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躍進企業REPORT

帆風:自動検査で生産効率2倍に 〜 ジクス製検査装置「Lab-vision」導入

印刷ジャーナル 2015年1月1日
引地課長
4胴目と8胴目に配置された「Lab-vision」
検査結果を直感的に認識できるモニター
計7台の印刷機が整然と配置された印刷工場

「ヤレ0」「機械を止めない」という概念

 印刷通販事業の拡大に伴い、「攻めの設備投資」を活発化させる(株)帆風(本社/東京都新宿区下宮比町2-29、犬養新嗣社長)は、主力工場である竹橋プリンティングセンターの両面印刷機すべてにジクス(株)(東京都板橋区宮本町、高原亮介社長)の印刷紙面検査システム「Lab-vision」を搭載し、より高次元での生産効率を弾き出している。そのキーワードは「自動化」だ。3万件/日という膨大なジョブをこなすための「ヤレ0(ゼロ)」「機械を止めない」という新たな概念実現に向け、検査装置が如何に貢献しているかを取材した。


 東京の中心に位置する竹橋プリンティングセンター。同社の主力生産拠点である同工場は、毎日新聞パレスサイドビルの地下3〜5階からなる2,100坪の広大な敷地に、帆風が持つ最新鋭の設備が集約され、小ロット・短納期・高品質といった需要に24時間体制で応えている。
 地下3階の印刷工場には、菊全判サイズの両面8色機が3台、両面10色機が1台、片面5色機が2台のほか、菊半裁サイズの片面4色機も加えた計7台が整然と配置されている。これらはすべてLED-UV仕様で、うち2台は従来のUV照射でLED-UVインキを使用。印刷品質の互換性を図っている。
 同社は、東京23区内に14店舗の印刷受注窓口を展開するほか、現在ではWeb受注、いわゆる印刷通販事業を強化している。この受注が3ヵ月毎におよそ30%という急激な伸びを示しており、竹橋の工場内で1日に処理する約3万件におよぶ受注の比率は、ジョブベースで営業3:Web7に。そのWeb受注のギャンギングでは、付け合わせ率7.1ジョブ/版を弾き出している。現在では営業窓口のWeb化を進めており、今後も印刷通販ビジネスの需要拡大が見込まれる中、「攻めの設備投資」を活発化させるとともに、より高次元での生産効率追求に乗り出している。

      ◇      ◇

 3万件/日という膨大なジョブ数。言うまでもなく、これらの多くは小ロット・短納期だ。この需要を背景に、同社が新たに打ち立てた概念が「ヤレ0」だった。そのアプローチの中で浮上したのが「検査装置の活用」である。
 印刷課の引地望課長は「『ヤレ0』は極論だが、最初は正直、無理だと思った。しかし、機械メンテと検査装置の導入で、現状50枚以下を実現している」と説明。現在、帆風の要望を具現化したジクスのインライン型品質検査装置「Lab-vision」が4台の両面機すべてに搭載されている。
 生産機ではない検査装置の導入。これがオペレータの負担になるのでは運用の継続は難しい。「大量のジョブ数をこなす我々の工場では、検査工程に手間をかける余裕はない」(引地氏)。そこで採用を決定づけたのが「自動化」である。
 検査カメラは4胴目と8胴目に設置。カメラのアームを上下しなくても給版できるようになっている。1胴目に紙が入ると印刷機から信号を受け取り、それをマスターとして検査スタート。紙が何枚通過すると4胴目に到達するかを計算して検査が行われる。8胴目も同様で、紙が抜ければ検査終了となる。常に紙サイズを固定することで検査エリア設定などの作業も自動化されており、オペレータは何もせずに、両面印刷の全数検査を実現している。もちろんこれは「機械メンテによって、色は最初から合っている」ということが前提となる。
 Lab-visionが最初に搭載されたのは2013年2月、新台設置と同時に後付けでLED-UVを装着した8色機である。通常、LED-UVは圧胴側で照射される。しかし、検査装置もブランケットと圧胴が離れた瞬間を見たい。一方、圧胴側でLED-UV照射すると、インキが立ったまま凝固するため、マット調になってしまうというデメリットもある。同社が10色機を導入しているのも8色印刷後のレベリングのためだ。
 そこで同社では、倍胴側にLED-UV装置を設置し、圧胴側にLab-visionを設置した。その後、ハイデルベルグから倍胴照射の純正LED-UV仕様機がリリースされ、2014年に8色機2台を導入している。

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 同社における検査機運用で特徴的なのが、「エラーが出ても機械を止めない」ということ。NG箇所は後加工で取り除き、その部分のジョブデータは次の刷版に割り込ませる。「スペックの最大印刷速度1万4,000枚/時のUV印刷で3万件を処理するとなると、この方法がベスト。『機械を止めない』という効果は、生産性をおよそ2倍に引き上げた」(引地氏)
 チェックするのは、色、汚れ、ゴミ、ダブリ、紙折れなど。引地氏はとくに「発生しても数枚で消える3タレ(水ダレ、油ダレ、インキダレ)の検知は非常に助かっている」と話す。導入から徐々に検査レベルを引き上げ、現在では平均よりも少し辛めの設定で運用されている。
 一方、およそ3ヵ月分の検査履歴が残ることも引地氏は評価する。「クレーム対応において、NGが何枚あったかを即座に確認でき、またNG傾向を検査レベルの設定に反映させることもできる」(引地氏)
 さらに引地氏は、「検査装置は、印刷機の健康診断ツールになる」と話す。傾向を把握し、予測できるようになれば、迅速なメンテナンスも可能になるというわけだ。
 ジクスの真骨頂である「カスタマイズ力」と帆風の「徹底した生産効率の追求」が生んだ、次世代の検査システムは、検査工程に対する印刷現場のフラストレーション、アレルギーを払拭。2015年も8色機導入を計画し、設備投資を活発化させる同社にとって、自動化された「Lab-vision」は、いまや欠かせない存在となっている。