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躍進企業REPORT

ハタノ:全枚葉機にダックエンジニアリング検査装置を設置

印刷ジャーナル 2015年11月25日
オペレーターの人たちと一緒に谷山部長(中央)と三村部長(右から2人目)
全3台の枚葉機に「Trinity Well」を設置
刷出し・抜き取り用検査装置「MERCY-touch」を2台導入
1,000平米の敷地面積を誇る新工場

 (株)ハタノ(本社/熊本市西区上熊本2-1-30、毛利吉文社長)は全3台のオフセット枚葉印刷機にダックエンジニアリング(株)(=DAC)の検査装置を設置し、安定した検査品質により顧客からの信頼を勝ち取っている。また、目視による検査と比較して「時間が読める」、問題が起きた場合も「データとして残せる」ことから、作業効率の向上や品質管理の面でも大きな効果を発揮しているようだ。同社執行役員・営業部部長の谷山英二氏と執行役員・生産部部長の三村昭幸氏に話を聞いた。

「検査が安定」「時間が読める」「データとして残せる」〜顧客からの信頼度が向上

 同社は昭和21年に創業したシール・ラベルを得意とする印刷会社。酒造メーカーを主要取引先に、日本酒や焼酎、調味料などのグルーラベルの生産が売上の60%を占める。また、単に商品のグルーラベルを製造するだけでなく、パッケージやそれに付随する各種SPツールを全3台のオフセット枚葉印刷機で生産している。熊本県のゆるキャラ「くまモン」のクリアファイルや酒造メーカーとタイアップしてのコースターを製造する他、昨今では環境問題を背景にボトルを再利用することも増えていることから、ボトルの洗い方について酒造メーカーからアイデアを求められることもあるなど、顧客の販促支援を全方位的にサポートしている。

2種類のDAC検査装置を組み合わせて活用

 同社では、2011年にDACの刷出し・抜き取り用検査装置「MERCY-touch」を導入した。それまで、同社では目視に頼った検査を行っており、製版の入稿のときにはあおりによる校正を行っていたが、「製版処理の間違いにより、NG商品を出荷してしまったことがある」と三村生産部長は過去の失敗を振り返る。幸い大事には至らなかったようだが、同社はこれを機に、検査装置の導入を検討しはじめたという。
 そして同社は2013年にはハイデルベルグのオフセット枚葉印刷機にオンライン枚葉検査装置「Trinity Well」を設置。さらに翌年には、同検査装置を残り2台の枚葉オフセット印刷機に設置するとともに、2台目となる「MERCY-touch」も追加で導入した。
 三村生産部長は、「比較検査装置『MERCY-touch』で入稿時と印刷スタート前にチェックを行い、印刷中は『Trinity Well』のカメラで全数検査。そして出荷前に再度『MERCY-touch』でチェックしている」と話しており、2種類の検査装置を組み合わせることにより、より確実な品質検査システムとしての活用ができているようだ。
 全3台のオフセット枚葉印刷機すべてにDAC検査装置を設置した効果について、谷山営業部長は「DACの検査装置は当社が取り扱っている製品との相性も良く、オペレーターも非常に使いやすいと評価している。何かあっても、リモートですぐに対応してくれるところも評価できる。また顧客からも『検査装置が付いたので安心』と言ってもらえるようになった」と話しており、顧客の安心と信頼度向上にもつながっているようだ。
 また、三村生産部長は「人の目による検査と違って検査品質のバラツキがないため、検査品質が安定するとともに、検査にかかる時間も読むことができる。また何らかの問題が発生した場合も、データとして残っているため改善策を立てやすくなった」と高く評価している。
 さらに、同社では3台すべてのオフセット枚葉印刷機に「IJP(インクジェットプリンタ)番号追跡システム」を搭載している。このシステムは、フィーダボード上に取り付けた産業用インクジェットプリンタですべての紙に通し番号を印字し、「Trinity」が欠陥を検出すると、NG紙に印字された番号と欠陥画像を同時に保存。番号印字と欠陥画像が完全に紐付けされるため、後工程でNG用紙の番号管理や排除が可能になるというものだ。
 三村生産部長は、「当社では後工程に回す前、印刷工程において担当オペレーターがNG用紙を抜くようにしているが、従来より確実かつ簡単に抜き取ることが可能になり、作業負荷の低減と時間短縮につながっている」とその効果について話している。

敷地面積1,000平米の新工場を竣工

 同社では現在、地上3階建の本社工場である枚葉印刷工場と、近隣地にシール印刷工場を所有しているが、このほど地上1階建・1,000平米の新工場(熊本県上益城郡嘉島町下仲間97-1)を竣工した。
 「現在の工場は手狭になったほか、3階建であるため商品の移動にも時間と手間暇がかかる。さらにシール印刷工場は別の場所にあるため、なおさらである。新工場はワンフロアであるため、作業効率の向上を図ることができ、『見える化』を実現している。食品工場としても通用するクリーン工場、セキュリティ設備を備えた生産工場となっている」(谷山営業部長)
 現在、設備の移転を段階的に進めており、今年中にすべての移転作業を終え、本格稼働を開始するようだ。
 「現在の商圏範囲は九州のみだが、来年からはさらに大ロットの受注が期待できる東京などの市場も視野に入れていきたい。また、後加工分野にさらに注力し、様々な印刷加工物に対応していきたい」(谷山営業部長)
 同社は2016年1月1日より、社名を「ハタノ綜合印刷(株)」に変更し、顧客のあらゆる要望に対応できる企業を目指す。新工場竣工による新たな生産体制の構築と社名も新たに、2016年は同社にとって大きく飛躍する年になりそうだ。