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躍進企業REPORT

イニュニック:印刷の魅力をH-UVで付加 〜 特殊紙・高濃度印刷にも効果発揮

印刷ジャーナル 2013年7月25日
山住社長
オペレータも絶賛するH-UV搭載「リスロンA37」

 (株)イニュニック(本社/東京都板橋区中丸町31-3、山住貴志社長)は、1990年の創業。当時は、環境が重要課題としてクローズアップされていた時代であり、山住社長は環境に優しい印刷会社でありたいとの想いを込めて、イヌイット語で『生命』を意味するイニュニックを社名とした。そして、顧客や仕事に対しては「誠実」であることをモットーに掲げ、多くのユーザーの信頼と評価を勝ち得て成長し続けている。その同社は本年1月、主軸である冊子物の短納期化と生産性向上の戦力機として、H-UV搭載のA全判4色印刷機「リスロンA37」を導入。その導入の経緯と成果について山住社長に伺った。


 同社は、繁華街である東京・池袋の近郊に本社工場がある都市型の印刷会社。山住社長は、勤めていた印刷会社から独立し、同社を起業している。創業当初は、冊子物をメインに同業者の仕事から着手し、徐々に独自の顧客を開拓しながら業態を拡充。7年前にはWeb受注システムを構築し、ネットを活用したビジネス展開もスタートさせている。特に同人誌や自費出版物、写真集などを得意分野とし、幅広いユーザーをターゲットに業績を伸ばしている。現在では、同業者からの受注が3割でそれ以外の7割はエンドユーザーからの受注となっている。
 山住社長は、「ネットでの受注の場合は必然的に短納期への対応が多くなり、従来の設備では生産能力に限界があった。その問題を解消するために、菊全判機の導入が必要だと考えていた」と語る。

H-UVの高い乾燥性能を評価

 すでに3年前にはCTPを菊全判サイズに入れ替えるなど、生産体制の見直しを開始していたという。
 新たな印刷機を検討していた山住社長は、「リスロンS26の機能性は十分に理解し経験していたので、私の選択肢の中にはKOMORI機しかなく、また速乾印刷のH-UVに非常に興味を持っていた。しかし、いきなり菊全のH-UV機となると、設置場所の問題から簡単に決断することはできなかった」と語る。
 そんな時、「リスロンA37」が開発されたとの知らせがKOMORIから届いた。すぐに導入企業の内覧会に参加した山住社長は「他社メーカーでも同じような印刷実演を見たことはあるが、その時の絵柄を見て、こんな重い絵柄もドン天印刷が安定してできるのか」と驚いたという。その高い印刷性能を確信し、本年1月にH-UV搭載「リスロンA37」を導入。同機はA全判機でありながら、菊全判に対応可能な環境に優しい印刷機として開発された最新鋭機。

印刷技術で紙の『存在感』を演出

 「高品質な印刷物を短納期・低価格でお届けする」というのが、『誠実』にお客様にお応えするための指針であり、同社の印刷へのこだわりである。品質について山住社長は「印刷は、できるだけインキを盛ってメリハリのある鮮やかな仕上がりを表現したい。だがインキを盛ると乾燥に時間がかかり、裏面印刷や後加工にも影響して、結果として短納期に対応できない。しかしH-UVであれば、インキ濃度を高めても乾燥時間を気にすることなく高品質な仕上がりの印刷物が短納期でできる」と独自の印刷へのこだわりについて説明。さらに「IT技術の社会においては紙の質感が今まで以上に求められてくるはず」と語る山住社長は、用紙に対してもこだわりを持っている。
 「ユーザーには高品位な存在感のある印刷物を提供したい。手から手へ冊子を渡す際に、渡された方は素材の質感や存在感のあるほうが、冊子の価値を身体で感じることができる。だから一般的な用紙ではなく、例えばヴァンヌーボのような用紙をユーザーに推奨している。乾きにくい紙だが、U-UV機は問題なく高品質かつ短納期の印刷を実現している」と語る山住社長は、ユーザーの冊子の価値を印刷技術と素材で高めて提供することの大切さを強調する。

生産効率の向上で資材コストをカバー

 特殊な用紙を使用し、油性に比べて割高なH-UVインキを盛っての商品提供は、同社のコスト構造上、マイナスとなっていないないのか。その点について山住社長は、次のように説明する。
 「H-UV機はとにかく手離れが早い。以前は乾燥待ちや裏面印刷待ちの紙を積んだパレットが狭い工場内を占拠し、作業上・管理上からも好ましい状態ではなかった。H-UV機導入後は、印刷終了後すぐに次工程に移行できるので、場所や時間の問題を解消し、さらに生産性も向上している。時間コストや生産効率を考慮したトータルなコストで考えれば、大きなメリットを生み出しており、これは油性機では絶対に考えられないこと」(山住社長)。
 また「リスロンA37」担当している宮崎広海オペレータは、「H-UV機は初めてだが、問題なく稼動できている。速乾で効率良く作業ができるので、非常に助かる」と、また小林雄也オペレータは「パウダーレス、裏写りがない、そして速乾でドン天印刷が可能などの特性から、品質や生産性が導入前に比べ、大幅に向上している」とそれぞれ評価している。

アーティストが求める印刷表現にも対応

 同社の最近の受注傾向として「写真集の引き合いが増えてきていてる」と語る山住社長に、今後について伺った。
 「これは写真家などのアーティストが、納得できる仕上がりで、しかも安価に制作できる印刷会社を求めているということ。今回のH-UV搭載のリスロンA37は、ユーザーの要望や満足に十分に対応できる印刷機だと確信している。特に短納期が当たり前のネット受注の分野では、当社の誠実さとリスロンA37の実力で、同業他社との差別化に大きな効果をもたらすと期待している。また、小部数の冊子などはデジタル印刷機による小ロット・短納期サービスを提供しているが、今後はオフセット印刷とデジタル印刷のメリットを活かしながら受注を増やしていきたい」。
 同社は、リピートユーザーが多いことも特長の1つで、こだわりを持った印刷物の制作・提供が多くのユーザーに支持されている証拠といえる。さらにその評判が口コミで拡がり、新規顧客が増え続けているという。
 山住社長は、独自のこだわりを武器に、今後も印刷物のさらなる魅力づくりを目指してチャレンジし続けている。