PJweb news

印刷産業のトレンドを捉える印刷業界専門紙【印刷ジャーナル】のニュース配信サイト:PJ web news|印刷時報株式会社

トップ > 躍進企業REPORT > カメラ100台で品質記録に〜ヒューマンエラー排除で事故率2割減
躍進企業REPORT

髙見紙化工所:カメラ100台で品質記録に〜ヒューマンエラー排除で事故率2割減

印刷ジャーナル 2015年7月25日
髙見 社長
市販の防犯カメラを応用
加工機横に設置されたモニター
顧客からの信頼向上

 エンドレスコートやPP貼、箔押・浮出、エンボス加工、合紙など、広範囲にわたる表面化工技術を守備範囲とする(株)髙見紙化工所(本社/大阪市平野区加美北1-12-22、髙見正行社長)は、工場や事務所など、社内の至る所に計100台のカメラを設置し、その映像を「品質記録」として活用することで、事故率およそ2割減を達成している。

     ◇        ◇

 同社の最大の武器は、営業5名、配送員7名による「機動力」だ。それを下支えする仕組みとして、受注から入荷、加工、出荷といった一連のトレーサビリティを確保する生産管理システムや、トラック全車に搭載されたGPS機能を活用した迅速で効率的な配送システムを構築している。
 営業活動にiPadを投入するなど、ITを活用した業務の効率化を推進する同社では、10年前からWebカメラを社内のコミュニケーションツールとして活用。これは「誰がいるか」程度の情報共有手段だったが、そのインフラだったヤフーメッセンジャーのサービスが終了するということで、それに替わるものとして市販されている防犯カメラに着目。まずはテスト的に機械のラインに設置してみた。するとオペレータから「不良品が出た場合、動画を記録していれば検品時間を削減できる」という声があがった。
 髙見社長は「当社では、品質管理システムISO9001を早くから取得していたが、チェックシート、いわゆる紙上での管理・記録では見えない部分が出てきていた。それを補完する『動画による品質記録』の必要性を感じていた」と振り返る。
 実際、加工ラインは1,500枚/時程度のスピードであるため、防犯カメラの画質スペックでも紙1枚1枚が見える。さらに、このカメラによる記録をオペレータの導線にも設置して、確認漏れや手順ミスといったヒューマンエラーを映像として記録。映らない、いわゆる「死角」をどんどん埋めていくことで、カメラ台数は1年でちょうど100台になったという。

     ◇        ◇

 従業員からは「監視される」という抵抗感はなかったのか。このことについて髙見社長は、「Webカメラから機械、人と順に広げたのであまり抵抗はなかった。ただ『気を抜けない』という声があったのに対し、私は『それは手が抜けないということ』と諭した。毎日がISOの審査のようなものだ」と語っている。
 ISO9001取得後3年間で事故は半分に減ったが、その後は横這い状態が続いていた。もちろんそのほとんどがヒューマンエラーだ。カメラによる品質記録は、「やった、やらない」という議論になる部分を映像で保証することで、結果、事故率は20%減少したという。
 一方、実際に事故が起こった場合、しかもその事故がヒューマンエラーに起因するものだとどうするのか。「iPadを持ってお客様に出向き、実際の映像を見せて、『すみません、このようにオペレータはこの部分を見ていませんでした』と説明すると、逆に信頼度が上がった事例が多い」(髙見社長)
 このカメラ100台設置にかかった費用はなんと100万円。カメラは1つ2,000円程度で、「アマゾン」で購入しているという髙見社長。「費用対効果は非常に高い」