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躍進企業REPORT

東伸企画:完全無処理サーマルCTPプレート「Kodak Sonora XJ」採用

印刷ジャーナル 2015年11月5日
専務取締役 藤沼 敏行 氏
制作部長 橋上 成樹 氏
工場長 矢吹 陽一 氏
A全判対応のTrendsetter Q400
制作部門のオフィス奥にCTPルームを設置
リョービMHI製A全判924LED-UV印刷機

LED-UV機で3万通し 〜 損紙は10枚、省スペース性能も評価

 印刷物を中心とした各種SPツールの企画から編集・制作、印刷・製本、発送までを手がける(株)東伸企画(東京都墨田区菊川3-17-2 アドン菊川ビル1F、山本正男社長)は、完全無処理サーマルCTPプレート「Kodak Sonora XJ」を採用し、CTPの設置面積を最小限に抑制。廃液の処理コスト、定期清掃の手間もゼロになった。さらに現像処理の影響を受けない高品質で安定した刷版で、印刷品質も大幅に安定。「水幅が広く刷りやすい刷版だ」と印刷現場も絶賛している。導入から10日後には、LED-UV印刷機で3万枚を印刷。さらに油性で15万通しにも挑戦し、完全無処理版「Sonora XJ」の限界に挑戦していく考えだ。

企画から発送まで一貫したSPサービスを提供

 同社は、社内に一貫した生産工程を構築し、厳しい納期にもスピーディで正確な対応を実現しているプロフェッショナル集団。社員37名のうち17名が制作スタッフという同社の高い企画/デザイン力、編集/組版に関する豊富な知識と経験は、顧客から絶大な信頼を得ると同時に、他社との差別化にも役立っている。近年では印刷物だけでなく、ホームページや電子カタログの制作といったデジタル分野にもビジネスの裾野を広げるなど、「印刷からその先へ」と新しいコミュニケーションの提案にも積極的に取り組んでいる。

LED-UV印刷機の導入と同時にCTPワークフローを一新

 同社はこれまで菊半裁判の油性4色印刷機を中心とした印刷体制を構築していたが、生産能力を拡大するため、A全判LED-UV印刷機を新たに導入することを決断した。同社の戦略について、専務取締役の藤沼敏行氏は次のように話している。
 「UV印刷なら刷り上がった用紙を即座に後工程に回せる。乾燥待ち時間がなくなるので納期がさらに短縮できると考えた。また印刷サイズを大きくすれば、大ロットの仕事でも生産時間が短縮でき、短納期化が図れる。このように当社の印刷能力を高めることで、お客様のニーズに応えられると考えて導入を決断した」
 このLED-UV印刷機の導入にあわせてCTPワークフローも一新。RIPにはKodak Prinergyワークフローシステム、CTPにはKodak Trendsetter Q400プレートセッター、刷版にはコダックの完全無処理版Sonora XJ プロセスフリープレートを採用した。制作部長の橋上成樹氏は、そのきっかけを次のように振り返っている。
 「A全判に対応した新しいCTPが必要なので、他社製品も含めていろいろ検討した。ただこれまで同様、制作部門のオフィスにCTPを設置する予定だったので、場所をとらないコンパクトなシステムが前提だった。こうした当社の事情を熟知していた印刷機メーカーの方が、コダックのSonora XJ プレートを紹介してくれた。勉強会やトレーニングを含めコダックが素晴らしいサポートをしてくれたことで立ち上げまでが非常にスムーズに進んだ。現在では、既設の油性カラー機と新しいUV機とインクジェットプルファーのカラーマネージメントもコダックが手厚いサポートをしてくれて非常に助かっている」

完全無処理版Sonora XJが決め手となってコダックを導入

 Sonora XJはCTPから出力されたプレートをそのまま印刷機にセットできる完全無処理版だ。CTPに自動現像機を接続する必要がなく、設置面積が大幅に削減できると、橋上部長はその省スペース性能を高く評価した。コンパクトな機械設計と高い信頼性を両立したTrendsetter Q400も、同社のニーズにぴったりマッチした。
 一般的に無処理版は耐刷性に難があると言われるが、Sonora XJの場合、コダックの従来製品Thermal Directと比べて約2倍。油性印刷なら印刷条件にもよるが、最大で20万枚印刷できる。さらに高感度UVインキやエッチ液、洗浄液などに対する高い耐薬品性を備えることで、UV印刷適性も向上し、LED-UV印刷で5万〜10万枚の耐刷性を実現した。
 このようにSonora XJは、LED-UV印刷機と油性印刷機の両方に対応できるため、既存のシステムを残すことなく、RIPからCTP、プレートまですべてをコダックに統一した。

Sonora XJ+LED-UV印刷機がオペレータの負担軽減とコスト削減を両立

 2015年7月、新しいLED-UV印刷機と同時にコダックのシステムも同社に納入された。
 Trendsetter Q400は予定通り、制作部門のオフィス奥につくられた専用ルームに設置された。その後4日間の導入トレーニングを終え、わずか10日後にはSonora XJによるLED-UV印刷で3万通しを達成した。もちろん、テスト印刷ではなく実際の仕事での運用だった。「品質が安定していて、とても刷りやすい」と印刷現場でも好評だと工場長の矢吹陽一氏は、次のように話してくれた。
 「Sonora XJは現像による品質のバラツキがない。常に同じ品質の刷版で刷れるため、印刷品質そのものが安定する。これまではヨゴレなどの印刷トラブルが発生しても、原因が刷版なのか、現像液なのか特定しにくかったが、こうした心配もなくなった。現像液のヨゴレが版に残ることもなく、常に高品質な刷版が得られると現場のオペレータは絶賛している。来月には油性で15万通しの仕事で限界を見極めたいと思っている」
 「無処理版は汚れる」「UV印刷は水幅が狭く刷りにくい」というネガティブな噂も耳に入っていたそうだが、実際には全く正反対だった。刷り出し時のヨゴレはほとんどなく、損紙はわずか10枚位で済むそうだ。水幅が広く、刷りやすいとオペレータも高く評価する。
 印刷品質だけでなく、コスト削減効果も大きかった。印刷工程では損紙が削減でき、CTP工程では現像機がなくなったことで、手間とコストがゼロになったと橋上部長は強調する。
 「月2回ほど行っていた現像機の清掃やメンテナンスの手間がなくなりオペレータのストレスが無くなるとともに、廃液処理にかかるコストがゼロになった」
 それ以外にも現像機の投資コスト、メンテナンスコスト、電気代、化学薬品の購入費用などがゼロになるなど、そのメリットは計り知れない。化学薬品、水、電力、廃棄物がなくなることは、環境負荷の軽減にもつながり、結果として環境にやさしい印刷を実現する第一歩にもなる。抜群のシナジー効果を発揮する完全無処理版Sonora XJ+LED-UV印刷機が、印刷業界にいま、静かな革命を起こそうとしているのかもしれない。同社もまた、新たな戦力を得て、ビジネスをさらに発展・進化させていく。