不良を検出でき、無駄な印刷を未然に防ぐことができる」(緒方執行役員)
 同社では、1日で約200〜300アイテムの印刷を行っているが、3分の1以上が、この検査基準の対象となるという。
 「現時点の検査装置の設置台数では、ここまでが限界なので、今後は増設も検討していく」(福田社長)
 「コレクトアイ SIS」は、戸田工場2階の両面機エリアと片面機エリアにそれぞれ設置され、8台の印刷機をカバーしている。また、1階に設置されていた「コレクトアイ」は、主に同フロアで稼働している5台の印刷機をカバーし、そして3階には、インライン検査装置を搭載した印刷機が稼働し、インラインによる検査を実行している。
 導入以前は、1階の「コレクトアイ」に検査作業が集中し、検査待ちの行列ができるようなこともあったが、導入後は、その問題も解消している。

品質管理システムを構築して情報を一元管理

 また、今回の「コレクトアイ SIS」の導入は、単なる検査装置の増設による検査時間の短縮といった目的ではなく、社内全体で情報を共有できる品質管理システムの確立が本当の狙いだ。
 同社では「コレクトアイ」のオプション機能である品質管理サーバーを「コレクトアイ SIS」の導入に合わせ検索エンジン部を増設。この機能を活用してSCREEN GA社のユニバーサルワークフロー「EQUIOS」からの検査データとジーティービー社のコレクトアイ+品質管理サーバーオプションを連携させた運用を開始している。「EQUIOS」で書き出されたファイル名に付けられた受注番号、折り番号、表裏など情報は、品質管理サーバーで登録され「コレクトアイ SIS」と連動することで印刷前の刷版データと実際の印刷物の高精度な比較検証が可能となる。
 さらに同社のMISとコレクトアイ+品質管理サーバーオプションは、Webベースのシステムとして稼働しており、入力された受注情報は、品質管理サーバーを介して管理され、各部門のスタッフが閲覧できるなど、全社員がWebブラウザから情報を確認することが可能となっている。
 「どのフロアで入力しても一元管理ができるシステムを目指している。今後は、当社のMISとコレクトアイ+品質管理サーバーオプションを連携させた品質管理システムとして構築できればと考えている」(福田社長)

「ゼロ枚目の不良」発見に効果を発揮

 福田社長は、将来的な構想として、インライン検査装置搭載機で印刷したものを「コレクトアイ SIS」でチェックするダブル検査を視野に入れているという。
 同社が導入しているインライン検査装置は、刷り出し後にオペレータが確認したOKシートを基準とする検査、つまり紙と紙による照合である。
だが、仮に版にゴミの付着やキズがあるにも関わらず、それに気付かず印刷し、OKシートとしてデータを読み込んでしまうと検査装置は、ゴミやキズも不良として認識することはない。結果として、すべてが不良となってしまう。福田社長は、これを「ゼロ枚目の不良」と呼んでいる。
 「コレクトアイ SISは、刷版データと印刷物を比較しているので、この『ゼロ枚目の不良』を発見することができる。その運用方法については今後、検討が必要だが、インラインとオフラインの検査装置によるダブルチェックが実現できれば、より高精度な検査が可能となる。そして最終的には、全アイテムで全量検査ができる体制を構築していきたい」(福田社長)