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躍進企業REPORT

大東印刷工業:厚紙印刷の効率化を実現 - 既設機にLED-UVを搭載

印刷ジャーナル 2016年12月15日
佐竹 社長
菊半裁寸延5色機にLED-UVを搭載
第2工場には多彩な後加工機を新設

TPE製LED-UVシステム「Dry-Gシリーズ」導入

 大東印刷工業(株)(本社/東京都墨田区、佐竹一郎社長)は今年2月、後加工工程の強化を目的に新工場(第2工場)を竣工した。同時に、既設の菊半裁寸延5色機に東京印刷機材トレーディング(株)(TPE)が販売するLED-UVシステム「Dry-Gシリーズ」を搭載し、速乾特性を活用した厚紙小ロット印刷の高効率化を実現している。今回、同社・佐竹社長にLED-UVシステム導入の経緯や、導入後の成果などについて聞いた。


 同社は1950年、活版印刷会社として創業。現在では、ポスターやカタログといった商業印刷物のほか、POPなどのセールスプロモーションツールなどの小ロット印刷を主に手がけている。
 今年2月に竣工した第2工場は、断裁機や折り機、乱丁防止カメラ付き中綴機・無線綴機、そして抜き加工やカッティングプロッターなどの多彩なポストプレス機器を設置した後加工工程の主力工場で、これまで協力工場に委託していた、ほとんどの後加工工程の内製化をオペレータの多能工化により実現するとともに、小ロット・短納期対応のさらなる強化を図っている。
 「1990年代以降、カラーのページ物、いわゆる薄紙への印刷が増加した。しかし、リーマンショック以降は、薄紙印刷物が減少傾向になり、逆にセールスプロモーションツールなど、厚紙に刷って表面加工して合紙、抜きなどを行う印刷物の比率が多くなっていった」(佐竹社長)
 厚紙印刷の需要が増加傾向にあったことから同社では、2005年に厚薄兼用の菊全5色機を導入。そして2009年には、同じく厚薄兼用の菊半寸延の5色機を導入し、厚紙印刷の生産体制を構築している。今回、その菊半寸延5色機にLED-UVシステムを搭載している。

厚紙印刷での導入実績を評価

 もともと佐竹社長は、UV印刷には、興味があったものの、導入コストを考慮すると採算に見合う設備ではないと考えていた。しかし申請していた、ものづくり補助金が採択され、また、第2工場竣工にあたり、印刷機の移設も予定されていたことからLED-UVシステムの導入を決断した。
 「新工場の建設にあたり、印刷機などの生産設備の移設という作業が発生する。移設のためには、印刷機を一度、分解するので、その作業に併せてLED-UVを搭載してしまえば、設置作業も簡略化でき、さらにコストも抑えることができる」(佐竹社長)
 また、TPEのLED-UVシステムを選択した理由について佐竹社長は、「TPEのLED-UVシステムは、厚紙印刷分野で多くの実績があり、実際に導入した当社においても、予想を上回る効果を発揮している。また、他社のLED-UVシステムと比較して、導入コストが安価であることも、その理由の1つといえる」と説明する。
 そして今年2月、新工場竣工と同時にLED-UVシステムを搭載した菊半寸延5色機の稼働を開始。同社にとって、初めてのLED-UV機であったが何の問題もなく、立ち上げることができたという。

リピートオーダーにも問題なく対応

 「油性とLED-UVとの品質、色相が異なることが心配であったため導入当初は営業スタッフに対して、リピートオーダーについては、『色が完全に合うと思うな』という注意喚起はしたが、実際には、とくに問題が起きることもなく、すでに油性からLED-UVに切り替えたリピートオーダーも普通に行っている」(佐竹社長)
 補助金を活用することで設備投資コストを抑えることがはできたが、一方では、インキなどの消耗品については、油性機に比べてコスト高になってしまう。しかし、佐竹社長は、とくに大きな問題ではないと説明する。
 「LED-UVを導入するとインキコストが上がることを問題視する方が多いと思う。もちろん、当社もインキコストは上がっている。しかし当社の場合、小ロットジョブをメインにしているので、厳密にいえば、印刷物に占めるインキ代の比率は、そんなに高くならない。また、速乾という特性を活かしドン天印刷を行い、刷版コストを抑えることができる。これだけでも資材高騰分を十分に補うことができる」
 同社の平均ロットは、1,000〜2,000枚、場合によっては数十枚といった極小ロットにも対応している。この小ロット印刷にLED-UVによる速乾印刷は、最大限の効果を発揮している。
 「当社の印刷物は、近年、インキの乗る量が多くなってきている。そうなると油性印刷では、数十枚おきに板取しなければならない。当然、パウダー散布量も増えていく。しかし、LED-UV化により、それらの作業を完全に無くすことができた。この効果が当社にとって、LED-UV化の一番大きなメリットと言える」(佐竹社長)

菊全5色機へのLED-UV搭載も予定

 LED-UVシステムの導入により、板取作業というオペレータの負荷も解消。また、印刷後には、すぐに後工程に移行できるため、従来からの同社の強みである短納期対応も、さらに強化された。
 「企業の最大の責任は従業員の雇用を守ること。経営者は、経済環境がどんなに変化しようと、それに適応するための指示を出すこと。つまり従業員とその家族を守れる仕組みをつくることが使命である。今回のLED-UVシステムの導入は、その取り組みの1つである」と語る佐竹社長は、来年2月、既設の厚薄兼用の菊全判5色機にLED-UV装置の搭載を予定しているという。
 また、現時点の課題であった特色対応についても、菊全機へのLED-UV搭載に併せ、インキディスペンサーも導入する予定だ。これにより無駄なインキコストを削減できるようになり、LED-UV機2台体制による効率的な運用が可能となる。